新国立競技場建設に思う

 ザハ・ハディド氏。バグダッド生まれの女性の世界的有名な建築家である。又の名をアンビルトの女王とも言う。
 アンビルトとは現代美術用語辞典では次のように説明される。
 「ある時点を基準に、いまだ建てられていない/建てられることのなかった、実現以前の建築のこと。 アンビルトという言葉は、ビルト(built)に対して反語的に用いられる。 実現を前提に構想されたが何らかの事情で建つことのなかったものから、実現を目指さず、既存の建築やそれを取り巻く制度に対する批評あるいは刺激剤として構想される建築、あるいはその定義の曖昧なものまで、「建てられることのなかった」という出発点を共有しつつ、さまざまな可能性を含意する言葉。」とある。
 この女性建築家の設計するデザインは、建築学上不可能に近い建設不能に近い事で有名だそうである。それは何故か。余りにも奇抜過ぎて、実現不可能に近いと言う事なのだそうだ。端的に言えば、屋根はあっても柱がなかったりと言う事らしく、依頼者とトラブルが多く、二度と頼まれる事無いらしい。つまりはリピーターが来ないという事でもあるらしいし、それだけ有名だったらしい。問題はそのような建築家のデザインを採用した専門家の審査員にかなりの責任が存在すると言って良いと思われる。困ったのはその採用された作品の実施設計を担当した設計事務所日建設計・梓設計・日本設計・アラップ設計共同体(JV))である。さすが国策プロジェクトと言って良い。それらを請けた事務所日本でも指折りの事務所であった。彼らは大変だったろうと思われる。どこまでも忠実に基の作品を尊重しなければならないからである。こんなことだったら最初からプロポーザル等しなければと良かったと結果論だが思う。当然に建設費はうなぎ登りとなる。ちょっとした計算でも、全て四捨五入ではなくて、ほぼ切り上げに近いと思われるからだ。つまり910円と出れば1000円となってしまうからである。これが全ての加算計算になるから、高いの当たり前になってしまう。私がわからないのが、審査委員長を務めた安藤忠雄さんが何故このアンビルトの女王の作品を選んだかと言う事である。当然に採用すれば、このような結果になるは推測されたのにである。天下の安藤忠雄さんである、それを知らない筈がないからである。それとも疑えば、彼はデザインだけで、必ずや付属する概算設計見積もり知らなかったのではとも思える。普段から彼は建設費の常識を知らなかったのでは無いのか。恐れ多いことであるが、建築を専攻したとは言え、殆ど半世紀も実務についていない田舎物が言う事では無いかも知れないが、そのように考えれば全てが納得し、説明もつくのである。そしてそのアンビルトの女王ザハ・ハディド氏、最近になり、引き続き今後にも参加したいと主催者側に書簡が送られてきたそうな。ここまで各国にアンビルトの女王といわれても未だその気とは、外国人だから考え方も違うのだろうか、我々技術屋魂とは違いメンツも無いものと思われる。