法人税減税より法人の必要経費を認めた方が良いのでは

消費増税による景気への悪影響を払拭できるか
 来年4月からの消費税率引き上げを決断した安倍晋三首相は、法人税率の引き下げにも、引き続き強い意欲を示している。
 震災復興財源に充てる目的で導入した特別法人税を、予定より1年早い2013年度末で廃止する案に加えて、アジア諸国などに比べて高い法人税の実効税率についても「速やかに検討を開始」する意向を示し、党税調などで議論していくよう求めている。
 問題は、法人税の引き下げが、消費増税による景気への悪影響を払拭できるかどうか。「法人税率を引き下げたからといってその分、企業が支出を増やしたり、従業員の給与を増額する保証はない」というのが、法人税減税反対派の主張だ。野党からも「(消費税で)個人に増税し、(法人税で)企業に減税するのは筋が通らない」と強く批判されている。
 安倍内閣では、年末に向けて減税策について検討するが、給与を増やした企業にのみ減税措置が取られるような仕組みを検討している。だが、元々の給与水準に関係なく、増やしたかどうかだけで判断するのが妥当なのか、給与総額が増えていても幹部社員ばかり手厚くしている企業はどう扱うのか、など運用方法に様々な問題が出てきそうだ。
いずれにせよ、消費増税で確実に負担が増える家計にどうやっておカネを戻していくか。せっかく景気を引っ張りつつある消費を腰折れさせない事が、何より肝要であることは間違いない。
重い腰を上げた財務省
 そんな中で、「有効策」としてくすぶっているのが、大企業の「交際費」の損金算入である。交際費を損金、つまり会社の経費として認め、その分を課税の対象から外すという考え方だ。2月の参議院予算委員会麻生太郎・副総理兼財務相が導入を検討する考えを示していた。
 というのも今年度から、資本金1億円以下の中小企業に対しては、最大800万円まで全額を損金算入できるようにルールが改正された。前年度までは、上限が600万円で、しかも9割までしか損金算入できなかったから、中小企業にとっては大きな改正だった。この改正を推し進めたのが麻生氏だったという。
 8月には厚生労働省までが税制改正要望の中に交際費の損金算入を盛り込んだ。当然、その分、税収が減ることになる財務省は難色を示していたが、ここに来てようやく、重い腰を上げたようだ。
 日本経済新聞は、10月12日付けの朝刊1面で「交際費、大企業も損金に 増税後の消費下支え 財務省検討」という記事を掲載した。その後、他の新聞が後追いしていないところを見ると、財務省が本気になったかどうかは怪しいが、いずれにせよ大臣の意向が強く働いていることは間違いなさそうだ。
 もちろん、交際費を全額損金とするわけではない。中小企業のように一律の上限を設けることなどが検討される見通しだという。デフレから脱却するまでの時限措置とする方向のようだ。
 民間企業の交際費はバブル崩壊後、大きく減少してきた。国税庁の「会社標本調査」によると、1992年に6.2兆円あった交際費は、バブルの崩壊を経て2002年には3.7兆円にまで減少、2005~2006年にかけては増加に転じたが、リーマンショックの直撃もあり、2011年には2.8兆円になった。この10年で約1兆円、バブル期に比べれば3兆円以上も「交際費」は減っているのだ。
 バブル崩壊前まで、日本は「交際費天国」と言われてきた。業者間の過剰な接待や、一種の賄賂として巨額の「交際費」が使われてきた。繰り返される過剰接待問題などで、社会的な批判も強く、1982年には全額損金不算入となっていた。それでもバブル期には収益を上げた企業がこぞって「交際費」を増額したのである。
 バブルが崩壊すると一転して様相が変わる。企業内の「経費節減」が常態化し、コンプライアンス(法令順守)の強化もあり、過剰接待などはどんどん姿を消していった。
 その結果、飲食店などは法人顧客の売り上げが徐々に減少。デフレの進行もあって、客単価はどんどん下がっていった。6兆円と言われる「中元・歳暮」市場も、法人による贈答支出は年々減少傾向をたどっており、最近は個人的なギフト市場に主軸が移りつつあるとされる。
消費への波及効果は小さくない
 では、交際費の損金算入は景気にプラスに働くのだろうか。
 実は2006年の税制改正で、1人あたり5,000円以内の飲食費ならば交際費ではなく会議費として計上できるよう「緩和」された。ビジネスマンが会社で経費を切る際、経理部から「ひとり5,000円以下にしてください」と言われた経験を持つ人は少なくないだろう。理由はこのルールにあった。
 ところが、飲食店経営者に聞くと、今年の4月以降、求められる領収書の切り方が変わったという。それまでの「ひとり5,000円」にこだわらないビジネスマンが増えたのだという。
 また、時計や万年筆、小物の身の回り品といった贈答品に、会社宛ての領収書をもらう人も少なくないという。4月から中小企業の「交際費」が経費として認められるようになった効果が、さっそく出ているのではないかと見られている。会議費は飲食への支出が中心だが、交際費は贈答品なども対象になる。消費への波及効果は小さくないのだ。
 安倍首相は、繰り返し企業に対して「賃上げ」を要望している。アベノミクスの効果で企業収益が好転しても、家計が潤わなければ景気は持続しない。ましてや消費税の影響は消費を直撃する。
 だが、現実には企業はなかなか給与の引き上げには踏み切れない。いったん引き上げた給与は、景気が悪くなったからと言ってすぐに引き下げることは難しい。景気の先行きに確信が持てなければなかなか決断できないのだ。
 しかし、交際費は違う。景気がよいと判断すれば、経費を緩める企業は少なくない。これを政府が「損金算入」で後押しすれば、企業の交際費支出が一気に増える可能性はありそうだ。
 あとは財務省の決断次第だが、消費税率を上げても、消費が落ち込んでしまえば税収は増えない。交際費の損金算入で目先の税収は減るように見えても、それが消費に回れば消費税として戻ってくる。内部留保を溜め込んでいる企業の消費意欲に火を付けるまでの時限措置として導入する意味は大きいのではないだろうか。
 

 これ「消費増税の影響を吸収する切り札「交際費の損金算入」と題した現代ビジネス10.月16日の記事である。
 

 私は以前より企業を信用してはいけない、どんなに政府に要請されても決してベース等上げないと再々再四言って来た。が見方を変え、この記事のように、交際費の損金参入を政府が決断してくれれば、消費動向には追い風となるは必定と思う。それに中小零細企業が採用してる、消費税の簡易課税方式の算定基準となる、見なし原価も実際に即応した原価率に緩和してくれるなら、政府自身の経費を増やす法人税減税や、個人の所得を直撃する消費増税より、それこそリアルタイムに景気浮揚の一役を担う気が私には感じられる。