■インターネット時代に必要な「コンテンツ力」の欠如
不動産事業が好調でも、テレビ業界の衰退は待ったなしの状況です。今でこそ黒字を維持していますが、このまま視聴率が低迷してスポンサー収入が減少すれば、平均年収1,500万円もの高給取りを抱える同社が赤字に転落するのは時間の問題です。
フジテレビがここまで凋落してしまった要因は何でしょうか。私は、いまだに過去の栄光にとりつかれていることだと考えます。
フジテレビの番組を見ていてつまらないと思うのは、「昔から変わっていない」か「他局と似たような番組をやっている」からです。過去のコピペ(コピー&ペースト)か、他所のコピペです。要するに、新しいものを作る意欲が欠落しているのです。
ライブドア事件の際に、フジテレビは買収されることを拒み、新たな血を入れることをしませんでした。しかし、当時少しでも「テレビとインターネットの融合」を目指していたとすれば、今頃新たな境地を切り開けていたかもしれません。
インターネットの世界では、いいコンテンツを生み出せれば、たとえ最初に注目されなかったとしても、やがて拡散されて時間をかけてでも世界中から多くのアクセスを集めることができます。中長期的にはそれを収益に繋げることもできるでしょう。
フジテレビに欠けているのは、まさに「コンテンツ制作力」です。これを放棄してしまっては、ただ地上波免許を持っているだけではやっていけない世界になりつつあるのです。そういう意味では、インターネットの登場はコンテンツの質の向上に一役買っていると考えます。
インターネットとのコンテンツ競争が激化する中で、より良いものを作るには、常に新しいことを取り入れなければならないでしょう。もちろん、昔ながらのコンテンツを大事にすることも必要ですが、漫然と同じことをやっていたら視聴者も飽きてしまいます。
■日枝氏の残留は「変われないフジ」の象徴
新しいことを取り入れられない姿勢は、人事に象徴的に表れています。
インターネットに押されているとは言え、地上波の力はなお絶大です。視聴率が10%も取れれば、瞬間的に1,000万人にもアクセスできます。インターネットでこれだけ達成しようと思ったら、どれほどの時間とお金と労力が必要か計り知れません。
それだけの強みを持ってしても利益を生み出せないのなら、経営陣はあまりに無能としか言いようがありません。社長こそ代わりましたが、日枝氏はなお相談役にとどまっています。フジテレビが復活するには、まず日枝氏が退くことこそが最低条件ではないでしょうか。
これ『低迷フジテレビは誰のせいで「誰も観たくないチャンネル」になったのか?=栫井駿介 』と題したMONEY VOICE 2017年8月17日の記事である。