無策以下のマイナス金利政策安倍さんと黒田日銀総裁は腹を切るべきである

 「もう麻薬中毒患者のようなもの。どんどん“劇薬”になっていく」――。
 
 日本銀行129日の金融政策決定会合で導入を発表した「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」(以下、マイナス金利政策)について、メガバンク首脳はこうたとえた。
 
 まずは、この「マイナス金利政策」とは具体的にどのようなものなのか説明しよう。
 
 日銀と当座預金取引のある銀行(日本の銀行のほとんど)は、自分の銀行が顧客から預かっている預金の一定割合の現金(所要準備額)を「準備預金」として日銀の当座預金口座に預けることが法律で義務付けられている。さらに現状では、法律で定められた以上の準備預金(超過準備預金)が預けられている。超過準備預金には年0.1%の利息が付くため、銀行にとっては、低金利で利ザヤが薄く、貸し倒れリスクのある融資を行うよりも、超過準備預金の方が確実に利息を生み出すことから、大量の資金を日銀当座預金に預けているためだ。
 
 今回、日銀が導入を決めたマイナス金利政策とは、当座預金に預けられる銀行の資金に3段階の金利を設定するもの。現在、日銀の当座預金には約230兆円の準備預金残高があるが、このうちの超過準備預金分である約210兆円には、従来通りに0.1%の金利が付く。次に、これから預けられる当座預金のうち、法律で定められた所要準備額については、金利をゼロとする。そして、新たな超過準備預金については、金利をマイナス0.1%とする。つまり預けた銀行側が逆に0.1%の金利を取られる。要するに、マイナス金利政策の対象は、あくまでも今後発生する超過準備預金のみとなる。
 
 マイナス金利の対象が新たな超過準備預金だけでは、大きな効果は望めないのではないかとの疑問がわくが、この点について、黒田東彦総裁は、「超過準備預金だけでもマイナス金利が適用されれば、金融市場はそれを前提として金利や相場が形成されることになる」と自信をのぞかせている。
 
■加速する銀行の「国債運用」
 マイナス金利政策の導入には、2つの大きな狙いがある。1つは、マイナス金利の導入により超過準備預金を解消し、その分を企業や個人の融資に回させようという狙いだ。市中により多くの資金を流すことになる。もう1つは、マイナス金利を導入することで金利低下圧力を強め、金利全般の低下を促す狙いだ。まさしく、世の中の金利のスタートラインがマイナスから始まることになり、銀行に預けるより使う方がマシという意思がはたらき、市中に資金を流入させる効果が考えられる。
 
 が、果たして日銀の思惑通りにいくであろうか。銀行は超過準備預金をすれば損をするからといって、それを簡単に融資に回すであろうか。金利が低下するということは、銀行にとっては利ザヤが縮小することであり、儲けが少なくなることを意味する。利ザヤが縮小しても、融資リスクは縮小しない。儲けが少なくなるのに、リスクをとってまで融資を行うとは考えづらい。むしろ、融資審査がより慎重になる可能性が高いのではないか。
 
 それよりも、再び国債での運用が増加するのではないか。この点は日銀も“想定の範囲内”だったのだろう。マイナス金利政策導入の発表資料の欄外には、「日銀は長期国債買い入れの下限金利は設けずに、マイナス0.1%を下回る金利でも買い入れを行う」と、悲壮感漂う注釈が付いている。ちなみに、債券は価格が上昇するほど利回り(金利)が低下する。マイナス金利国債とは、価格で見た場合にはとんでもない高値ということになる。
 
 日銀は年間約80兆円の長期国債を買い入れている。償還が到来する分を含めれば、2016年には約120兆円の国債を買い入れることになっている。国債発行残高の約3割を日銀が保有している状態だ。もし、マイナス金利導入により、銀行が超過準備預金をせずに国債運用を強めれば、日銀が買い入れを行える国債が減少することになる。
 
 ちなみに、国が発行する国債中央銀行である日銀が直接引き受けることを「財政ファイナンス」と呼ぶが、これは政府の財政節度を失わせ、中央銀行による通貨の増発に歯止めがかからなくなって悪性のインフレを起こす懸念があるとされ、日本でも先進諸国同様に原則として法律で禁じている。つまり、銀行など市場参加者から買い入れるしかない。
 
 逆に言えば、日銀がマイナス0.1%を下回る金利でも国債買い入れを行うのであれば、銀行にとってはどんなに高値でも日銀が国債を買い入れてくれるため、売れば儲かるということになる。
 
■抜かりのなかった“票読み”
 実を言えば、日銀がマイナス金利政策を導入した本当の理由は、この国債の需給にあるのではないか。すでに、“黒田バズーカ”と言われる日銀の多額の国債購入による「量的緩和」手法は、限界点を迎えている可能性が高い。だからこそ、黒田総裁はマイナス金利政策に踏み込んだのだろう。
 
