■鳥越氏の「身体検査」は行われたのか
当初はその高い知名度でトップを独走かと思われていた鳥越氏だが、巣鴨のとげぬき地蔵前での“40秒演説”事件や新報道2001での候補者討論会中止問題で躓いた。さらに7月21日に発売された週刊文春が報じた女性スキャンダルによって、完全に足元をすくわれた形だ。
果たして鳥越氏を推薦した民進党は、彼の“身体検査”を行ったのか。これについて岡田克也同党代表は文春発売当日の21日の会見で、「コメントしない」と回答を拒否。民進党都連関係者にも聞いてみたが、「身体検査をしたということは聞いていないが、本人に『スキャンダルはないか』と確認したのではないか」と極めてあやふやな返答だった。
そうした不信を払しょくするかのように、街宣では組織的な動員が目立っている。22日夕方に有楽町駅前で行われた街宣では、東京・生活者ネットワークの西崎光子共同代表、民進党の枝野幸男幹事長、共産党の志位和夫委員長、生活の党の小沢一郎代表、そして社民党の又市征治幹事長が応援演説を行った。
その中でも一段と大きな拍手が沸き起こり、うちわが激しく振られたのは志位氏が演説する時だった。彼らが共産党の動員であることは間違いない。
■小池氏の演説を見守る「ある人物」
その一方で、特定の組織に所属していないと見られる人たちが続々と集まっているのが小池氏の街宣だ。
翌24日に開いた「スーパーサンデー大演説会」では、新宿駅西口に約2000人が集まった。同場所は共産党がよく街宣に使用するところだが、共産党が国政選挙で組織動員をかける時よりも、その実数は多いように思われた。
とりわけ注目されたのが笹川氏だ。というのも、笹川氏の三男の博義氏は群馬3区選出の自民党の衆院議員で、自民党東京都連は「党が推薦する候補以外を党員あるいは親族が応援したら、除名等の処分の対象」にするという『都知事選挙における党紀の保持について』を7月11日に出している。博義氏は自民党群馬県連所属で都連に所属しているわけではないが、同じ自民党所属として都連に真っ向から逆らうことは控えたいに違いない。
「よくわかったね」
「街宣車の上から見えていましたから」
2人は握手しながら、親しげに言葉を交わしている。
そもそも小池氏の出馬には小泉氏のバックアップがあり、小泉氏の側近である竹中平蔵氏を介しておおさか維新の会にサポートを依頼したという話が伝わっている。実際に「告示日に小池氏のポスターが都内各地に貼られたのは、おおさか維新の会の関係者が動いたからだ」と断言する者もいる。
ちなみに、おおさか維新の会は松井一郎代表が7月13日に特定候補を支援しない方針を発表したが、7月18日付の産経新聞が報じた「支持政党別の投票傾向」では、おおさか維新の会支持者による小池氏支持率は50%を超えており、どの政党よりも高くなっている。
■公明支持層が「圧倒的に少ない」?
自民党都連が推薦する増田氏も、着実に追い上げている。3人の中で一番知名度が低かったため、当初は3人の中で最下位に甘んじていたが、選挙戦の後半に入ってぐんぐんと伸ばし始めた。週末に公表された朝日新聞のデータによればトップを走る小池氏との差は8ポイントで、1週間で逆転も可能な範囲まで迫っている。
もっとも今回の都知事選は、自民党都連にとって何がなんでも負けられない。選挙戦後半になってゼネコンなど有力企業にテコ入れするとともに、増田氏の固いというイメージを一掃するために、眼鏡を黒色のフレームから茶色のものに変えている。
増田選対の自民党関係者はこう打ち明ける。
また保守分裂のチャンスを生かすため、3度目の出馬を諦めた宇都宮健児氏の動向にも注目したい。宇都宮氏は7月23日夜に都内で開かれた『18歳からわかる!東京都知事選挙』に参加し、「ボランティアや選対のメンバーとの繋がりを通じて東京を変えていきたい」と支持者との結束を強調。鳥越陣営からの支援要請については「直接には来ていない」と述べており、今のところその気はないようだがこれからはどうなるか。
小池氏が負ければ小池氏ひとりの問題だが、増田氏が負ければ石原伸晃都連会長と内田茂同幹事長の責任問題が発生し、自民党東京都連は大きく変わらざるをえなくなる。鳥越氏が負ければ岡田代表と枝野幹事長の責任が問われ、民進党の代表選が早められることにもなりかねない。