空菅首相のトップダウン、諫早干拓と法人税率下げ妥当か否か

  15日午前「明日、農相が現地に入るので、今日決めないといけない」と最終判断を促す仙谷氏に、首相は「政治決断で俺に任せてほしい。」と仙谷官房長官に盾ついた形の諫早湾干拓訴訟問題、それに法人税率引き下げもそうだ。最近首相は強気だ。無能と言われ存在感を見せ付けようとする世論を強く意識した行動だろう。幾ばくも無い命の最後のあがきに見える。
 次にその幾ばくも無い命の最後のあがきの諫早湾干拓訴訟での決断発言要旨である。
 
鹿野道彦農相、仙谷由人官房長官から国営諫早湾干拓事業に関する福岡高裁判決を受けた最終判断を求められた。いろいろと話を聞いた上で、私自身もギロチンといわれた1997年の工事以来、何度も現地に足を運んでおり、私なりの知見を総合して最終的に上告しないと判断した。その線に沿った今後の対応を指示した。この問題には多くの皆さんが取り組んできた。開門により海をきれいにしていこうという福岡高裁の判断は重いものがある。』
 
 と言う事だが、首相自身無駄な公共事業の見直しを訴え続けてきた自身にとっては、事業反対派の急先鋒(せんぽう)として、潮受け堤防が閉め切られた1997年以降、首相は繰り返し長崎県を訪れ「(事業費)2500億円を無駄にしてもやり直しを」と主張してきた経過から譲れなかったのだろうが、ちゃんとした目的意識を持って事前の協議も無く即断したのはやはり空菅首相である。
 
 
 次に法人税率引き下げだが私はまず、今の日本は家計と国が赤字で、企業が黒字という構造であると思っている。識者に言わせれば今の高法人税率であれば「外国企業が(日本に)進出してくれない」あるいは「日本の企業が税率の低い外国に逃げてしまう」と言うであろうがその前に、法人税を下げた時、国が税金の減収分を誰に負担させ、企業はそれによって出る利益をどこに還元するのか、何のための法人税引き下げなのか、と言う税本来の目的をもう一度我々国民も見極める必要がある。
 法人税を削減しても、それが社員に還元される事は私は無いと思ってる。それは多くの日本企業の過去の所業から明らかである。好景気で高い利益を上げていても「万が一に備えて」と蓄積にまわし留保し、景気が悪くなると「不景気だから」と所得を押える。今までこの繰り返しではなかったであろうか。営利法人とはそう言うものである。丁度今回だけはきついから、今度その分見るからと言う仕入屋叩きと下請叩きの常套語句にそっくりである。
 
 法人税を納税している企業は全体のほんの3割。そしてそのほとんどが都市に集中した大企業である。国全体として見た場合、地方が疲弊している現状で、税の地方分配の源泉でもある法人税を減税するメリットがどれだけあるのだろうか。納税義務が生じていない中小企業でも、国際競争力を有している会社はたくさんあるし、資本ではなく技術力で勝負する思想と意気込みがなければ、減税したところで遅かれ早かれ勝てる事は無いと思う。

 法人税引き下げは国際競争力を高めるために必要なことであるが、その裏にある所得税や消費税の引き上げを考えると、時期尚早だと私は思う。ようやく景気が回復傾向に入り、国民の心にも少し明るさが蘇っている今、個人税を引き上げると逆戻りしてしまうのではないだろうか。これまで我慢してきたのは企業だけでは無い。「企業の我慢は従業員の我慢である。」とした誰かの言葉が浮かぶ。