首相は昨年9月に総裁3選を果たしたばかりだけに、党内から「いくら何でも早すぎる(自民幹部)との声が相次ぐ。最新の世論調査では4選反対が過半数だけに、首相も「正真正銘、3期で最後」と火消しに追われている。しかし、「解散発言と同じで、額面どおりには受け取れない」(閣僚経験者)。参院選後に想定される党・内閣人事や、「ポスト安倍」レースの混迷も絡んで、自民党内の思惑も錯綜しているのが実態だ。
■ポスト安倍3氏は相次ぎ批判
自民党内の首相支持勢力の間でくすぶっていた安倍4選論を一気に浮上させたのは党ナンバー2の二階俊博幹事長。3月12日の記者会見で首相の総裁4選について「今の活躍からすれば十分ありうる」と明言。長期政権の弊害についても「余人をもって代え難いときには何ら問題はない」と力説した。
ポスト安倍の有力候補として「反安倍」の姿勢を強める石破茂元幹事長は、インターネット番組で「有権者が『そうだそうだ』と言うかは選挙をやってみないとわからない」と困惑を隠さず、同氏周辺は「まともに取り合ったら日本の政治がダメになる」と反発した。
岸田文雄政調会長も「明らかなのは、党則は3期までということだ」と不快感をあらわにし、野田聖子衆院予算委員長は「(二階氏の発言は)この時期には適当ではない。国民を置き去りにして首相を勝手に決めるようなイメージもある」と批判した。
また、昨年の総裁選で石破氏支持に回った吉田博美参院幹事長(竹下派)は「まだ(3選が)決まったばかりだ」と二階氏発言のタイミングに疑問を呈した。さらに野党側でも共産党の小池晃書記局長が「(首相の4選は)悪夢だ。よほど自民党には人材がいないのか」とあきれてみせた。
報道各社は世論調査で安倍4選の是非を質問項目に加えた。朝日新聞では賛成27%、反対56%、産経新聞・FNN合同調査で賛成31.1%、反対59.3%と、「過半数が4選反対」という結果となった。ただ、朝日調査の支持政党別内訳では、自民支持層は賛成46%、反対39%で、無党派層の賛成17%、反対62%と支持層によって賛否が大きく分かれた。
こうした騒動を踏まえ、当事者である安倍首相は20日、都内のホテルで開かれた日本商工会議所の会合で「連続3期9年までというのが党の明確なルールだ。正真正銘、(現在の)3期目が最後の任期となる」と4選を明確に否定してみせた。安倍首相同様、異例の3期目に臨む三村明夫日商会頭の例を挙げ、「三村会頭は『マックス(最大)であと1期』とおっしゃったとうかがった。私もまったく同じ心境だ」と困惑気味の笑顔で語った。
ただ、二階氏の4選発言以降、安倍首相の反応が微妙に揺れているのも事実だ。13日の参院予算委では、企業の高齢者雇用に関連して「私も今年65歳になるが、まだ働きたい(という)意欲は満々だ」と、4選に前向きとも受け取れる発言をして委員会室をざわめかせた。
首相サイドは「参院選を控えて、有権者の反安倍ムードを拡大させかねないとの懸念から、完全否定せざるをえなかった」(細田派幹部)と指摘すると同時に、「最近の二階氏の言動からみて、今回の『4選ありうる』発言は、首相にとっても迷惑なはず」(同)と顔をしかめた。
■「ポスト安倍」レースは混戦模様
二階氏は2016年夏の幹事長就任直後から、連続2期までだった総裁任期を連続3期までに延ばす党則改正を主導し、昨年9月の首相の総裁3選を実現させた。権謀術数を駆使する二階氏の言動は党内でさまざまな軋轢も生んでおり、今回の4選発言も「参院選後の人事での幹事長続投を狙ったもので、『首相が続ける限り、自分も続ける』との強いメッセージ」(自民幹部)とみる向きが多い。
