■円高要因だらけ
新元号に浮かれていた4月1日、日銀が発表した3月の短観は散々だった。大企業製造業の景況感を示す業況判断指数(DI)は、第2次安倍政権が発足して以降、最大の悪化となった。企業は先行きに不安を抱き始めているが、想定為替レートはあまりにも楽観的。これでは、急激な円高で傾く企業が続出しかねない。
DIは前回の昨年12月調査から7ポイント下落のプラス12だった。低下幅は、2012年12月(9ポイント低下)以来、6年3カ月ぶりだ。
驚いたのが、2019年度の想定為替レート。大企業製造業が事業計画の前提としている想定為替は、1ドル=108.87円だった。
現在は111円前後だが、2~3月は109~111円台、1月は107~109円台で推移していた。1月3日には一時104円台まで円高が進行する場面もあった。
企業が想定する108.87円は、足元の為替に毛が生えたようなレベルなのだ。経済ジャーナリストの井上学氏が言う。
「あまりにも楽観的で驚きました。ほとんど円高リスクを織り込んでいない想定為替です。あっという間に、想定割れが起こるでしょう。為替は、今年中の100円割れも十分考えられます。というのも、この先、円高要因がたくさんあるからです」
▼欧米の今年中の利上げ見送り、または利下げ▼日米貿易協定交渉におけるトランプ大統領の円高圧力(為替条項)▼世界経済への不安からの安全な円買い――。これらはすべて円高要因だ。通常なら日銀が、利下げや金融緩和で、過度な円高にブレーキをかけるのだが、すでにジャブジャブの金融緩和はマイナス金利策までやり果てており、打つ手がない。円高がドンドン進行しても日本は傍観するしかないのだ。
「1ドル=80円台の民主党政権時代、企業は苦しみましたが、80円でも利益が上げられるように鍛えられた面もあります。一方、安倍政権下、6年余の長期間の円安政策で、企業は円安メリットにドップリ甘んじてきました。その結果、企業の体質はかなり弱くなっています。本来なら円高要因が見えている19年度は、せめて105円、できれば100円以下の厳しめの為替の想定をして、それでも利益が上げられる施策を講じていく必要があるのです。108円台での事業計画では、急激な円高になった時、アッサリ赤字が出てしまうことになります」(井上学氏)
安倍政権が「アベノミクス」経済政策にカコつけた恣意的円安株高政策が、ボディブローのように輸出企業に襲い掛かる。あれだけ安倍首相が「儲けさせたから賃金のベースアップを」と願っても上げなかった企業群、何の事ない安倍政権をあれだけ上げへつらいながら、心の底では信用せず内部に留保したのはさすがと言わねばならない。やはり日本企業は企業あっての個人という事だろう。サムライ魂ここにあり!だ。とすれば安倍首相は裸の王様でしかないという事になり、責任を考えれば、参議院選を待つまでもなく退陣と言うシナリオも現実化してくるのではと私は思う。