語るに落ちてしまった「アベノミクス」

 安倍政権が株式市場にお金を誘導する政策を次々に打ち出している。力強さを失った株価と内閣支持率をつなぎとめ、反転させたい思惑が重なる。政権は消費税率の10%への引き上げを12月にも判断するとしており、株価が政権運営の自由度を左右する構図が一段と強まっている。
 「例えば200万円」。甘利明経済再生相が6月末の講演で口火を切ると、麻生太郎財務相が3日後に「240(万円)の方がより現場にあった感覚だ」と注文。菅義偉官房長官も先月末、「対象者の拡充を前向きに検討したい」と言明した。
 閣僚が拡大案を競い合うのは、株式などへの投資のもうけに税金がかからない少額投資非課税制度(NISA)。1月からの3カ月間で約1兆円の個人資金が市場に流れた。政権は「劇的な効果」(甘利氏)と目をつけた。年100万円の非課税枠を倍増させたり、対象年齢を子どもまで広げたりする検討に入った。
 6月に改訂した成長戦略では、年金の積立金約130兆円を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の資産配分の見直しを掲げた。今は12%を基本とする国内株を増やす方向で、1%高めるごとに1兆円近い資金が市場に流れ込む計算だ。企業のもうけが増える法人減税も来年度から実施と明記した。
 市場受けする政策の連発には、アベノミクスの第3の矢の「成長戦略」が経済の底上げにつながるまで、市場にお金をつなぎとめたいという計算が透ける。
 市場は昨年、「第1の矢」の金融緩和と「第2の矢」の財政出動に沸いた。外国人投資家から過去最高の約15兆円ものマネーが流れ込み、円安で輸出企業などの業績も改善し、日経平均株価は6割近く上昇。「株高・円安」が企業の投資意欲と富裕層の消費意欲を刺激する好循環が生まれた。
 だが今年1月、外国人は一転して1兆円超の売り越しに。取引量を示す出来高は昨年5月の半分の水準に低迷し、株価は昨年末から1割ほど低い水準を漂う。
 政権は成長戦略でデフレを脱却するシナリオを描くが、昨年6月の第1弾は「力不足」とされ株価が暴落。今年の改訂版はGPIFや法人減税を盛ったことで暴落の再来は避けられたものの、依然、株価浮揚にはつながっていない。
 規制緩和構造改革が効果をあらわすには時間がかかり、「即効性で劣る」(甘利氏)。そうしているうちに投資家が離れれば株価は下落し、投資や消費が冷え込む「悪循環」に戻ってしまう。政権にとっては「時間との戦い」の様相が強まっている。
■「誰がなぜ買っているの?」
 市場には政府による「過干渉」との受け止めも出始めた。
 「誰がなぜ買っているのか」。成長戦略の改訂作業が大詰めを迎えていた5~6月、市場関係者の話題を集めたのは、株を売買した人や団体を分類した東京証券取引所の統計だった。昨年1年間で約4兆円も売り越した「信託銀行」が4月下旬から突然、大幅な買い越しを8週間も続けたためだ。その額は1兆円近くに達した。
 信託銀の売買は、各種年金基金の委託がほとんどで、運用はGPIFを手本としてきた。GPIFが成長戦略の一環として国内株を大幅に買い増すことを踏まえ、ほかの公的年金マネーまで株買い増しを急いだ、との見方が広がった。
 突然の大口の買い手の登場に、閣僚から相次いで飛び出すGPIFやNISAの改革案。日本銀行も金融緩和策として、株価指標に連動する上場投資信託ETF)を買い増してきた。
 政権や「公的マネー」の影がちらつく状況に、「株価維持活動(PKO)が解禁されたかのようだ。政権は市場に関与しすぎだ」(三菱UFJモルガン・スタンレー証券の藤戸則弘氏)、「いわば株価連動型内閣。政府の巧妙な作戦が展開されている」(みずほ証券の上野泰也氏)と危ぶむ声が上がる。
増税決断の重しに
 「株価が日々動くことと政権とは独立した関係だ」
 株価が急落して約1カ月半ぶりに1万5千円を割り込んだ8日、加藤勝信官房副長官は会見で株価が政権に与える影響を否定した。
 だが、年末には消費税率を10%に上げるかどうかの首相の判断が迫る。景気の先行指標とされる株価が大きく下がれば、「景気が腰折れする」との増税反対論が勢いを増すのは確実だ。だが、増税を先送りして法人減税だけが先行すれば、財政再建が疑問視されて「外国人が失望売りに走る可能性がある」(みずほ証券の上野泰也氏)。株価が下がるほど判断は政権に重くのしかかる。
 集団的自衛権の行使を認める閣議決定などで内閣支持率が第2次政権で最低水準に落ち込むなか、政権が経済対策を訴えたい福島、沖縄の両知事選が、来春には統一地方選も控える。景気回復ムードを高めて支持率を支えてきた株価は今後、政権の足元を脅かす可能性もある。(寺西和男、蔭西晴子)

