今の安倍政治は父安倍晋太郎が言うように情の無い政治である

何の実績もない総理大臣が権力を私物化していることに国民は怒っているのだ
 先日、『週刊ポスト』の取材を受けた。「安倍首相を褒め殺しにしてください」との依頼だった。こちらも「変な人と並べないでくださいよ」と条件をつけた。先方に「変な人とは、どんな人ですか?」と聞かれたので、「保守業界で横行する、DV、横領、ネットワークビジネス、痴漢、強姦などをやったことが無い人」と答えると、「大丈夫です。安心してください」と一笑に付された。

 掲載誌を確認すると、筋金入りのリベラルばかりが並んでいた。確かに、犯罪や反社会的な行動を確認できる人物は一人もいない。保守はリベラルに数でも質でも、そして倫理でも負けているのだと実感した。

 保守を自称する人々が、どれほど無能なのか。7年も政権を独占していて、何一つ達成できていない時点で、一目瞭然だろう。今次安倍内閣の唯一のレガシーと言えば、消費税を2回も増税して税率を2倍にしただけだ。つまり、負の実績しかない。この7年間、100議席を超える野党が1度も存在したことが無い、好環境だったのに。

 その間、安倍御用言論人の仕事は二つ。野党の悪口と安倍批判の封殺のみ。私とて好きで安倍批判をしたいわけではないし、他に代わる適切な人もいないことで、黙っていた。そしたら、このザマだ。

 そうこうする内に、多くのマスコミの調査で、安倍内閣の支持率を不支持率が上回った。毎年春に開かれている「総理主催 桜を見る会」での不明朗な経理が国会で問題とされたのが原因なのは、子供でも分かる(アベノシンジャーズを除く)。

 産経新聞と言えば、返り咲き後の安倍首相を保守の期待の星として持ち上げ、あらゆる手段を用いてアベノセイダーズを論難してきた。その産経新聞すら「桜を見る会」をめぐる諸問題については、「民主党もやっていたではないか」しか言えない。もはや弁護不能なのだ。

 とは言うものの、「野党もそれしか言えないのか」「他に大事なことがあるのではないか」「たかが花見、ド~でもいい」というのが大方の国民の本音だろう。その通りだ。

 今までは経済が悪くなかったこともあり、「野党もどっちもどっちなら安倍」という選択を国民はしてきたのだが、今回は違う。何が違うのか? 何の実績もない総理大臣が権力を私物化していることに国民は怒っているのだ。

 筆者自身の立場の変遷と体験談を書く。

 私は東日本大震災があった平成23年以降、「安倍救国内閣」しか日本を救う道は無いと信じ、微力ながら邁進してきた。

 平成24年年末、安倍首相は政権に返り咲いた。私は政界再編を起こし超党派で有為の人材を結集する「安倍新党」を雑誌その他でも訴えていたので「安倍自民党内閣」には不満だった。それでもデフレの元凶である日本銀行に対して人事介入し、金融緩和を断行して景気を劇的な回復軌道に乗せた。

反社との付き合いは、お笑い芸人さえ厳しい社会的制裁を受けるのに、与党の政治家は許されるのか?
 ところが、平成25年10月1日、半年後の消費増税8%を宣言してしまった。これに私は徹底的に異を唱え、「ここで増税したら、安倍内閣は死に体になり何もできなくなる」と訴えたが蟷螂の斧、届かなかった。それでも平成26年12月の1回目の増税延期までは死ぬ気で応援した。

 その後は緩やかな景気回復を維持したが、さしたる抵抗勢力も存在しないのに何の実績も残せなかった。

 そして安倍自民党内閣は、令和元年7月の参議院選挙で増税を公約に、勝つ気のない野党連合と戦い、10月に10%増税を断行した。

 こうした流れの中で私の立場は、平成25年10月1日までは積極的支持、その後の6年間は消極的支持、今年7月以降は積極的不支持である。

 噂の「桜を見る会」には、25年と26年の春には呼ばれている。非公開の自宅住所に「内閣総理大臣安倍晋三」の差出人の封筒が届いた。

「総理に自宅住所入りの名刺など渡した記憶が無いのに、どこで調べたか、さすが国家権力」などと妙な感心をしたものだ。ところが、27年以降は一度も呼ばれていない。

 つまり、積極的支持が目立っていた期間は呼ばれたが、絶対の支持者ではないと判断されてからは呼ばれなかったことになる。私如き小物を相手に、暇なものだ。

 このような自分自身の体験から、「桜を見る会」は総理の応援団を歓待する――しかも税金で――という会なのだと認識していた。ちなみに、私が呼ばれなくなった後、太鼓持ち芸人の如く安倍応援団を務めた言論人たちは、AKB48ら一流芸能人と同席させてもらっている。これで「税金を使った私物化と言うな」は通らないだろう。

 インターネットに接していると、毎日(のようにではなく、文字通り一日も欠かさず)、安倍首相を広告塔に使った怪しげなネットワークビジネスとしか思えないような宣伝映像が飛び込んでくる。「現職総理大臣が何をやっているのだ?」と言いたくなるが、「桜を見る会」には反社(反社会的勢力)の人間も呼び、あまつさえマルチ商法の広告に使われたと話題になっている。反社との付き合いは、お笑い芸人さえ厳しい社会的制裁を受けるのに、与党の政治家は許されるのか?

 などと、この原稿を書いている最中、首相側近を売りにしている元記者が被告となった準強姦事件の、一審判決速報が飛び込んできた。まだ一審で判決は確定していないので断定はできないが、元記者は刑事裁判では不起訴なので不戦勝だったが、民事裁判では惨敗した。この一審判決だけで言える、恐ろしい現実がわかるだろうか。検察の怠慢と腐敗だ。

 刑事裁判での挙証は、民事裁判での立証よりも条件が厳しい。だから検察は挙証が困難と考えて不起訴にしたのだろうと、推定できる。ところが一審とはいえ、民事では準強姦の事実が認定された。もしかしたら、刑事裁判でも検察が本気で戦えば、勝てたかもしれない。つまり、検察は負けるかもしれないと怯えて不起訴を選び真実を封印し、被害を訴える女性に泣き寝入りを強いようとしたのだ。

 保守業界の住人は、被害を訴える女性がリベラルだからと猛烈に誹謗中傷を加え、どこぞで入手した「カルテ」をネットで拡散する輩もいる。いくら相手が憎くても、やってはいけないことはあるだろう、などという理屈が通じないのだ。

 頭が割れるように痛い……。

―[言論ストロングスタイル]―

【倉山 満】
憲政史研究家 ’73年、香川県生まれ。中央大学文学部史学科を卒業後、同大学院博士前期課程修了。在学中より国士舘大学日本政教研究所非常勤職員を務め、’15年まで日本国憲法を教える。現在、「倉山塾」塾長、ネット放送局「チャンネルくらら」などを主宰し、大日本帝国憲法や日本近現代史、政治外交について積極的に言論活動を行っている。ベストセラーになった『嘘だらけシリーズ』など著書多数。最新著書に『13歳からの「くにまもり」』
日刊SPA!


これ「安倍内閣を支持していた私が積極的不支持に変えたわけ」と題した日刊SPA!12/30(月) 8:33の倉山満さんの配信記事である。


昭和60年の終わりの第2次中曽根内閣 (第2次改造)で外務大臣をした父安倍晋太郎がいみじくも言った言葉がある。「晋三は人間としての情が無いから政治家には向いていない」と言った事である。父親がそう見ていたのが何よりの証拠で、現在の安倍晋三内閣を如実に表している。
この人は現代人と言うか、今までは戦前からの政治家を見ているせいかよく解る。