消費税の軽減税率導入云々の前に原点に返り、歳入歳出を洗い出せばもっと歳出が減り、消費増税しないで済むのである

■なぜ軽減税率の自公合意はできなかったのか
事の経緯はこうである。もともと、消費税の軽減税率導入に対して、自民党は消極的、公明党は積極的だった。
そんな中、消費税率を10%に引き上げる時期を20174月に先送りした上で臨んだ昨年末の衆議院総選挙で、与党は足並みをそろえて「軽減税率制度を税率10%時に導入する」と公約に掲げた。今年に入り、自民党公明党は共同して消費税軽減税率制度検討委員会を設け、軽減税率制度を検討したが、両党が合意できる案がまとまらず、610日に協議を中断することを決めた。
両党が合意できなかった理由は、欧州諸国で導入されている軽減税率と似た仕組みにすると、問題が続出したからである。
まず、軽減税率を適用する対象品目の選定には、政治的にも実務的にも困難に直面すること、対象品目を幅広く設けると失われる税収が多く財政収支が改善しないが、対象品目を狭くすると消費者が税負担軽減を実感しにくいというジレンマに陥ることなどがあげられた。
さらに、徴税を適正に行うにはインボイスが欠かせず、流通の全過程でインボイスを適正に受け渡しできるようにするには事業者の事務負担が増えること、そもそも低所得者対策として導入するのに高所得者まで恩恵が及んでしまい政策目的になじまないこと、といった問題である。
だが、それでも公明党はあきらめきれなかった。
 
 
軽減税率の与党協議を中断するにあたり、与党は財務省に宿題を出した。これらの問題を克服できるような案を出すよう財務省に求めた。特に重要視されたのは、消費税負担の軽減を日々実感してもらえるような仕組みとすることだったという。
 
■なぜ給付措置による低所得者対策は消えたのか
実は、ここに、今回の財務省案の含意がある。もともと、財務省も軽減税率には消極的だった。だからといって、政権与党の求めに逆らってサボタージュを決め込むことはできない。与党が「消費者が痛税感の緩和を実感できる」ような仕組みを求めている以上、宿題返しとしてどんな仕組みが考えられるか。
 
この与党の宿題設定の時点で、簡素な給付措置による低所得者対策という政策手段は、選択肢から外されてしまったといってよい。なぜなら、給付によって事実上の負担軽減を行うとすれば、消費者が痛税感の緩和を実感できないからである。
経済学者(筆者も含む)からは、カナダのように、給付を消費者に配ることで消費税の負担軽減を行う案がすでに出されていた。「給付付き税額控除」の一種で、所得水準に応じた消費者の消費実態を調査した統計などに基づき、税率引き上げによって負担増となる金額を概算し、その金額を低所得の消費者にだけ限定して給付する。
しかし、これでは、給付の額は、(統計の上では近似しているとはいえ)実際の消費活動とは関係なく決められて配られる。10%引上げ時に、消費者は店頭でいったん10%の消費税を払わなければならない。
こうして、給付による低所得者対策は選択肢から消えた。とはいえ、欧州諸国のような軽減税率は、前掲のように問題が多すぎる。となると、どのような形で消費者への負担軽減ができるか。
実は、現行の消費税でも、「消費者」の負担を減免する仕組みがある。外国人旅行者に対する消費税の免税がその一例である。
これは、日本の消費税を含む付加価値税制度において、外国で消費されるものには課税しないという世界共通のルールに基づく。外国人旅行者(厳密に言えば非居住者)は、日本で買った品物を外国で消費する「消費者」だから、消費税は免税となる。目下、訪日外国人旅行者が増えており、その対応として、Japan Tax-free Shop(消費税免税店)の許可が得られれば、外国人旅行者が品物を買う際にパスポートを見せれば、消費税の免税が簡単にできるようにした。
日本人も、欧州諸国を訪れて、一定金額以上の買い物をした際に、店舗でパスポートを見せて書類を作ってもらい、空港等で免税(還付)手続きをすることがある。これも先と同様の仕組みで、店舗ではいったん所定の税率で課税された上で、手続きをすることで欧州諸国の付加価値税を還付してもらえる。そして、われわれは、消費者として欧州諸国の付加価値税の負担減免を実感する。
 
■還付型の原型は「パスポート提示型」の免税手続き
これと同様のことを、日本国内で日本の消費者(居住者)に対して、店舗にて消費税を軽減する手続きを行うと考えればどうだろう。つまり、パスポートの代わりに、個人を認証するマイナンバーカードを店舗で示し、いったん税率10%で課税されるが、後に対象品目で払った消費税のうちの2%が還付される。これが、「還付型」ともいうべきこの財務省の案の骨格である。
もちろん、これは手間がかかる。そもそも、与党の宿題設定として、痛税感の緩和を消費税制の中で行おうとするのだから、手間をかけずにできるわけがない。
確かに、「還付型」は、軽減税率にまつわる前掲の問題はかなり解消できる。すべての品物はいったん10%で課税されるため、インボイスは導入しなくてよい。財務省の案では消費税の還付に限度額を設けるとしており、対象品目を多くすると税収が減るという問題は解消できる。還付限度額を設けることで、高所得者まで恩恵が及ぶ問題を解消できる。軽減税率の対象品目の選定にまつわる問題以外は、解消可能だろう。
ただ、「還付型」については、現時点で十分な情報がないため、あらぬ誤解も広まっている。「還付型」は、「消費者が痛税感の緩和を実感できる」仕組みではないとの批判があるが、前述の欧州諸国の還付手続きをみれば、若干タイムラグはあるが負担軽減を実感できる。
 
