「医薬分業」誰のためいくら議論しても始まらない、議論する事は唯一医療費増大阻止だけである

 けがや病気で訪問した病院で処方箋を受け取り、院外の薬局で薬を受け取る-。車いすの人にも、発熱で歩くのが大変な患者にも不便なことだが、これが「医薬分業」といわれる仕組みだ。
 国は、病院と薬局を同じ建物や敷地内に併設することを認めていない、としている。医師による薬の過剰投与、いわば「薬漬け医療」を解消する目的で「医薬分業」を進めているのだが、「患者は分業のメリットを受けているのか」との声は絶えない。「医薬分業」は本当に必要なのか。
 3月12日、政府の規制改革会議(議長・岡素之住友商事相談役)は「医薬分業」をテーマに、日本医師会日本薬剤師会など関係者を招いて公開討論を開いた。傍聴席が抽選になるほど関心は高いようで、医薬分業の見直しを求める会議側と、医薬分業の旗振り役の厚生労働省とのバトルは熱を帯びた。
 「薬局の経営上の独立性が確保されていて、医師の処方に薬剤師が独立した立場からチェックする。これができていれば、患者の視点から病院と薬局が離れている必要はないのではないか」
 規制改革会議の委員側はこう述べて見直し論を主張した。対する厚労省は「医薬分業はまだ道半ばだ」などと繰り返し強調した。
 厚労省は、病院の建物や敷地の中に薬局を置くと、医師の処方箋を薬剤師がチェックするという安全性が揺らぎかねないとの懸念がある、と指摘する。「薬局の独立性」はどうしても譲れないのだという。
 「病院内にコンビニエンスストアがあるが、院内にあるから(コンビニの)経営がおかしいというものではない」。委員側からこう畳みかけられても、厚労省側は「コンビニとは必ずしも一緒ではない。医者と薬の関係を考えると、経営上の独立性をどう確実にしていくかだ」と反論した。
 医薬分業は意外に古い。昭和31年にスタートした。病院と薬局の経営が一体化していると、薬の仕入れ価格と国が決めている薬の価格(公定価格)との価格差、いわば「薬価差益」が病院側の利益となり、薬を処方すればするほどもうかる「過剰投与」を改めるのが目的にある。
 分離することによって、医師は必要最小限の薬を処方し、薬剤師は処方箋をチェックしながら患者に薬を出すという役割を担う形になった。厚労省は省令で、構造的にも病院内に薬局を置けないようにした。
 一方、医薬分業を促すため、国はこれまで調剤報酬の1つである「調剤基本料」を高めに設定するなどして、病院の外にある薬局の方がもうかるようにした。その結果、病院内に薬局を置く「院内処方」よりも、門前薬局による「院外処方」の方が調剤報酬が高くなった。さらに、患者が処方箋を持ってきやすいよう病院のそばに立地する「門前薬局」が乱立した。
 業界では「調剤バブル」として有名な話がある。
 関係者によると、25年に兵庫県内の山林に、病床数340の公立病院を建設する際、大手薬局チェーン店などが病院前の土地を「地価の1000倍」(業界関係者)の計14億円で自治体から購入した。
 病院全体の用地関連事業費の14億円に匹敵し、「調剤バブル」とささやかれた。初期投資がかさんでも、高齢化社会が進む中、病院から処方箋を持ってくる患者は絶えない。十数年後に「元を取る」ことができるというのだ。
 門前薬局の乱立で医薬分業率は67%(25年度)まで伸びた。各地の薬局は5万5000店もあり、コンビニの出店数と肩を並べるほどに成長した。一方で院外処方で薬を受け取る患者負担は増える。
 この点を健康保険組合連合会健保連)が公開討論会で指摘した。
 健保連によると、例えば花粉症の患者が14日分の内服薬などを処方された場合、院内処方は計1500円(患者負担3割で450円)になる。ところが、院外処方では調剤基本料410円、薬剤服用歴管理指導料410円などが上積みされ、計3250円(患者負担3割で970円)。同じ薬をもらうのに、院内と院外で2倍超の価格差が生じているというのだ。
 健保連はこのケースに基づき膨らむ医療費にも言及した。25年に全国の病院が発行した処方箋は約8億枚に上る。うち医薬分業率67%に基づき、院外で受け取る処方箋は約5億3000万枚。院外と院内の価格差を1500円で計算すれば、負担額は8000億円程度増えることになり、「これも医療費の伸びに影響していることは間違いない」と断じる。
 患者の視点に立ってみても、医薬分業の推進によって負担は増えたが、それに見合った薬局のサービスを受けられているのか。内閣府の調査では「分業のメリットは何か」との質問に「特にない」が最多だった。日本薬剤師会厚労省も門前薬局が乱立する現状は好ましいという認識はない。むしろ「本来の医薬分業の姿ではなく、皮肉にも経済原理が働きすぎてしまい、苦々しく思っているはず」(規制改革会議の委員)。
 それでも、日本薬剤師会などは「この処方はおかしいのではないか」と医者に疑義を訴え、処方を変更させたり、安価な後発医薬品に切り替えたりするなど、薬局は専門性を生かして国民に安心して薬を供給できる役割を果たしていると主張する。
 だが、厚労省などが医薬分業の理想に描いた「かかりつけ薬局」にはほど遠い。政府は高齢者が地域で医療や介護などを受けながら、住み続けられるようにする「地域包括ケア」システムを目指している。
 その中で、医療用医薬品を中心に扱う薬局は「処方箋なし」で購入できる胃腸薬など大衆薬の扱いを増やすとともに、適切な服薬支援を含めた生活習慣全般に関して相談を受ける「健康情報拠点」としての役割を目指しているが、現実は違う。
 「建前論だけに終始しても患者にメリットはない。実態に即していない」
 門前薬局が乱立した“誤算”に触れず、医薬分業の“メリット”ばかりを主張する厚労省に対し、規制改革会議の委員は討論会でこう指摘した。分業推進で生じた院内外の価格差を放置し、負担増に伴う十分なサービスも享受できていない現状は、患者側にしてみれば納得できないだろう。(政治部 岡田浩明)

『「医薬分業」誰のため 「院外処方」で患者負担が増している“不道理”』と題した産経新聞4月1日12:00の報道記事である。

 正しくこの記事のテーマよろしく、「医薬分業」は誰のためと言う事に尽きる。原因を辿れば、医師の医療への「モラル」や医療を商売と考える医療業そして健康保険の監督官庁である厚労省の医療費増大への懸念と薬剤師会の主導権奪回とが入り混じったそれらそれぞれの思惑の闘いと思え、根本原因の把握に程遠いお役所的思考そのものである。要は何を会議してるのかである。医療費を下げるんだったらやることは二つしかない。
それは増大する高齢者の憩いの場を造る事と高齢患者の窓口での診療費の一時自己払いしかないと私は思っている。「憩いの場」云々については、今や元気な高齢者が暇をもてあまし医療機関を社交場と化してるのが現状であるから、つまり身体が悪くなくても、友達等と会う為かレクレーション的を目的に病院等を利用してる場合が多い。また例え自己負担がアップしなくても、医療機関の窓口で一時的に診療費を自己払いし、後で市役所等からそれらを還付してもらうようにすればかなりの医療費節約になるは必定と思われる。
 この記事の議論に限って言わせて頂けば、例えどんなに処方箋がどうあろうとも、薬剤師は医者に処方箋の意義を唱えても、法で処方箋は医師がする事となっているからどんな事言っても薬剤師の出る幕は無いのである。