今年最大の経済事件と言えるスルガ銀行の不正融資事件 良く考えれば安倍政権の恣意的円安政策と「アベノミクス」によるものによる?

 スルガ銀行の不正融資で多くのサラリーマン大家がどん底に落ちた。彼らをシェアハウス投資に駆り立てたものとは何だったのか。
*  *  *
スルガ銀行は謝罪しろ~」
「不正融資は無効だぁ~」
 1015日午前8時。東京・日本橋に立つスルガ銀行東京支店の前で、この日もシュプレヒコールがこだました。のどをからして声を上げるのは、シェアハウス投資にはまった60人余の会社員の大家たちだ。
 彼らは、スルガ銀で億単位のお金を借り、木造シェアハウスを相場より35割も高い価格でつかまされた。「30年家賃保証」で年89%の高利回りとの触れ込みで、冷静になれば無理筋と気づくが、じつに1200人超が年収の10倍を超えるような借金を背負い込んだ。
「バブル」とは、「もっと価値が出る」という幻想や錯覚に踊らされ、実体とかけ離れた価格の資産にお金がつぎ込まれる様を指す。シェアハウス投資もその典型だ。
 ただ、会社員の大家たちに、かつてのバブルのような熱狂(ユーフォリア)はない。高級ブランドにあふれる金満な生活を欲したわけではない。不動産価格が上がり続ける神話を信じ込んだわけでもない。
 彼らが口にした動機は一つ、「将来への不安」に集約できる。仕事はあっても給料は増えない。社会保障費は年々重くなる。高齢者の負担増も避けられず、年金もあてにならない。老後も安定した生活を送りたいという渇望が、会社員たちを“利回りの罠”へといざなったのだ。
 たとえば50歳間近の男性には3歳の子どもがいた。子どもが大学卒業を迎えるのは70歳の頃。今の年収は900万円だが、ピークは近い。子どもを安心して大学に通わせたい。そんな思いでシェアハウス投資を決断したが、昨秋に2億円を借りて数カ月もしないうちに破産と離婚の危機に直面した。
 スルガ銀には105日、金融庁6カ月の一部業務停止命令を下した。融資の現場で、預金通帳や源泉徴収票を偽造する不正が横行。年収や貯蓄を水増しし、本来は条件を満たさない顧客らにお金を次々と貸し込んでいた。一連の不正は銀行が「組織的」に加担していたと認定された。
 スルガ銀がシェアハウスの危うさに気づきつつ、悪徳業者を抱き込んで不正を加速させたのは2015年。強引な貸し込みは17年後半まで続く。他の銀行がここ数年アパートローンやカードローンの拡大に参入し、客の奪い合いが熾烈を極めるなか、スルガ銀は不可能なノルマを現場に押しつけ、壮絶なパワハラで行員を不正へ走らせた。
 その時期は、日本銀行が金融緩和を推し進めた過程とも重なる。「超」がつく低金利で銀行に貸し出し増を迫り、銀行間競争を煽ってきた日銀が、スルガ銀の暴走を加速させる一因となっていたのは間違いない。
アベノミクス「第1の矢」の担い手として元財務官の黒田東彦総裁を担いだ日銀が、安倍晋三首相の意を受けて大規模緩和を始めたのは13年春。物価上昇率2%の実現を何より優先すべき目標に位置づけ、その実現のために年50兆円ペースで長期国債を、上場投資信託ETF)も年1兆円ペースで買い入れた。市場への資金供給量を2倍に増やせば、2%目標が2年程度で実現すると予告もしてみせた。
2年で2倍、2%」
 黒田総裁が威勢のいいキャッチフレーズを繰り返す姿を、ご記憶の読者も多いだろう。
 黒田緩和とは、「物価が上がりそうだ(=景気がよくなりそうだ)」という予想や期待を高めることで、「お金をため込むより使うほうが得」とばかりに財布のひもが緩み、投資や消費が活発化する可能性に賭けたものだ。「景気がよくなるかも」と思わされ、支出も増やした覚えがあるのなら、それが“黒田バズーカ”のプラス効果として称賛されるべきものだ。
 物価上昇率は、144月に一時1.5%となった(前年同月比、生鮮食品と消費増税の影響を除く)。ただ、内実は原油価格の上昇、円安による輸入品値上げ、消費税率引き上げ前の駆け込み需要に乗じた値上げの影響も大きかった。消費が元に戻り、原油価格も下がると、物価上昇率もゼロ%前後に戻った。結局、物価は原油価格と円相場、世界経済の好不調に左右されることがはっきりした。
