マニュフェスト選挙に思う

 私は最近日本にマニュフェストを最初に提唱した前三重県知事の北川正恭早稲田大学大学院教授や、ジャーナリストの田中良紹氏のコラム等を見てからは、マニュフェスト選挙に対する考え方が180゜変わりました。今までは選挙を戦うにはマニュフェスト選挙と言うものは必ず必要で、それに数値目標を立てて戦うのが当然と思ってた。がこの30日選挙前の解散時以後の新党を目指した離党を見るに付け、マニュフェストで戦った議員の資格はどうなるのだろうと真剣に考えたものだ。確かに日本型マニュフェストであろうが、有権者にとって見ればどうも矛盾しているとしか思えない。やはりマニュフェスト選挙は日本には馴染まないのではと思うようになった次第である。
 マニュフェスト選挙は議会制民主主義の国英国が本場である。英国では議員は政党に隷属し党議拘束をかけられて選挙をする。とても日本のように政党と言うよりはアメリカと同じように議員本人に投票する国では矛盾するように思うのである。今までの政権政党が選挙時だけのマニュフェストを掲げ、結果検証無しのマニュフェスト選挙なんて無い方がましだと思う。やはり、マニュフェスト選挙なら、わが国をこれからどうするかという国家観、もっと大きな今後の方向性の提示が欲しい。そう思うのは私だけであろうか。


この原稿を書いてて「これぞ選挙目当て「自公」マニフェスト騙しの手口」と題してのニュースが眼に留まったので紹介します。(日刊ゲンダイ2009年8月13日掲載)


 自民、公明が12日与党共通のマニフェストを発表した。呆れ返ったのが「年金政策」だ。無年金・低年金対策として、受給資格を得られる最低加入期間を、現行の25年から10年に短縮する。来年の通常国会で法改正するという。
 現在、加入期間が25年に満たず無年金となっている国民や、この先加入を続けても受給権を得られない人は118万人いる。納付した保険料も戻ってこないから、まさに払い損だ。
 加入期間を10年にすれば、無年金という最悪の状態から抜け出せる国民が増えるのは間違いない。本来なら、とっくに国会で審議していておかしくない重要なテーマだ。それを、選挙直前に突然、ぶち上げるなんて「選挙目当て」もいいところだ。
「無年金・低年金は散々問題になってきたのに、自公は『100年安心』とか言って手をつけてこなかった。最低加入期間を短縮したら、25年間納付してきた国民から『不公平だ』と批判が起きかねないし、巨額な財源が必要になると、見て見ぬふりをしてきたのが実態です。なのに、この時期にマニフェストに載せるなんて“票目当て”がミエミエです。だいたい、細田幹事長は『支給額や財源は今後詰める』などといい加減なことを言っているのだから、どこまで本気なのか」(政治評論家・山口朝雄氏)
 自民党民主党マニフェストを「夢物語だ」などと批判しているが、マニフェストを詳細に見ると、自民党の方が「選挙目当て」は露骨だ。10年間で可処分所得を100万円増やすというのが典型である。
自民党マニフェストを見ると、05年総選挙のマニフェストに掲げた内容が、そっくり載せられている。幼児教育の無償化、非正規労働者対策、道州制……。政権政党として、この4年間に実現できなかった政策を、臆面もなく載せている。なぜ4年間で実現できなかったのか、一言の説明もない。本来、政権政党マニフェストは実績が評価されるべきなのに、そうした意識が欠けています」(民間シンクタンク研究員)
 自民党は「どうせ国民は4年前のマニフェストなど忘れている」と国民をバカにし、今回も「年金政策」を打ち出したのだろうが、国民がいつまでも騙(だま)されると思ったら、大間違いである。