マイナンバーカードは本当に問題だらけなのか
「還付型」にまつわる批判の最たるものは、マイナンバーカードに関するものである。確かに、セキュリティー問題にまつわる批判は一理あり、これは消費税の軽減にマイナンバーカードを使うか否かを問わず、解決しなければならない。
他にも、飲食料品を購入するたびにマイナンバーカードを持っていくのは面倒とか、マイナンバーカードを通じて自分がいつ何を買ったかがすべて国に把握されてしまうとか、個人の購入情報がマイナンバーカードに記録されるからその情報を盗まれては大変とか、といった批判や懸念がある。
マイナンバーカードをまだ手にしていないのだから、こうした懸念は無理もない。ただ、これらは、ほぼあらぬ誤解の部類といえそうだ。
そもそも、マイナンバーカードのICチップには、税や年金の情報などプライバシー性の高い情報は記録されない設計である。そして、個人の購入記録も保存されない。
ものを買う時にクレジットカードやポイントカードを持っていくのをとてつもなく面倒とは、普通思わない。消費税の負担軽減手続きには、誰がいつ何を買ったかは、(欧州諸国での還付手続きを想起すればわかるように)店舗で軽減対象か否かの判定をすればよいだけで、税務当局は誰が対象品目を総額で「いくら」買ったかだけ知ればよい。
対象品目の購入個数や単価、そして対象外品目の情報は、税務当局にとって不要である。システム上それを税務当局に伝達しない仕組みにすればよいだけの話である。今のところ、店舗から税務当局への情報送信には暗号化されると報じられている。
さらに、今の案では、マイナンバーカードを店舗でカードリーダーにかざす際、本人のマイナンバー(個人番号)、氏名、住所、生年月日、性別の情報は読み取ることができず、利用者証明用電子証明書と呼ばれる「符号」(IDのようなもの)のみ読み取って税務当局でのみ個人を特定できるようにして、軽減手続きに用いると報じられている。この「符号」は本人ですら知らない文字列である。
情報には価値がある。だから、情報を不正に盗もうとする輩もいる。しかし、あらゆる品物についてどこに住み何歳の人がいつ何を買ったかではなく、符号でしか把握されないある人物が対象品目だけトータルでいくら買ったかという情報でしかないので、かなり価値が落ちて盗む動機も減る。しかも、店舗やカードにはその情報が保存されない。
むしろ、クレジットカードやポイントカードを使えば、今でも、誰がいつ何を買ったかについてつぶさに把握されており、それが「ビッグデータ」として注目されている。だから、購入情報にまつわる問題は、マイナンバーカードではなく、むしろクレジットカードやポイントカードにおける問題である。
 
■「給付措置型」と比べ国民にメリットがあるのか
このように、「還付型」は、どうやら国が国民の情報を一網打尽に集めなければ執行できないというわけではなく、単に誰にどれだけ消費税負担を軽減するかだけがわかれば十分、という制度設計のようである。
とはいえ、「還付型」は問題なしとは言えない。小売り段階で消費税負担を軽減するときにだけ、マイナンバーカードの情報を読み取る装置があれば実行できて、対象品目を売らない店舗にはその装置はいらない。だが、零細な小売業者にカードリーダーを支障なく運用できるかという懸念はある。ネット通販で購入する場合、どう個人認証をするかも、まだ決まっていない。子どもがお遣いで買い物をする場合、誰のマイナンバーカードを使うのかとか、検討課題はまだある。
軽減税率よりも「還付型」の方が、制度的には優れている。しかし、制度導入の初期費用と負担軽減のための多少の手間をかけてでも、こうした消費税の負担軽減を行うのか。代替策として提起されている簡素な給付措置(こちらもマイナンバーが必要)と比較してもなお、国民にメリットがより多いと言えるのか。感情論や政府に対する不信感を超えて、制度やシステムの設計の観点から、冷静な議論と意思決定が必要だ。
 
 
これ『「日本型軽減税率制度」は、本当に使えるのか、財務省が示した「還付型」の問題点とは?』と題した東洋経済ONLINE915日(火)の記事である。
 
 
やはり頭の固い役人の考えそうな事である。と言うよりか物事の原価の本質が解っていないと私は感じた。そもそも何で還付?低所得者用と考えたならば浅はかである。だったら消費税増税しなければ良いのである。そう言えば歳出歳入のバランスが取れないからだと言うだろうが、そもそもこの消費税最初に導入した時から、どれだけ消費者に煩雑なエネルギーと出費を負わせたか解っているのだろうか。例えそれが将来の少子高齢社会に即した前もっての政策だとしてもである。それらを考える役人の気持ちも解らない訳も無いではないが、国としての政策上の損得原価論にすれば、歳入を上げるだけが能では無い!何故現状がベスト論から脱皮して、経費の見直し論に言及しないのか。要するに現状のムダを解決すれば、いや解決ではなく原価引き下げをした方がどれだけ楽に計算出来るのか考えた事無いのだろうか。それは役人として自分らの懐を狭める事だからやらないのだろうが、本質を考えればそんな事言ってられないのではないのか。彼らの現状予算をたった1年間だけでも良い1割下げてみたらどれだけ消費税換算に匹敵するか、すぐに解るはずなのだが、少しは国の公僕の意識さえ、持てれば少なくとも短期間で解決出来る事解らないのか。それでも解らなければ言ってやろう。仕事の出来ない奴、遅刻や残業常習犯の役人を1割切れば済む事なのである。それだけ簡単なのである。何も消費増税まで言及する必要等ないのである。