血縁なくても「父子」認定 最高裁の裁定は概ね妥当?

 DNA鑑定で血縁関係が否定された場合に法律上の父子関係を取り消せるかが争われた訴訟の上告審で、最高裁第1小法廷(白木勇裁判長)は17日、父子関係を取り消すことはできないとする判決を言い渡した。妻が結婚中に妊娠した子は夫の子とする民法の「嫡出推定」規定は、DNA鑑定の結果より優先されるとの初判断を示した。
 民間のDNA鑑定の普及で血縁関係の確認は容易になっているが、いったん定まった親子関係を後の鑑定で取り消せるようになると子への不利益が大きいと判断した。
 ただ、5人の裁判官のうち2人は、家族の実情によっては嫡出推定の例外を認めるべきだとする反対意見を述べた。日本社会では血縁関係を重視する考え方も根強く、今後も議論を呼びそうだ。
 この日判決が言い渡された訴訟3件のうち2件は北海道と近畿の事案。妻側が「子の父親は99.99%、夫ではない」とのDNA鑑定結果を基に親子関係がないことの確認を求めていた。一、二審判決は鑑定結果を重視して妻側の訴えを認めた。
 もう1件は四国の事案で、DNA鑑定で血縁関係がないと証明されたとして父親側が親子関係の取り消しを求め、一、二審とも嫡出推定に基づいて訴えを退けていた。
 最高裁判決はいずれも親子関係の取り消しを認めず、訴えを起こした原告側の敗訴が確定した。法律上の親子間では相互の扶養義務や相続の権利などが認められる。
 同小法廷は判決理由で、嫡出推定について「子の身分の法的安定性を保持するのに合理的」と指摘。「科学的証拠で生物学上の父子関係がないことが明らかになっても、法的安定性の保持は必要」と判断し、「法律上の父子関係と生物学上の父子関係が一致しないこともあるが、民法は容認している」と結論づけた。
 山浦善樹裁判官(弁護士出身)は補足意見として「DNA鑑定で突然それまでの父子関係が存在しないことになるなら、子が生まれたらすぐに鑑定しないと生涯不安定な状態が続くことになりかねない」と指摘。「新たな規範を作るなら、十分議論をして立法をするほかない」と述べた。
 一方、裁判長を務めた白木裁判官と金築誠志裁判官(いずれも裁判官出身)は反対意見を述べ、「生物学上の父との間で新たに法的な親子関係を確保できる状況にあるなら、戸籍上の父との関係を取り消すことを認めるべきだ」とした。
 ▼民法の嫡出推定 「妻が結婚中に妊娠した子は夫の子と推定する」とした民法772条1項の規定。同条2項は「結婚成立から200日経過後か結婚解消から300日以内に生まれた子は結婚中に妊娠したと推定する」とも規定している。
 嫡出推定を覆す訴えを起こせるのは原則夫だけで子の出生を知ってから1年以内。ただ、最高裁判例は「事実上の離婚や遠隔地の居住などで夫の子を妊娠する可能性がないことが外観上明白な場合」は嫡出推定の例外とし、妻や子も親子でないことの確認を求めて提訴できるとしている。

これ「血縁なくても「父子」認定 最高裁 DNAで嫡出推定覆らず」と題した日経新聞7月17日23:16の報道記事である。

 この裁定は非常に常識的である。確かに感情的に見れば、割り切れるものでは無いが、現代のDNA鑑定等の科学的根拠からすれば相反する事ではある。しかし神代の時代よりの系譜を尊重する我日本国においては概ね理解出来る。ただ恐れるのは、科学的根拠に基づくその人間性は否定される時がある事である。試験管ベビーによる子宮借りによる子供どうしの婚姻である。確率的には少ないだろうが皆無では無い。その問題を解決せずに、この問題は永久に語れないのでは無いだろうか。しかし、だからと言って、早急にこれらを認めれば、これらが悪用される場合多々出て来る。その壁をどうするかによるのかも知れない。