安倍首相は憲法記念日の5月3日、憲法改正について2020年の施行を目指す考えを自民党総裁としての立場で表明した。“戦争放棄”を掲げる9条1項、“戦力不保持”と“交戦権の否認”を定めた9条2項は維持したうえで、3項を新たに設けて3項に「自衛隊」を明記する考えを示している。
ニュースのおさらいと論点
その後、自民党内の議論を進め、国会に自民党案の提出を目指す考えも示しているが、安倍首相はなぜ2020年の憲法改正施行を目指すのか?また、議論の中心となる9条をどうすべきなのか?三浦瑠麗が護憲派、改憲派それぞれの専門家に話を聞いた。
■早稲田大学社会科学部教授 西原博史さん
最大の違和感は、2020年施行と時間を区切っている点。
そもそも憲法問題というのは、具体的にどういう問題があって、その問題をどう解決するためにどういう手立てをとればいいのかというきちんとした議論を踏まえるべきであって、自分の任期中だか何だか存じ上げませんけど、特定の時期までに決着をつけなきゃいけない。それって憲法改正自身が自己目的であって、何か問題を解決するために憲法を改正するという発想とは違うわけですから。
■9条に何か付け加えれば解決できる時代ではない
90年代には何とか9条を改正して憲法の強い規範力を取り戻すんだという議論はありましたので、そこに戻ってその議論を取り入れれば何とか憲法改正を実現できるのかなという線で(今回の話が)出てきたのかなと思うんですね。
ただ、これは平和安全法制以前の議論の立て方ですので、現時点でそういう議論の立て方というのは不可能になっている。9条に何か付け加えれば問題を解決できるっていう時代ではないのではないでしょうか。
9条2項の中に「交戦権の否定」が盛り込まれているので、交戦権がないけれども戦争ができるという条項はよく分からないですね。そこの部分は何らかのかたちで2項の「戦力保持」が禁止されている、交戦権が否認されているという部分を組み替えていかない限りは、憲法としてのルールの体をなさないということだと思うんですね。
衆議院、参議院ともに憲法改正の発議に必要な3分の2以上の議席があるにもかかわらず、憲法審査会が全然動かないわけですよね。ずっと憲法のお勉強をやっているわけですよ、立憲主義とは何なのかとか、地方自治について勉強しようだとか。「3分の2以上あるのに、なんで憲法改正していないんだ」という批判は当然あって然るべきで、憲法審査会を動かそうという狙いもあるんじゃないのかなぁと思います。
2020年までの国会スケジュールはかなりタイト
リミットを決めて2020年って言っていますけど、数えてみるとそんなに国会の回数はないんですよ。今の衆議院の任期で言うと3回、解散してまた衆議院が3分の2以上の議席をとったとしても5回しかないんです。2020年は少し先のような気がしていますけど、逆算していくとスケジュールはかなりタイトだと思います。
現行の自衛隊は2項が禁止する戦力ではないと、戦力のレベルに達していないという理解の下で自衛隊は出られているわけですね。1項と2項を残して3項に自衛隊を位置付けるということになった場合も、そこで位置付けられた自衛隊は相変わらず戦力ではないと。そういうことで2項と3項は矛盾しないんです。現状追認で、戦力ではない自衛隊を憲法に付け加えるというご提案ですので、良し悪しはあるんですけど、憲法改正のハードルはかなり低いんだと思うんですよ。
三浦瑠麗のまとめ
―なぜ、2020年に施行なのか?
自分の首相としての任期の間にきちんと、憲法改正施行を見届けるというのが第一。第二にやっぱりオリンピックとの関連というのはあると思うんですよ。2021年ではなく2020年であるということは安倍首相がおっしゃっているようにオリンピックというのは節目の年。安倍首相はこのように考えていて、安倍首相と同じように節目の年と考える人がそれなりの人口いる以上は明らかにプラスに働くという読みだと思うんですね。
―9条をどうするべきなのか?
「9条」という書き方をもう止めませんかというのが私の提案です。9条というのは魔力を持った言葉なので、反対賛成の多様な立場を見えにくくしてしまっているように思います。私の個人的な意見を言わせてもらえれば、9条2項の削除によって自衛隊を軍として認めて、認める代わりに国会にシビリアン・コントロール(文民統制)の権限と責任を自覚させようと。これが私の理想とする憲法改正案です。
私はこのニュースの通りと思う。もはやここまでの安倍首相の憲法改正の発言を聞いてると、その通りである。先日の3日、ビデオメッセージで首相は「2020年を新しい憲法が施行される年にしたい」と表明し、改正項目として9条を挙げて「1項、2項を残しつつ、自衛隊を明文で書き込むという考え方は国民的な議論に値する」との考えを示した。
冗談じゃない。自ら賞賛してる「アベノミクス」政策、確かに東証1部上場企業のこの3月期決算状況よかったとしても、地方経済は、日銀の短観を見ても解るように、決して全国的好況感には未だ遠いのが現実である。今政府が即座に手を付けなければならないのは、それこそ安倍政権の今後の御旗「地方創生」の筈である。なのに、政治的タブーの憲法改正の期限切り、これでは政権政党としての優先順位がまるで逆である。しかもこの改正に850億円の費用を投じる意味を含めても何故今なのか。政権与党の自公と維新の議員さんたち本当にこれで良いと思っているのか。我々国民の代議員として本当にそれで良いのか。