巨人が外野手・大田泰示を日本ハムとトレードした。巨人は大田と公文克彦投手、日ハムからは吉川光夫投手と石川慎吾外野手の、2対2のトレードである。大田は平成20年(2008年)のドラフト1位で東海大相模高校から入団した。毎年「将来の4番候補」と期待されたが、今季も62試合に出場して打率.202、4本塁打に終わった。私はこのトレードのニュースに愕然とした。歴代の監督・コーチに「大田を大成させるために、あらゆる努力をしたか」と問えば、口をそろえて「した」というだろう。しかし、私はそうは思わない。私は前から「大田は化ける」と思っていた。なぜかというと、背丈があって顔もいい。肩もよくて、走れて、全部そろっているが、バッティングのタイミングというものを知らない。それだけだった。当たればホームランになるということは、打てるということだ。これほどの逸材をものにするだけの根気が、巨人のコーチ陣にない。
私はヤクルトと西武で監督を務めた経験から、選手を育てるには「選手のやる気とコーチの根気」が不可欠だと思っている。この持論からいえば、大田の努力も足りないが、ドラフト1位の大器を8年かけても育てられなかった監督・コーチの責任は大きい。大田の欠陥はタイミングの取り方だ。大田の欠陥は分かっている。馬鹿正直に、「球が来たら左足を踏み出し、バックスイングしてから打つ」という理論どおりにバットを振っている。これでは一度構えたバットを、球が来てから引いて打つことになるから間に合わない。私が「タイミングの取り方を知らない」というのはこのことだ。例えば外野手は、打球を捕ったらすぐ投げなければ間に合わないが、分解写真で見ると、前足を踏み出してからテークバックして投げている。しかしこれを一連の動きのなかで素早くやるから、流れるようなスローイングになっている。打者もスロー映像で見れば同じで「前足を踏み出してから打ちに行く」のだが、コーチが動きを分解して教えるから、選手は分解写真のように打とうとしてタイミングが遅れてしまう。イチローは、投手がモーションを起こすとバットを高く構え、ボールが来たらそのまま、バックスイングをしないで打っている。そうでないと、メジャーの速くて重い球を打てないからだ。あの王貞治も同じだ。右足を上げてバットを耳のあたりで構えて待ち、ボールが来たら無駄な動きをしないで打った。大田の場合も、コーチが「それではだめだ。こうしなさい。そうすれば打てる」と教えればいいのに、その自信も説得力もない。
これ巨人の外野手・大田泰示を日本ハムへトレードへの痛烈な指導力批判である。幻冬舎plus11/12(土) 6:00の配信記事である。