異常に執念深い安倍元首相 河井案里元参院議員の自殺未遂事件で良く解かる

1月20日夜、睡眠薬を大量服用し、都内の病院に緊急搬送された元参院議員の河井案里氏。2019年の参院選広島選挙区の買収事件を巡り有罪が確定し、現在執行猶予中の身である案里氏ですが、彼女の人生の歯車はどこで狂ってしまったのでしょうか。そして誰が案里氏をここまで追い詰めたのでしょうか。今回のメルマガ『国家権力&メディア一刀両断』では著者で元全国紙社会部記者の新 恭さんが、案里氏が安倍晋三氏の私怨晴らしに利用された経緯を紹介するとともに、事が発覚するや彼女を見捨てた安倍氏の倫理観を問題視しています。

 

河井案里氏の“自殺未遂”が突きつける安倍氏の罪深さ

参院議員、河井案里氏が1月20日、東京都内の自宅マンションで睡眠薬を大量に服用し、病院に搬送された。親族に「さようなら」などと自殺をほのめかす連絡があったという。

 

命に別状がないのは幸いだったが、安倍晋三元首相にとっては、寝覚めの悪いニュースではないだろうか。もちろん、安倍氏に少しでも良心があればの話である。

 

河井案里氏には、過去にも同じようなことがあった。2020年3月28日、睡眠薬とともに酒を飲み、意識を失って救急搬送された。広島地検が河井夫妻の秘書2人を公選法違反の疑いで逮捕・起訴し、夫妻ともに任意聴取を受けた直後のことだ。

 

それについて、案里氏は20年6月5日、ノンフィクションライター、常井健一氏に語っている。週刊文春に掲載されたインタビュー記事から抜粋する。

 

「私、3月に自殺を図ったでしょ(中略)鬱病があるんで、すごく強い睡眠薬を持っているんです。それを多めに口に含んで。ワインや日本酒……家にあるいろんなお酒で飲んだんです。普段は全然飲めないんですけどね。でも、薬の量が足りなかったみたい。7~8錠だったから。(中略)薬が目の前にあったので、もう、意識を失くしてしまいたいって気持ちがあって」

 

当時は、夫の河井克行・元法務大臣と赤坂議員宿舎で一緒に暮らしていた。

 

「主人は家にいたんですけど、別の部屋でバタンと倒れた音で気が付いたみたい。すぐに救急車を呼んでくれて、目が覚めたら病院でした。十何時間も眠っていて、起きたのが真夜中。主人を見て、私、すごく怒ったんです。救急車を呼ぶとは何事か、って。政治家が家に救急車なんか呼んだら、政治生命にかかわるじゃないの、って」

 

実はこの“自殺未遂”の前、河井夫妻の泊まる都内のホテルに検察官十数人が押しかけ、捜索をめぐって夫妻との間でひと悶着あったばかり。逮捕される恐怖が迫るなか、現実から逃れたかったということなのだろう。

 

その後、二人は逮捕、起訴され、案里氏は懲役1年4か月、執行猶予5年の有罪が確定した。克行氏は21年10月に公選法違反で懲役3年、追徴金130万円の実刑が確定し、服役中だ。

 

一人暮らしなのか、仕事をしているのか、案里氏の暮らし向きはわからない。今回は、20錠もの睡眠薬を飲んだらしい。しかし、彼女の言う「すごく強い睡眠薬」が一部の致死性の高いものならともかく、昨今よく使われる睡眠薬だと150錠くらいが致死量とされる。冷めた目で見れば、「さようなら」と“助け”を求めたうえで、実行したようにも思える。

 

とはいえ、深い苦悩の中で、心の病が深刻化したのは確かだろう。そんな人に鞭打つようだが、買収事件を起こしたのは河井夫妻であり、そこにいたるまでの、権力との近さを笠に着るような言動もほめられたものではない。

 

ただし、不埒な個人の責任として片づけるには、あまりに重い問題をこの事件は抱えている。必ずしも好き好んで河井氏があの苛烈な参院選に立候補したのではない、と筆者は思う。当時の安倍首相の意向が強く働いていたと考えなければ、あの選挙戦はとうてい理解できない。