 20141031日に市場の意表を突いて行われた追加金融緩和策(長期国債買い入れ30兆円増やして年80兆円にするなど、いわゆる「黒田バズーカ2」)は、最大の効果をもたらした。株価は上昇し、為替は円安に動いた。しかし、その成果も、昨年来の中国の景気減速懸念や原油安などにより、年初の株価の大幅な下落によって、ほとんど“雲散霧消”してしまった。
 
 加えて、日銀が今回のマイナス金利政策を発表した129日は、日本経済の2017年度までの見通しを示す「経済・物価情勢の展望(いわゆる展望レポート)」を公表する日だった。同レポートでは、2%の物価目標達成時期を、従来の2016年度後半ごろから2017年度前半ごろに先送りしている。黒田総裁が就任当初、念仏のように唱えた2年程度での消費者物価指数2%達成が“いつまで経ってもできない”という批判にさらされるはずであった。
 
 しかし、マイナス金利政策の導入は、展望レポートから世間・マスコミの目をそらし、報道はマイナス金利一色となった。黒田総裁の策略が見事にはまったわけである。
 
 準備は周到だった。昨年来、何度マイナス金利について尋ねられても、黒田総裁は「検討していない」という返事を繰り返した。導入を発表するわずか8日前、参議院決算委員会に参考人して出席した際にも、黒田総裁は「現時点でマイナス金利を具体的に考えているということはない」と断言している。金融政策については、国会を冒涜しようが、日銀総裁には“嘘をつくこと”が許されているのだ。
 
 「日銀内部でも、マイナス金利政策の導入に対して反対論がかなりあった」(日銀幹部)という。導入決定の採決は、日銀政策委員会の審議委員9人の中で賛成5、反対4と分かれた。 マスコミはこぞって“薄氷の決定”と報道した。しかし、そんなことはない。審議委員の中で総裁と副総裁2人の日銀側3人の票は固まっている。あと2人を確保すればよい。そのために、バリバリのリフレ派である経済学者の原田泰氏と、円安メリットを享受する輸出産業の雄、トヨタ自動車の元副社長だった布野幸利氏を審議委員に加えたのだから。“票読み”に抜かりはなかったのだ。
 
■日銀の“致命傷”となる可能性
 黒田総裁はマイナス金利政策について、スイス、スウェーデンデンマークなどでも実施しているとしている。確かに、欧州中央銀行ECB)も当座預金はマイナス0.3%だ。しかし、ECBは長期国債の買い入れを時限的に行い、これにマイナス金利を併用することで、短期・中期ゾーンの金利を押し下げる政策だ。一方の日銀は“お腹いっぱい”長期国債を買い入れており、長期国債の追加買い入れ(増額)はせずに、マイナス金利を使って短期・中期ゾーンの金利の押し下げを狙っている。似たような政策でありながら、抜本的に違うのだ。
 
 122日にフォーサイトでアップロードした拙稿「日銀『債務超過』という『悪夢のシナリオ』」で、日銀の引当金積み増しを取り上げた。この中で、日銀自身が「超過準備預金額に相当する分の保有長期国債の利息収入」から「超過準備預金に対する利払い費用」を差し引いた利益の50%をメドに引当金の積み増しが可能、と説明していることを明らかにした。
 
 では、マイナス金利政策によって超過準備預金が減少もしくはゼロとなった場合には、引当はどうなるのか。日銀の引当金の基準についての説明の通りであれば、引当金はなくなることになる。だが、日銀の国債保有額が減少するわけではない。その上、これから買い入れる国債は非常に高値で買い入れる可能性が高い。つまり、“高値掴み”をする可能性がある。
 
 マイナス金利政策の導入は、日銀にとっては「国債の高値保有=財務負担増」という“諸刃の剣”であり、まかり間違えば“致命傷”となる可能性を秘めている。
 
 日銀が展望レポートで2%の物価目標達成時期として引き延ばした2017年度前半ごろといえば、黒田総裁の総裁任期(201848日)まで1年もない。黒田総裁は自らが放ったバズーカ砲の被害を処理することなく、日銀を去ることになる。
 
 
これ『日銀「マイナス金利」導入の「本当の理由」』と題した国際情報サイトForesightの鷲尾香一さんの記事である。
 
 
 私は経済にはズブの素人であるがこの記事の通りになると思うし、思っていた。どうしてこうも机上の経済学に拘るのだろうか。頭のよい人の考えは私には解らない。私はこの記事のように、シミッタレた銀行の連中は、この不況期に企業に貸し、貸し倒れされるよりは日銀に手数料を払ってまでも、リスク回避した方がと思うだろう。と言う事は、市中に金が行き届かず、策を弄しながら無策よりまだ悪いと言う事になる。だとするならこの責任をとり安倍さんと黒田日銀総裁は腹を切るべきである。