「アベノミクス」に対してはこう言う見方もあるという事を認識しなければならない

 昨年の再度の政権交代自民党が復活し、安倍首相が「アベノミクス」を引っさげて颯爽と登場し、我日本は浮かれ気味だが、こう言う見方もあるという事を認識しなければならないと思い、次掲げる記事を紹介したい。1年前に今と反対の「円高・株安」を予測したという経済評論家の岩本沙弓氏は、消費税増税が輸出大企業のためのものになりかねないと警告するとした記事である。これあの週刊プレイボーイの「週プレNews」に載ったものである。
 

   4月20日、主要20カ国(G20)財務相中央銀行総裁会議が閉幕した。G20に出席した黒田東彦(はるひこ)日銀総裁は、日銀の量的緩和が円安誘導ではないとの国際的な理解が得られたとしたうえで、「一層自信を持って"金融政策のトピックスを開く" 金融政策を運営していける」との認識を示した。
 しかし、「金融緩和して円安になれば、景気はもっと良くなる」という日銀の政策に対し、日本国内でも疑問を呈する声は根強い。金融コンサルタント大阪経済大学客員教授岩本沙弓氏も、そのひとりだ。
 「円安ならバラ色の経済が待っているかというと、私には疑問です。そもそも企業も鈍感ではないので、何年も前から円高のときは輸入のドル決済を増やして円高のメリットを最大限享受しています。しかも日本は根本的に資源がないので、輸出企業は同時に輸入企業でもある。日本の貿易比率を見れば、輸入と輸出はだいたい同じぐらい。だったら別に円高でも円安でもあまり関係ない。にもかかわらず『円高はダメだ』という」
岩本氏が続ける。
 「複合的な利害がありますが、例えば円高で輸出大企業が被害を被っていることにして、消費税を上げるための材料にしたい。輸出品は日本からほかの国に輸出するときは免税になる。一方、海外から入ってくるときは、われわれは輸入品にだって消費税を払います。例えば、消費税が10%になったら、海外製品がそれだけ高くなる。一方的に海外製品が値上がりすれば、価格競争の部分でメリットになる。なおかつ、日本の輸出大企業は“輸出還付金”(輸出戻し税)を年総額約2.5兆円くらいもらっている」
 『聞きなれない言葉だが、輸出還付金とは何か?』
 「日本から他国へ製品を輸出したら、アメリカの人から日本の消費税を受け取れない。自動車メーカーなら自国内の下請けや孫請けの企業から部品や製品を買うときに消費税を払っている。自分は消費税を払っているのに、消費税をもらうスキームがない。それでは払い損になる。それを補うために政府は“輸出還付金”を出している。それが年総額2.5兆円から今度5兆円になるわけです」
 つまり、消費税増税をすれば輸出企業は、外国企業に払ってもらえない消費税分を政府から補填金としてもらえることになる。それが輸出還付金の仕組みなのだ。しかし、この制度で得をするのは大企業に限られると岩本氏は言う。
 「下請け会社には値段をまけろと言うわけですから、輸出大企業から下請け会社にきちんと消費税が支払われているか疑問です。消費税にしても、政府は法人税所得税を下げるため、税収は増えない。その中で“輸出還付金”ばかりが増えて輸出企業にたまっていく」
安倍政権は「社会保障のために消費税増税が必要だ」と強弁しているが、岩本氏の見立てでは、輸出大企業のために消費税増税をすることになってしまう。
 「少しずつ国民から奪い取るようなスキームが日本にはある。しかし、逃げ出せないと踏んでいるからこそ、搾取(さくしゅ)のスキームが生まれるのです。どの国よりも日本は素晴らしいところです。困窮しないよう、国民がお互いに協力して政府に訴えかけていく必要があると思います」
円高でも円安でも、政府には大企業ではなく国民を第一に考えた施策をお願いしたいものだ。(取材・文/鈴木英介)
 
以上である。