ここにきて二階氏は、小池百合子東京都知事の「再選支援」発言で自民党都連の反発を買い、旧民主党の細野豪志元環境相の二階派入りなど非自民議員の取り込みでは、選挙区の公認問題での派閥対立の原因をつくっている。
このため党内からは「これ以上やりたい放題を許すべきではない」(閣僚経験者)との声が噴出し、参院選後の幹事長交代論も浮上している。人事権者の首相も「対応に苦慮している」(側近)とされるが、当の二階氏は「素知らぬふり」(二階派幹部)で言いたい放題が収まる気配はない。
次期総裁選には、それぞれ派閥を率いる石破、岸田両氏のほか、野田聖子氏(無派閥)と河野太郎外相(麻生派)も出馬への意欲を示す。さらに、加藤総務会長(竹下派)も「つねに高みを目指す」と語り、国民的人気を誇る小泉進次郎厚生労働部会長は「2020年の東京五輪後は若い世代が日本を引っ張るべきだ」と世代交代の必要性を繰り返す。
メディアはポスト安倍について、「岸(岸田)破(石破)聖(野田)太郎(河野)」「岸破義(菅)信(加藤)」と書き立てるが、「本命不在で誰もが決め手に欠ける」(自民長老)のが実態。
昨秋の総裁選の党員投票で安倍首相に肉薄した石破氏は「議員レベルでの石破嫌いを払拭できていない」(自民幹部)とされ、安倍首相の「意中の後継者」(細田派幹部)とされる岸田氏も「一向に党員・党友の支持が広がらない」(自民幹部)。
■「安倍4選」実現には高いハードル
小泉氏は父親の純一郎元首相が「まだまだ経験不足」と明言するなど、「天才子役からの脱皮にはなお時間がかかる」(自民長老)とみられている。
まさに「群雄割拠どころか、帯に短したすきに長し」(自民幹部)という実態で、前述の産経・FNN調査でも「首相にふさわしいと思う国会議員で、安倍首相の実績を超えることができると思う議員がいるか」との質問の答えは「いる」21・3%、「いない」68・4%となっている。だからこそ、安倍4選論が台頭するわけで、二階氏の発言について「自らの続投メッセージだけでなく、党内世論の先取り」(閣僚経験者)との見方も広がる。
そうした中、首相サイドからは「今後の外交戦略からも総裁任期の延長が必要」(飯島勲内閣官房参与)との声が上がっている。「日本の進路に直結する日米、日ロ外交をみても、トランプ大統領が再選すれば2期目の任期は2025年1月まで。プーチン大統領の任期も2024年5月までで、首相の任期が2021年9月で切れれば、安倍外交で築いた両大統領との信頼関係はその時点で振り出しに戻ってしまう」(同)のが理由だ。
もちろん、安倍4選には党則改正が必要で、「3選実現のための昨年の改正よりハードルはかなり高い」(自民事務局)のは事実。ただ、首相の「正真正銘」発言も、衆院解散をめぐる「片隅にもない」発言と同様に「首相の真意は別のところにある」(石破派幹部)との受け止めは少なくない。昨秋の総裁3選後も安倍1強を維持している首相にとって、「4選論は安倍外交とともにレームダック化を防ぐ最大の武器」(自民幹部)とみられている。
あくまでもこれは私の主観論だが、安倍首相の事である、スケベ心で自民党総裁4選論を言わせて様子を見たのだろうが、党内の反応が意外に悪く、しかも世論も反発している。権力の旨味は権力を取った者しか解からないのだろうが、あわよくばの気持ちはあったのだろうと推察する。でも現実が解かった後は迷う事無く、去る者の辛さのカバーに切り替えたのだろうと思う。頂を得た者は降りるしかないと言う常道を受け入れるしかない事を知ったのだろう。
何故そう思うのかと言えば、「モリカケ」問題と全く安倍首相の本質は同じだからだ。嘘を言い、それを後から繕うその繰り返しだからである。