今秋の自民党総裁選、名門宏池会のプリンス軍事オタクよりも風下か?

 立秋とともに猛暑が一服した永田町では、告示まで1カ月となった自民党総裁選に向けて、各派閥・グループによる水面下での多数派工作が進んでいる。誰もまだ正式には出馬表明していないのに、すでに現総裁の安倍晋三首相の「圧勝」が確実視される中、政治の世界で注目されるのは「首相の勝ち方」だ。首相サイドは、対抗馬の石破茂元幹事長に「トリプルスコア以上の圧倒的大差」をつけるべく、派閥単位での「票の囲い込み」に余念がないが、「やりすぎに対する党内の反発が怖い」との声も出始めている。
 首相が「圧勝」を目指すのは、現在の1強体制を維持することで、総裁選後の党・内閣人事や秋の臨時国会の運営でも主導権を確保し、悲願の憲法改正の早期実現に党全体で取り組む態勢を固めるためだ。ただ、これまでの「強圧的」(自民長老)ともみえる多数派工作には党内良識派の反発が強い。そのため、地方票を中心に反安倍票が拡大して、票差が「ダブルスコア以下」という石破氏の善戦につながれば、首相の求心力は低下し、来夏の参院選に向けた政権運営に陰りが出かねない。
 6年ぶりとなる総裁選は97日告示・20日投開票となる見通しだ。日程や実施要領を決める総裁選管理委員会は、6日の初会合で党内最長老の野田毅自治相を委員長に選任した。委員は衆院8人、参院3人の計11議員で、これまで通り党内各派・グループの代表を網羅した構成。お盆明けの821日の次回会合で日程などを正式決定する段取りで、首相や石破氏はこれとタイミングをあわせて正式に出馬表明し、本格的な戦いの火ぶたが切られる。
■安倍首相、議員票は「トリプルスコア」以上だが
 
 今回の総裁選は、現時点では自民党所属議員(衆参議長は除く)405人が各1票、「地方票」と呼ばれる地方議員を含めた党員・党友票には議員票と同じ405(候補者の得票数に応じてドント方式で算出)が配分され、合計810票の争奪となる。立候補者が3人以上となって、第1回投票で過半数を得た候補がいない場合は、議員と都道府県代表(47)による上位2名の決選投票で決着をつけることになる。
 
 ただ今回の場合、有力候補とされた岸田文雄政調会長が不出馬を決め、出馬に意欲を見せる野田聖子総務相20人の推薦人確保に苦闘しているため、最終的には首相と石破氏の一騎打ちとなる公算が大きい。しかも、議員票だけをみれば、すでに細田94人、麻生派59人、岸田派48人、二階派44人、の主要4派が首相支持を決めて選挙対策本部を発足させており、無派閥73人の半数近くとされる菅(義偉官房長)グループなども加えれば300人超が首相に投票する見込みで、石破氏は「議員票は最大でも100票以内にとどまる」(自民幹部)とみられている。
 一方、全体の半分を占める地方票は「ふたを開けてみなければ分からない」(総裁選管理委)とされるが、大半を占める議員系列や各種職域団体の党員・党友票は「組織票」とみられており、圧倒的な議員票を反映して、首相支持が石破氏支持を圧倒するとの見方が広がっている。
 
 大手メディアが実施した総裁選に関する情勢調査でも、自民支持層に限れば首相が石破氏の3倍前後の支持を集めている。だからこそ、首相サイドは「トリプルスコアでの圧勝」を目標にしているのだ。競馬に例えれば「向こう正面でつけた大差をそのままキープ」(細田)することで、「自動的に結果がついてくる」()という読みだ。
 現状では圧勝確実とされる首相が、総裁選での最大の争点に「憲法改正」を掲げたのは、首相主導の「改憲案」に異議を唱える石破氏を総裁選で圧倒することで、党内を「安倍改憲」に一本化する狙いからだ。その上で、秋の臨時国会で衆参両院憲法審査会の改憲論議を一気に進め、来年の通常国会会期末までの「国会発議」を目指す戦略とみられる。
 
■根強い1強批判が「圧勝戦略」の死角
 
 ただ、こうした「圧勝戦略」の死角となりそうなのが「強権的手法に対する反安倍票の拡大」(自民幹部)だ。大手紙の最新の世論調査でも「首相による1強政治」については自民党支持層でも「よくない」が5割を超えている。石破陣営では「これがそのまま党員・党友の投票行動に反映すれば、地方票では首相と互角の勝負ができる」(石破派幹部)との期待が広がる。
 
