【ダバオ小田中大、バンコク西脇真一】フィリピンを訪問した安倍晋三首相は13日、南部の都市ダバオでドゥテルテ大統領と会談し、アジア太平洋地域での米国の役割など対米政策を中心に議論した。ドゥテルテ氏は「米比同盟は重要で、両国の協力を継続していく」と表明。首相は「アジアの平和と繁栄を確保する上で米国の関与は不可欠で、フィリピンとも連携していきたい」と応じた。
ドゥテルテ氏にはこれまで、人権問題をめぐるオバマ米大統領の批判に反発する姿勢が目立ったが、首相はトランプ政権への交代を機に日米比3カ国の連携の再構築を目指す。
会談でドゥテルテ氏は、南シナ海問題について「国際法に基づき平和的に解決したい。中国と直接対話を行う用意もある」と話した。首相は、フィリピンが東南アジア諸国連合(ASEAN)の今年の議長国だと指摘し、「法の支配の原則をASEANの会合で主張し、自由で開かれたインド太平洋を確保したい」と述べた。会談にはヤサイ外相や萩生田光一官房副長官らが同席し少人数で行われた。
両首脳はこれに先立ち、ドゥテルテ氏の私邸で朝食を共にした。フィリピンメディアによると、首相は45分間滞在し、ドゥテルテ氏は緑豆のスープなど家庭料理をふるまい、寝室まで案内して歓待した。会談後は昼食会も行った。連日の会談で親密さをアピールした形だが、ドゥテルテ氏が国際社会から批判を受けている麻薬対策に伴う人権問題は取り上げられなかった。
フィリピン政府は、ドゥテルテ氏から「米比協力の継続」という言葉を引き出した首相について「関係修復に極めて重要な役割を担った」と評価。ある当局者は「安倍氏はドゥテルテ氏にどう対応すればいいか知っている。今回、彼は米比間の仲介者の役割を果たした」と語った。ただ、「日本も米国も中国に対抗するためにフィリピンが必要なのだ」とも指摘した。