 

全ては、一人の人物に対する安倍元首相の憎悪からはじまったのではないかと、筆者は疑っている。

 

2012年初めから、安倍氏は党内保守グループ「創生日本」会長として、再チャレンジに向けての政治活動を強めていた。そのさなかの出来事だった。

 

自民党溝手顕正参院幹事長は28日の記者会見で、消費税増税関連法案への賛成と引き換えに衆院選を迫る「話し合い解散」に言及した安倍晋三元首相に関し「もう過去の人だ。主導権を取ろうと発言したのだろうが、執行部の中にそういう話はない」と不快感を表明した。(日経新聞

 

広島県選出の参院議員だった溝手氏は2011年10月から自民党参院幹事長をつとめる実力者である。第一次安倍政権時、ぶざまな形で総理の座を投げ出した安倍晋三氏の復活はないとみたのであろう。溝手氏は冷徹に言い放ったが、この発言を知った安倍氏の胸には、「過去の人」という言葉が鋭く突き刺さったに違いない。

溝手氏には安倍批判の前歴があった。2007年夏の参院選小沢民主党に惨敗した安倍首相について、こう語った。「首相本人の責任はある。(続投を)本人が言うのは勝手だが、決まっていない」。

 

友達を異常なほどに厚遇し、味方には驚くほど律儀。その半面、敵対者とみなした者にはしつこく攻撃的にふるまうのが安倍氏の特性だ。安倍氏の頭の中で溝手氏は敵対者に分類されていただろう。

 

2013年夏の参院選に5期目の当選を果たして参院議員会長に就任した溝手氏が、同年8月7日に放った次の発言は致命的だった。

 

安倍総理のように、たいへん勢いのいい総理のもとですと、バカでもチョンでも(選挙に)通るという要素があることは否定できない」

 

(編註:今日の人権意識に照らして不適切と思われる表現がありますが、取り扱っているテーマや文脈から差別意図はないものと判断し原文を尊重しました)

 

党本部で開いた会合で飛び出した。当時、自民党筆頭副幹事長だった安倍最側近の萩生田光一氏が苦虫を噛み潰したような表情を浮かべていたのが印象的だった。

 

この人物が参院自民党で幅を利かしていること自体が、安倍氏には許しがたかったのではないだろうか。溝手氏の改選期である2019年夏の参院選で、当時の安倍首相は河井氏の後見役でもある菅義偉官房長官とはかり、ついに、河井案里氏という刺客を送り込む決断をした。

 

2013年の同選挙区は、溝手氏が521,794票を獲得、2位当選の森本真治氏は194,358票で、圧倒的大差をつけた。そのままだと19年も溝手氏楽勝が予想された。溝手氏の票を2で割っても、26万票とれる。広島に二人立てるべきだ、というのが表向きの理由だった。溝手氏の派閥領袖である岸田文雄政調会長は泣く泣く了承したが、自民党広島県連は反発した。

 

出馬要請を受けた河井夫妻は、意気に感じると同時に、戸惑いをおぼえたであろう。全県下で得票を積み上げなければならない参院選。県連の協力なしに勝つ自信など持てない。

 

逡巡する河井夫妻を説き伏せるために、安倍首相は山口の地元事務所から秘書団を派遣するなど、最大限の支援を約束したに違いない。「絶対に勝たせてみせる」と時の総理に言われたとしたら、その言葉にすがる気持ちになるであろう。

 

官邸から『出なさい』って言われたの。『それじゃあ、出ましょうか』ってお受けしたんです。落ちたら無職ね」

 

参院選への出馬が取り沙汰されていた昨年初め、案里議員は地元の会合で支援者から出馬について問われ、いつものように明るい表情でこう答えたという。(2020年6月19日東京新聞WEB)

 

だが、その甘い判断が河井夫妻の人生を狂わせるもとになった。

 

