広島県安芸高田市で、「政治の見える化」を掲げる石丸伸二市長(39)と市議会の対立が深刻になっている。石丸市長は3日、市議会定数を半減するための条例案提出を議会側に伝えた。石丸市長の政治手法を巡っては、議会側は市長の目玉人事を否決するなどして反発、両者の確執は1年半以上続いている。中国山地の人口2万7000人都市で何が起きているのか。(山本啓二、落合宏美)
■SNSに投稿
「質問しない。居眠りする。説明責任を果たさない」
5月24日の記者会見で、石丸市長は市議会を批判した。市議の報酬は年約600万円。「そんな議員は要らないという声をたくさん聞く」と続けた。16の定数を8に半減する条例案を今月10日開会の市議会に提案する考えだ。
石丸市長は米国にも駐在した三菱UFJ銀行の元行員。政治経験はなく、2019年参院選を巡る大規模買収事件で前市長が任期途中で辞職したことに伴い、20年8月の市長選に出馬した。
「最もコンプライアンスに厳しい銀行の考え方を市政に投入したい」と訴えて初当選すると、就任直後には、「議会中、居眠りする議員が1名」とSNSに投稿し、話題を集めた。
しかし、議員定数を巡っては、首長と議員を別々の選挙で選ぶ「二元代表制」の原則から、全国的には議会内で決めるのが慣例だ。
宍戸邦夫議長は市議会が20年に定数を2削減した実績を強調しつつ、石丸市長の定数半減案に対し、「定数は議会の根幹。半減すれば、市民の声が反映されなくなる」と猛反発。一部市議には市長不信任案を提出すべきだとの意見もある。
■質問時間を公表
対立はエスカレートしてきた。石丸市長は21年1月、「外部のアイデアを取り入れたい」と、転職サイトで2人目の副市長を全国公募する異例の取り組みを始めた。4115件の応募から東京の一般社団法人の30歳代女性を起用する人事案を内定したが、市議会は財政難などを理由に3度反対にまわり、実現しなかった。
その後、石丸市長は全世帯に配布する市広報紙に、市議の一般質問の時間(最短0分~最長30分)を一覧にして掲載。ある市議は「イメージを悪くする印象操作。市長の仕事ではない」と今も憤っている。
一方、市議会は22年3月、財政再建などを理由に副市長定数を2から1に削減する条例案を議員提案で可決した。肝いり人事が封じられた石丸市長は「議会の暴走が極まった」と対決姿勢を鮮明にし、議員定数を半減すべきだと判断した。
■有権者冷ややか
有権者の見方は冷ややかだ。農業男性(38)は「財政健全化を目指す市長の気持ちは理解できるが、議会と協力して進めるべきだ」と話し、別の男性(72)は「コロナ対策など課題が山積する中、議会側も子供のけんかのような感情的な対立はやめてほしい」と求めた。
元鳥取県知事で総務相を務めた片山善博大正大教授は「首長が議会と全面対立すると、肝心なことは何も進まなくなってしまう。議会側も議案を否決するのなら、それ相応の説明責任が求められる。双方とも市民のためにいい市政にするという地方自治の基本原理を理解すべきだ」とする。
民間出身の首長と議会が対立し、行政が混乱する事態は各地である。
山形県では広告会社出身の吉村美栄子知事が提案した副知事人事案が2021年、県議会で否決され、副知事は約7か月不在となった。山梨県忍野村では21、22年度一般会計当初予算案を可決できず、建設会社出身の天野多喜雄村長がいずれも議会の議決を経ず、専決処分する事態となった。
弁護士出身で、12年から大津市長を2期務めた越直美・前市長は「行政経験がないと、議会との付き合い方や内情が分からず対立を招くことがある一方、市民感覚でおかしいと言える強みもある」と指摘。その上で「二元代表制は、首長と議会の意見が異なることも想定されているが、両者とも市民の信頼を失うような対立は避け、政策で議論を戦わせるべきだ」としている。
これ『メガ銀出身の市長、「居眠り議員は要らない」と半減条例を提案へ…対立エスカレート』と題した読売新聞 2022/06/03 15:15の配信記事である。
首長と議会の対立は行政と監視の関係だから一致する事は稀と理解する事は確かである。特に民間出身の首長に至っては、旧来よりの地元意識が強い「やぁやぁまぁまぁ」の「共に渡ろう赤信号」的手法は理解出来ないかもしれない。でも片山善博さんが言うように、「首長が議会と全面対立すると、肝心なことは何も進まなくなってしまう」との懸念は志を持ってなった民間出身首長にとればそれこそ耐え難い妥協と映ってしまい、何も出来ないと思ってしまうであろう。だからこそ対立となってしまう。根本はやはりよりよい市政にするにはどうするかと言う事に尽きてしまう。ここはやはり私怨(しえん)を捨てて、相手を思いやり自己主張を弱めそれなりに相手に歩み寄る事が必要ではなかろうか。早急にではなく、それこそゆっくりとである。それがいづれ相手に理解してもらう最良の方法と言えるのではと考える。