 たしかに、6年前の総裁選において、決選投票で敗れた石破氏だが、第1回投票の地方票では「165票対87票」で首相を圧倒した経緯もある。今回総裁選で、石破氏が「自由にものが言える自民党にするべきだ」などと“1強批判を繰り返すのも、地方票で「潜在的安倍批判票」の掘り起こしを狙っているからだ。ただ、現状の議員票での大差を覆すほどの地方票での地滑り的石破支持は「ほとんど可能性がない」(自民幹部)とみる向きが多い。「総裁選は結局、首相の3選のための消化試合になる」()との見方が定着しているのだ。
 そこで永田町スズメの間で浮上してきたのが「もう一つの勝敗ライン」だ。総裁選での首相の「勝ち方」が3選後の政局展開を左右するとの読みからで、「首相と石破氏の票差がダブルスコア以内なら首相の1強は崩れる」(無派閥有力議員)との見立てだ。
 
 これを具体的票数に当てはめると、石破氏が合計200票以下なら首相は600票以上となり「トリプルスコア」で首相は安泰だ。逆に石破氏が合計270票以上となれば首相は540票以下にとどまり、「ダブルスコア」も割り込む。議員票によって変動はするが、地方票で石破氏が過半数(200票超)となればダブルスコア以上の敗北を免れる可能性は大きい。首相にとっても「党内民意の指標となる地方票で石破氏と拮抗する結果になれば、圧勝だと胸を張れない」(自民長老)ことになる。
 ここにきて、党内第3勢力の竹下派55人が石破氏支持の方向となりつつあるのは、「3選後も安倍1強による独裁が続けば、国民の反発が強まり、参院選敗北につながる可能性が大きい」(参院幹部)との判断が背景にあるからだ。政界引退前は「参院のドン」と呼ばれた青木幹雄官房長官が同派参院組を石破支持でまとめたのも、来年の参院選への危機意識からとされる。
 
 一方、同派の衆院組では茂木敏充経済財政担当相や加藤勝信厚生労働相ら幹部が首相支持を明言している。このため、4月に派閥を受け継いだばかりの竹下亘総務会長の判断が注目されているが、同派内では「落としどころは実質的自主投票」との見方も出ている。
 
 同派は前身の旧竹下派時代から「一致結束箱弁当」と呼ばれた結束力が身上だった。それだけに「草刈り場になれば、竹下会長の求心力も低下する」(細田派幹部)との声はある。だが、「参院での主導権」を最大の強みとする同派は「首相が参院を支配する竹下派を敵に回せば、政権基盤が揺らぐ」(竹下派幹部)とする。そもそも青木氏は、竹下会長の兄の故・竹下登元首相の側近で、「今回の竹下派の動きは、竹下氏と青木氏が派閥の存在をアピールする高等戦術」との見方も少なくない。
 そうした状況を踏まえ、首相サイドはこれまで、地方票の積み上げに全力を挙げてきた。首相が国会閉幕前後から、「公務もそっちのけ」(石破派幹部)で地方県連や職域団体の幹部らとの懇談などを重ねたのも、「地方票での石破氏の追い上げを阻止する戦略」()だからだ。
 
 首相支持を断言して総裁選の指揮をとる二階俊博幹事長ら党幹部は、有権者となる党員・党友の名簿などをフル活用した「徹底したローラー作戦(二階氏周辺)で地方票獲得を進める。併せて、首相サイドからは、陣営内の議員に対して「総裁選後に都道府県別の得票分布を検証し、各議員別の成績表の結果を、その後の人事に反映させる」(側近)との恫喝めいた声が伝えられている。
 首相の「政界の師」だった小泉純一郎元首相は、森喜朗(元首相)の退陣に伴う2001年春の総裁選で、「自民党をぶっ壊す」と叫んで地方票で圧勝し、議員票でも大逆転して首相の座を勝ち取った。また、細田派の源流となる旧福田派を率いた福田赳夫(元首相、故人)が現職の総裁(首相)として臨んだ1978年総裁選では、初めて導入された党員・党友による予備選で大平正芳(故人)に敗れ、「天の声にもたまには変な声がある」との迷セリフを残して本戦出馬を辞退した例もある。まさに「地方票を制する者が総裁選を制す」という歴史だ。
 
