元東大学長の佐々木毅さんのコラム紹介 安倍日本とトランプ米国の今後

 先月のこの欄で、今年は世界中が波乱の年になりそうだと述べた。併せて、トランプ氏の「アメリカ・ファースト」(米国第一)についても述べた。その予想にたがわず、出発早々のトランプ政権は毎日のように、世界を震憾させるような政策を次々と打ち出している。
 ついに、メキシコとの国境の壁の建設にもゴーサインを出した。メキシコはその費用は払わないと反発を強め、首脳会談をキャンセルした。環太平洋連携協定(TPP)は      最初に血祭りに上げられ、日本政府の面目はつぶされた。米国が自ら提唱して貿易協定をつくっておいて、今度は「永久離脱」とは恐れ入った。それでも安倍晋三首相はトランプ氏と首脳会談を近々行うらしい。とんだお土産を押し付けられなければよいが。
 これまでのトランプ政権のやり方を見ていると、利益の主張ばかりで他人を納得させる理屈というものがまるでない。少なくともこれまでの米政府は利益の主張であってもそれなりの理由を用意し、理屈話に仕上げる手間暇をかけてきた。自由貿易もこうした理屈の一つであった。これには198090年代の貿易摩擦の際に日本は大いに悩まされた。
 ところが、先のダボス会議で米国の保護主義への批判を展開したのは中国の習近平国家主席であり、TPPなど自由貿易主義の旗頭は日本の安倍首相といったように、今や従来の構図が逆転したようなありさまになった。米政府は、理屈で押しまくるという武器を放棄したのである。
 かくしてトランプ政権に対しては、どの国の政府も自己利益の主張で応戦するしかなくなった。日本政府にとっても「ジャパンーファース」以外に選択肢がない。この看板を守れない政府は、国民の集中砲火を浴びるかもしれない。ましてや、価値観の共有などといった曖昧な言葉を安易に用いることはみっともないだけでなく、世界の嘲笑の的になりかねない。
 こうした中で、特に興味深いのは、日本が属してきた「西側」諸国という概念の行方である。ドイツやフランスの現政権はトランプ政権とは肌が合いそうにないし、随所で衝突が見られる。
 トランプ政権のロシアに対する宥和的態度は、米国と欧州連合(EU)の亀裂を決定的なものにする。反EU勢力(いわゆる極右勢力)はトランプ政権との連帯を表明しており、今年は各国政選挙で現政権との激突を待つばかりである。
 先進7力国(G7)の命運も楽観を許さないのではないか。日本はドイツ、フランス側に立つのか、それともトランプ氏側に立つのか。「西側」という概念には東西冷戦の歴史が染み込んでおり、米国とロシアが接近すれば消滅しても不思議ではない。そうなれば、日本の孤独感がさらに強まることは間違いない。
 安倍政権にとってもトランプ政権は疫病神のように見えるに違いない。日本では米中の激突シナリオの陰で大きなターゲットにならずに済むのではないかといった希望的観測があったが、そのようにはならないだろう。いくらトランプ政権でも、米中対立には慎重にならざるを得ない。それに比べ、日本ははるかにたたきやすい相手である。
 安倍政権はTPPによって国内総生産(GDP)を3兆2千億円押し上げることを期待していた。それが米国の離脱で夢と消えたばかりか、逆に日本が農業分野などで大きな譲歩を迫られそうな日米自由貿易協定(FTA)交渉に引きずり込まれかねない。
 政治家・官僚を含め、かつての貿易摩擦の激しさを知っている世代は引退し、日本自体の余力もなくなってしまった。その上、在日米軍駐留経費の負担増の要求なども予想され、財政はますます窮屈になっていく。
 当然消費税率の引き上げ問題も処理しなければならない。それに、アベノミクスにこうした苦境を突破するだけの爆発力がないことはほぼ明らかになった。政治にいろいろな動きが起こっても不思議ではない事態である。(元東大学長)
 
 
これ『「ジャパン・ファースト」の時代』と題したある地方紙のコラムである。
 
 
 この情報化時代、デジタルで読める時代に、何でわざわざローカル新聞を購読料払ってまで見てるかと言えば、県人のおくやみ欄とこの佐々木毅さんのコラムが見たくてとは少し大げさか。でも正直デジタルに出ないからと言った方が良い。この佐々木さんのコラムは本当に読み甲斐がある。特に政治・経済に興味のある私にはたまらない記事である。だからこそ紹介したくて出してみた。いつも感心して読んでるが、今回のトランプ米国大統領評は私は少し違う気がしてる。佐々木さんは国の中枢を歩んだ方だから、考えがまともに近く、どちらかと言えば行政職に近くおとなしいと思った。私は違う。私は経営者だから全てが損得と言う合理型だ。何故なら国と国の関係での輸出入は、良い物便利なものを優先するいわゆるマーケット原理型だからどちらかと言えばトランプさんに近い。マーケット原理には理屈は無い。いい物便利な物ほしい物はだまってでも売れる。それに照らせば、確かにトランプさんが言うように、日本はズルイと映るだろう。だって国を守るにアメリカの風下でジッと風をしのいでいればよかったからである。だがトランプさんにしてみれば、風下でしのぐんだったら、タダはないだろうその対価を払えと言う事である。私も政治史如何に拘わらず、至極当たり前の理屈と思っている。政治屋である安倍さんそれを理解出来るか私は今後を見離せないと思っている。