これ『安倍政権、株価浮揚に必死 「干渉しすぎ」の声も』と題した朝日デジタル8月15日01時17分の報道記事である。
 
 15日の債券市場で指標の新発10年物国債利回りが一時0.495%をつけ、1年4カ月ぶりに0.5%を割り込んだ。日銀が大量に国債を買い続けている影響で緩やかな金利低下が続いてきた。最近の欧米の長期金利の低下を受け、金融機関の資金の一部が日本国債に流れている側面もある。
 過去に0.5%を下回ったのは一部邦銀の経営不安が出ていた2003年6月や、日銀が量的・質的金融緩和を導入した直後の13年4月など、ごく一時期だけだ。世界的にみても異例の低水準だ。
 日銀は毎月7兆円程度と新規発行の7割にあたる国債を買っており、金利低下を促している。市場に流通する国債が減る一方で、潤沢な運用資金を抱える銀行や生命保険が低金利を覚悟で資金の一部を国債に振り向けている。日銀の金融緩和を背景に「当面、金利は上昇しづらい」(三菱UFJモルガン・スタンレー証券)との見方が多い。
 14日にドイツの長期金利が初めて1%を下回るなど、長期金利の低下が世界的に進んでいることも関係している。今年前半には少しでも高い利回りを求めて日本国債の代わりに欧米国債に投資する動きもみられたが、海外金利の低下で最近は外債投資も一服している。
 国債利回りは融資や社債などの金利にも影響するため、企業や個人は低い金利でお金を借りやすくなる。設備投資や住宅購入が増え、景気に好影響をもたらす。ただ日銀の国債保有額はすでに220兆円を超えており、将来どのように売却していくかなど課題は残る。

こっちは「長期金利0.5%割れ、1年4カ月ぶり」日経8月15日12:39 の報道記事である。

 これらの記事は正に政府の政策が功を奏してない現実を示している。物価が上がり金利も上がると言明して来た筈であるが、結果は正反対である。とりもなおさず政府の目論見は外れたと言う事であり、結論的には失敗した事が如実に出たと言う事でもある。つまりは意図してやってもマーケットは正直だったと言う事であり、それが正直にデータに出たと言う事でもある。事実金融機関はこの不況期市場に金を行き渡らせなければいけなかったのに、リスクを回避し自分らが生きるために、表向きは地域貢献と言いながら、企業に回す金を国債買収に走ってしまった。これでは不況をいくらかでもとの国の思惑を裏切る正反対の方向に貢献(笑い)してしまった。これでは企業に金が回らず、企業に貢献は夢のまた夢となってしまったのである。それでも政府は懲りずに法人税減税でもって追い銭を渡そうとしている現実を見るにつけ、政府およびその取り巻きの経済の学者たちは何をやっているのかと馬鹿ばからしくなってしまう。
 そう言う意味においてはこの記事は正に的を得ており、今後の政府に良い教科書となり得るだろう。