 日銀の巨額の資産購入は、市場では円安・株高を加速させ、株や不動産などの資産価格を押し上げて富裕層や大企業を潤わせた。行き過ぎた円高を是正し、明るいムードを醸し出すのに貢献したのも確かだ。だが、リーマン・ショックや欧州債務危機東日本大震災に襲われた時期が去り、世界経済が着実に改善するなか、あれほど極端な金融緩和を断行したわりには、一般の企業や家計は日銀が言うほど「物価が上がる」とは予想せず、予想したからといって気前よくお金を使うこともなかった。
 結果論で言えば、最大の失敗は2%を実現できないことではなく、実現できない現実を直視せず、緩和を強めれば2%が実現するとかたり続け、無理筋の強行路線を続けたことだ。
 1410月の追加緩和で国債購入量を年80兆円に増加、ETF購入量も3倍の3兆円に拡大させたことが「泥沼化」の口火を切った。円安・株高が加速し、不動産などの資産投資が熱を帯びたが、設備投資や個人消費を活発にする効果はほとんどあらわれなかった。それでも強気の姿勢に固執した日銀が16年初めにマイナス金利政策を導入すると、利回りを追うマネーが躍る「日銀バブル」はいよいよ本格的に出現した。
 緩やかな増加傾向だった銀行貸し出しは、16年に大きく伸長した。個人の貸家業向けが突出して増え、地方でのアパートの新築着工が激増。それを黒田総裁はマイナス金利の「プラス効果」に挙げたが、建てすぎたアパートが将来、「負の遺産」となる恐れは高い。
 ETF購入量は167月に年6兆円に倍増した。ETFを買うのは幅広い銘柄を広く薄く買うのに等しく、漫然と株を爆買いする中央銀行は世界の先進国でも類例がない。日銀が間接保有する割合が5%を超える大株主企業は120社を数え、株式市場への介入ぶりも顕著になってきた。
 長期金利は史上初のマイナス圏に沈み、国債は満期まで持つと損になる異常な高値となった。最終的に引き受けるのは日銀だけで、国の借金を日銀が肩代わりする構図も鮮明になった。169月の「長期金利操作」で購入量を減らす方向にシフトしたが、日銀の国債保有割合は4割を突破し、今もなお増え続ける。
 国内の生産や輸出が堅調で企業業績は過去最高に達した。失業率も歴史的な低水準で推移する。多くの国民が年々重くなる社会保障費の負担に耐え、個人消費が芳しくないことをのぞけば、景気指標は総じて「好況」を指す。だが、企業業績は世界経済の改善が強力な追い風で、雇用統計には少子高齢化公共工事の増加、介護の担い手不足といった要因が重なる。緩和のプラス効果が大きかったとは言い難いということは、拙著『日銀バブルが日本を蝕む』(文春新書)に詳しい。
 ささやかで実感の乏しい恩恵と引き換えに、利ざやが縮小する地方銀行の多くは本業赤字にあえぎ、日本の金融システムは徐々にリスクを膨らませている。
 日本の景気拡大局面はほぼ丸6年に達し、米国はそれより長い9年超に及ぶ。国内では安倍政権が大盤振る舞いした経済対策が息切れし、海外ではトランプ政権による無謀な保護主義政策による悪影響が懸念される。
 米国の中央銀行が着々と緩和の正常化を進めるのとは対照的に、日銀は景気の改善が続く間に気前よく武器を使い果たし、景気後退期を迎えても景気を刺激する策を残していない。
 それでも黒田総裁は意に介さず、925日の大阪市での記者会見でこう語った。
2%の目標が実現されていない、まだ道半ばというところで金融政策を変えることはない。2%を早期に実現する日銀の政策スタンスに全く変化はない」
 態度が全く変わらないことに、不安を覚えずにいられない。(朝日新聞記者・藤田知也)
 
 

これ「日銀バブルの末路 なぜスルガ銀は不正融資に走ったのか」と題したAERAdot2018.10.24 07:00AERA 20181029日号より抜粋記事だ。

 
 
安倍政権の実質金が増えたと錯覚させる為替差益政策が、色んな弊害を併発させたと考えてよい。単純に言えば、古来よりの、「人間額に汗して蓄を成す」方法を否定させてしまった事にある。これは戦争体験者やそれらの方々よりその辛さ等を伝え聞いた戦後っ子である現在の団塊の世代には経験済みでどーって事なかったが、それらを経験してない現代の若者には「楽して数字のまやかしで蓄財」の悪い事例を示してしまい、下手すれば我が国民「働かずして蓄財」の期待を抱かせた悪法として後世に・・・の第一人者のレッテル?を安倍首相が貼られる可能性は否定出来なくなったと私は思っている。この「アベノミクス」政策、安倍首相が自賛するほど良い政策とはいい難く、逆にいろんな問題を起こしむしろ将来に渡って禍根と言える政策だったと言えまいか。国民皆昔流行った「ブルーカラーよりホワイトカラー」になってしまう危惧大だ!