 ただ、この2回の総裁選は、議員投票の前に地方票の結果が公表されたことが「大逆転」につながったケースだ。ところが、今回は地方票が党本部での一括集計となり、しかも開票結果は議員投票の結果と同時発表となる方向だ。「地方票と議員票の連動を避ける」(執行部)という理由だが、首相サイドの「議員票囲い込み」を確実にする新ルールともみえる。このため党内には「地方票に強いとされる石破氏の封じ込めを狙ったもの」(石破派幹部)との見方がある。
 総裁選での首相圧勝が既成事実化する中、各種世論調査での平均4割強の内閣支持率に大きな変化はなく、多くの調査では「不支持」が「支持」を上回る状況も続いている。特に、不支持の理由で「首相が信頼できない」が断然トップとなっているのは、野党の混乱や党内ライバルの弱体化が「首相への消極的支持の拡大」につながっているからだ。石破氏が首相の独裁的な政治手法を批判するのも、こうした「首相不信」を集票に結びつける狙いからとみられる。
■地方票で拮抗なら「安倍改憲」も不透明に
 
 首相サイドが恐れるのは「議員票は首相が圧勝したが、地方票は石破氏と拮抗した」という結果だ。そうなれば首相が嫌がる「ポスト安倍の本命は石破」という流れとなり、人事でも石破氏を処遇せざるを得なくなる。加えて、石破氏が異を唱える「安倍改憲」の前途も不透明となりかねない。さらに、現在の1強体制が揺らげば、参院選の結果次第では選挙後に進退問題が浮上する可能性も出てくる。
 首相は11日から14日までの日程で、地元の山口県に入る。11日には党山口県連主催の会合に出席するほか、12日には父・晋太郎元外相の墓参りをした後、下関市内で講演する予定だ。総裁選出馬について首相自身はなお「じっくり考える」と繰り返すが、県連会合でのあいさつや下関講演が「事実上の出馬表明の場となる」(自民幹部)との見方も多い。
 
 この地元入りは首相にとって「プチ夏休み」だが「英気を養うというより、永田町を離れて石破氏ら反安倍陣営の出方を見極める期間」()となりそうだ。その結果、首相がこれまでの「横綱相撲を振り捨てての石破氏制圧作戦」()を軌道修正するかどうかに、永田町の注目が集まっている。
 
 
これ「安倍首相が石破氏との一騎打ちで狙うライン」と題した東洋経済オンライン8/8() 6:00の政治ジャーナリスト : 泉 宏さんの記事である。
 
今の国会議員を私は政治家とは思っていないから政治屋と呼んでいる。正に今回の自民党総裁選へのそれぞれの対応それに近い体たらくである。
これらを思えば自国の代表は米国のように、国民の直接選挙にしたい気持ちである。国政への代議員としての我々国民の代理人にしてはどうも程度が低過ぎる。そう思わざるを得ない最近の国政状況である。それこそ政治屋の本領発揮と言える。
私は昔から自民党の派閥の有益性は人間の性(さが)に帰来するとして無用論ではない。それこそ「3人寄れば派閥が生まれる」の例え通り否定出来ないからだ。だが議員個人の考え方まで縛るのはどうかと思われる。何故ならその議員は選挙民の代議員であるからだ。選挙民の代表として、民主主義的に決しようとするなら、まずその代議員は選挙民の意向で動くべきと思う。ただそこには人間としてのしがらみがかなりのウエイトを占めるだろう。だからこそ派閥の代表者の意向に沿うのは当然なのかもしれないが、政治家としての本分だけはわきまえるべきである。これは政治家としての矜持の問題である。
話を戻せば、今の自民党政治は異常である。これは選挙法によるのかも知れないが、いやしくも国会議員は選挙民の代表である。代表でありせばその主張は少なくとも良し悪し別に少数であろうとも尊重されるのが筋であり、その主張を無視し、党の代表の意思如何で左右され、もしくは抹殺されるは民主主義に非ず、完全なる独裁と言い、戦前戦中ナチス・ドイツヒットラー政権と何ら変わらなくなり、差し詰め占領下のGHQ以下となる。その体制の現安倍政権がGHQ下の憲法を変えようとするは矛盾としか言いようがない。
自民党総裁選を回避した自民本流の宏池会の会長の岸田さん、私的にはお恥ずかしいが、今だから話せるがこの方がいつ宏池会の会長で岸田派になったのか実は知らなかった。
素人ながらもそれなりに政治に興味を持っていた私が見逃してしまった。別の見方で考えれば、この岸田さんかなり政治的には大人しい方か。だとすれば安倍首相と立ち向かうには少々器が・・・・・と言う事か。今回の対応見てればナットク?(笑う)
所詮はそれだけの人間だったと言う事か。
比べれば余り仲間もいない軍事オタク石破さんよりも落ちると言う事か。