安倍首相はかねてから岸田氏に冷たい二階幹事長を味方につけ、自民党本部から計1億5,000万円を、河井夫妻それぞれが支部長をつとめる政党支部に分けて振り込んだ。案里氏の出馬に危機感を抱く県連が逆に溝手支持で結束を強めないよう、カネという麻薬を使う必要があったのだろう。

 

もとより、溝手票をうまく二つに割って、二人とも当選などという御託を信じる大甘な政治家などいない。1億5,000万円を手にした河井夫妻は溝手氏に流れる票を取り込むため、県議、市議、町議、市長、町長らにカネをばらまいた。

 

河井夫妻が逮捕されたあとの記者会見で安倍首相(当時)はこう述べた。

 

「本日、我が党所属であった現職国会議員が逮捕されたことについては、大変遺憾であります。かつて法務大臣に任命した者として、その責任を痛感しております…この機に、国民の皆様の厳しいまなざしをしっかりと受け止め、我々国会議員は、改めて自ら襟を正さなければならないと考えております」

 

何を他人事のように。そんな思いは案里氏の胸につきまとって離れなかったに違いない。なぜ、検察の捜査を総理は止めてくれなかったのか、という思いもあっただろう。

 

参院選に出馬したばっかりに、それまで順調だった人生設計が狂ってしまったという後悔。尊敬し頼りにしていた安倍氏に裏切られたという思い。さまざまな気持ちが彼女を苛んだことだろう。

 

溝手氏が受け取った額の10倍にもおよぶ資金を党本部から河井陣営に拠出させ全面支援しておきながら、買収容疑が発覚するや、さっさと知らぬ顔を決め込んでしまう。安倍氏は後ろめたさを感じていないのだろうか。

 

いくばくかでも人間らしい感受性があるとすれば、案里氏の“自殺未遂”のニュースを、自分に対する何らかの思いの表出と深く受けとめたはずである。

 

※新恭(あらたきょう)この著者の記事一覧

記者クラブを通した官とメディアの共同体がこの国の情報空間を歪めている。その実態を抉り出し、新聞記事の細部に宿る官製情報のウソを暴くとともに、官とメディアの構造改革を提言したい。記者クラブを通した官とメディアの共同体がこの国の情報空間を歪めている。

 

 

これ「1億5千万で狂った人生。河井案里氏を自殺未遂に追い込んだ安倍晋三氏に良心はあるか?」と題した新恭(あらたきょう)さんの2022.01.28の『国家権力&メディア一刀両断』の記事である。

 

 

この安倍晋三さんと言う人こう言う記事を読めば読むほど良くその人柄が解かると言うものだ。

読まなければその人柄と言うものが解からないと思い安倍晋三さんにかかわる著書は10数冊あらかた読んでみた。その本と言うのは殆どが「モリカケ」や「桜を観る会」に関した本である。私的には大下英二さんの小説「吉田学校」以来政治小説の類は殆ど読んだと言って良い。それら総合してみても本当に安倍さんほど政治の私的利用した宰相はほかに無い。

私は政治に興味を持って半世紀余り、所得倍増政策の池田隼人元首相から色んな宰相見て来たが、政治家として国民のためと言う使命感に燃えただろう歴代首相の中で、この安倍晋三さんだけがどちらかと言うと友達を異常な程に厚遇した人間は居ない。公僕と言う言わば国民のための奉仕者がよりによって、自らの関係者を優先すると言う公僕にあるまじき言動、これは一番あってはならない恥ずかしい行動であると同時に、人間として一番やってはならない事である。

私が驚くのはこの広島の参議院選挙区でおおっぴらに既定の金額の10倍もの1億5千万円もの選挙資金を渡した事にある。こんな事が許されるのだろうか? しかもその金額の半分を当時の自民党総裁の安倍首相がとりあえず半分ねと言って(取り半疑惑=youtubeでの一月万冊で判明)自分が持って行った事を知ればこの人かなり疚(やま)しい人間である。私は安倍さんの父親である安倍晋太郎さんは好きだった政治家だったが、その息子である安倍晋三さんは大嫌いである。あの滑舌の甲高い声を聞くと耳を塞ぎたくなる。どうも軽くて信用し難く感じる。