「偽物の維新の党に負けるわけにはいかない」
久しぶりに言いたい放題吠えたのが大阪市の橋下徹市長だ。新党「おおさか維新の会」の結成を表明した10月1日の記者会見で、橋下氏は「古巣」の維新の党に罵詈雑言を浴びせた。だが一皮めくると、大阪市長選で負ければ、一巻の終わりという苦しい事情がある。
古くから大阪市にいる商売人たちは「この街では国会議員も、府会議員も力がない。モノを頼むなら市会議員、市役所、そして市長なんや」と口をそろえる。それは、橋下氏が知事から市長にくら替えしたことからも明らかだ。その意味で大阪ダブル選挙の市長選こそが、橋下維新の生命線なのだ。
府知事選には現職の松井一郎氏をたてるが、大阪の政界関係者は「仮に府知事選で維新が勝っても、市長選で負ければ終わりだ」と予言する。
そもそも10月のこの時期に新党結成をぶち上げたのも「11月の大阪ダブル選めがけて話題をつくり、選挙戦を有利に進めるのが狙い」と永田町では受け止められている。
都構想の住民投票では、維新側の物量作戦は圧倒的。既成政党が結集したとはいえ、大阪では国政政党の権威がなく、反対派は劣勢を強いられた。その中で反対派の中心になった柳本氏の評判はよく、“最強候補”と目されている。一方の維新は、「吉村氏は、昨年末の衆院選で市議から転じたが、選挙区で敗れ、比例で復活した。知名度不足は否めず、市議団は大阪1区選出の井上英孝衆院議員を推していましたが、橋下氏の意向で吉村氏に決まりました。結局、選挙は橋下氏頼みですから」(維新関係者)
もし、大阪市長選で敗れれば、国政政党「おおさか維新」も存亡の危機に陥る。維新の党から「おおさか維新」に移る国会議員の数は今のところ20人未満で、維新の過半数に届いていない。だからこそ橋下氏は「激しい引き抜き合戦になる」と、松野頼久代表率いる維新の党との議員争奪戦にもなお、意欲を示しているが、本拠地で敗れれば、永田町の「小政党」に終わる末路もあり得る。