ついに「アベノミクス」内部崩壊か?

 安倍政権発足から1年が経過した。この間、大幅な金融緩和を行ったアベノミクス効果により、「円安・株高を背景に企業業績は上向き、消費マインドは回復基調にある」(大手証券幹部)ことは確か。だが一方で、アベノミクスの弊害も目につき始めた。
 池尾和人・慶応大教授は、「安倍政権発足時から約20%の円高是正が進んだにもかかわらず、輸出数量の増加はほとんどみられていない」と指摘している(日経『経済教室』12月4日付)。
 円安が進んだというのに、なぜ輸出が伸びないのか?
 通常、円安になると「Jカーブ効果」が現われる。円安で輸出品の値段が安くなるため、貿易収支は一時的に悪化する。だが、しばらくすると輸出の全体量が増加するため、「J」の字を描くように黒字化するという経済理論だ。
 だが今回、円安で期待された輸出は「自動車以外は、目に見えた改善品目は見当たらない」(大手商社幹部)。輸入のほうは、震災に伴う石油・ガスなどの代金が円安で膨らむため、日本の貿易収支は10月に過去最大の1兆907億円の赤字となった。貿易赤字は16カ月連続。10月の経常収支は9カ月ぶりに赤字に転落した。日本の「国富」は確実に目減りしている。
 しかも新興国の成長鈍化や米国の金融緩和縮小もある。Jカーブ効果は期待薄だろう。
 また、アベノミクスを支える日銀にも暗雲が垂れ込め始めた。黒田総裁は2年間で2%の物価上昇を目指すが、政策を決める9人の委員のうち4人もが、黒田総裁に反旗を翻したのだ。
 日銀金融政策決定会合(10月31日)では、白井さゆり審議委員と佐藤健裕審議委員の2人が物価見通しに「下ぶれリスク」を明記するよう提案。また、木内登英審議委員は、「2015年度にかけて2%目標達成が可能」とした記述の削除を提案した。
 さらに、1人の審議委員は「2%に向かって物価が上昇することは不確実性が高い」とし、見通しが下振れした場合は「金融政策に対する信認を毀損するおそれが高い」とまで指摘した。
 来年4月には消費増税も控えている。アベノミクスの行きつく先が国債暴落と海外への資本逃避という悪夢にならないことを祈るばかりだ。文 森岡 英樹 (ジャーナリスト)
 

これ「国富は目減り…アベノミクス1年目の通信簿」と題した週刊文春WEB12月13日 07:00配信の記事である。

 
 確かに理屈では、当事黒田日銀総裁の思惑通りに進む筈だったが、それは平時の方程式だった。がとにかく、この経済の見通しの描けない乱世においては、その理屈が通らなかったと言う事は確かである。要するに昔ながらの経済の理屈は現在に於いては当てはまらなかったと言う事にもなる訳だ。しかし、国益を預かる政権者は時によっては緩慢である。が国を治むる政権者は少なくとも、受益者の代表でなくてはならない。そういう観点から鑑みれば現在の政権者たちは、形を変えたサギ者同然である。理論と現実の乖離を差し引いてもその責は重いと言わねばなるまい。今の彼らの責任は、それを重く受け止め、国民と正面に対座し、適正なる覚悟と言える国民への真摯なるお返しが必要ではと私は考える。それが何なのかは己と解かる筈である。