トヨタ自動車の好況にに水を差すつもり無いが、「カンバン方式」の危惧を感じる

 トヨタ自動車が8日に東京本社で開いた2014年3月期決算の記者会見。豊田章男社長をはじめとした壇上の経営陣の表情は、08年3月期以来6年ぶりとなる最高益更新の晴れ舞台を喜ぶ雰囲気がみじんも感じられない険しいものだった。金融危機後の赤字転落、米国での大量リコール、東日本大震災後のサプライチェーン(供給網)の混乱を経て、円安の追い風が吹き復活したトヨタ。だが、自動車メーカーとして初めて販売台数が1000万台を突破したことで、これまで直面したことのない課題がフロントランナーに突きつけられている。1000万台超時代に対応できる構造改革を着実になし遂げ、真の持続的成長に向けて「ギアチェンジ」ができるか。トヨタの経営陣の視線はそこを見据えている。
 前期連結純利益(米国会計基準)は08年3月期は08年3月期の1兆7178億円を6年ぶりに上回る1兆8231億円だった。最悪の赤字に転落した09年3月期決算後、豊田章男社長就任から前期までのトヨタを形容すれば、それは「原点回帰」という言葉がふさわしいかもしれない。お家芸のコスト削減を愚直に徹底し損益分岐点比率を引き下げ、リーマン・ショック直前までの水ぶくれしたコスト体質をもう一度絞り直した。削減したコストは1兆6000億円規模に達した。さらに投資額を抑えた生産ライン作りにも取り組み、投資額を抑えながら効率的な生産体制への転換も進めた。
 そこに吹いた円高修正の追い風。1ドル=70円台でも利益が出る体質での100円台の為替は、輸出採算を劇的に改善させた。それでも為替水準はリーマン前よりもドルで14円の円高。リーマン超えの最高益をたたき出すことができたのは、体質改善の効果が大きい。
 もちろん、諸条件の好転に加えて、売れる車種作りの取り組みが進んでいることも無視できない。前期は北米でSUV「RAV4」などの販売が伸び、日本でも「カローラハイブリッド」や「ハリアー」が堅調に推移した。「もっといいクルマをつくろうよ」――。豊田社長の掛け声は社内に浸透し、「リーマン前までは作れば売れるという状況で1つの車を作り込む時間が足りなかった側面があった。近年はこうした傾向が見直され、やればできるじゃないかという車が出始めている」(幹部)。ゴールドマン・サックス証券の湯沢康太マネージング・ディレクターは「全体の投資額はリーマン前から抑えられているが、商品開発投資は水準を維持しており、近年ではむしろ商品力は向上している」と指摘する。
 ただ前期末まで採ってきた戦略は、危機対応でもあり、正常化への道筋としては成功したが、今後利益を出し続ける体制としては「サステナブル(持続可能)でない」というのがトヨタの見立てだ。前期の最高益更新は「追い風参考記録」との声が出るのもそのためだ。
 今期以降は危機対応から一歩進み、真の競争力を付けるステージへ向かっていくことになりそうだ。この6年間でトヨタの内部も変わり、競争環境も激変した。豊田章男社長は「1000万台時代でも600万台の時と同じ仕事の仕方をしている」と話す。欧州や米国で環境規制が一段と厳しくなるほか、自動運転など安全面での技術革新も急速に進む。また、中国を中心とした新興国でも、他の自動車会社との競争も一段と激しさを増す。今期は研究開発投資が膨らみ、一時的に収益の重荷になるが、それでも最終的なゴールに向けて世界で勝てる車とトヨタの社内体制作りを最優先する姿勢を明確にする。
 前期のグループ販売台数は1013万台、14年度は1025万台の計画だが、13年度から3年間、工場新設を原則凍結しており、グループ会社を含めた既存工場の能力増強などで対応している。工場の稼働率は高まっているものの、生産余力のある拠点に振り分けていく中で、全体最適が損なわれる懸念も浮上している。より効率的な生産体制に再編していくための投資なども増えていきそうだ。
 また、トヨタが進める部品共通化によるコスト・生産改革「トヨタ・ニュー・グローバル・アーキテクチャー(TNGA)」の取り組みが本格化する。複数の車両で部分的な構造を共通化するのは「モジュール化」と呼ばれ、自動車メーカーではフォルクスワーゲン(VW)や日産自動車などが先行導入して主流となっている。ただトヨタのTNGAは単なるコスト競争力強化だけではない。世界中の規制や嗜好に対応しながら、商品力を高め、1000万台もの車を作り、市場に投入するという現実的な課題を解くカギでもある。
 研究開発投資も増やす。トヨタの前期までの最高益の原動力の1つの側面は、投資の抑制であったことは否定できない。燃料電池NX車や環境規制対応のエンジン開発、車体軽量化など、技術開発のスピードはもう緩めることができない。こうした分野でアクセルを踏み込むことが数年後の競争力格差となって次世代の優勝劣敗を決めることになる。今期の研究開発費は9600億円と過去最高に増やす。
 今期は課題を一つ一つこなしながら、持続的成長の足がかりを築く年との位置付けを明確にした。豊田社長いわく、「意志を持った踊り場」だ。ただ、そのゴールは必ずしもトヨタにも見えているわけではない。「TNGAは壮大な実験、解は見いだせていない。もし失敗すれば利益は大きく落ち込む」とトヨタ幹部は取り組みの困難さを話す。
 「障子を開けてみよ。外は広いぞ」――。トヨタの源流、豊田自動織機創業者の豊田佐吉は既存の状況に安住せずに打って出る大切さを伝えた。最高益の先にあるまだ見ぬ頂へ、トヨタの新たな挑戦が始まった。(二瓶悟)

これ「最高益のさらに先へ トヨタが挑むギアチェンジ公開日時」と題した日経新聞5月9日6:00の報道記事である。

 この記事にあるように、これだけの利益を出しながら浮かれた表情が無いと言うのも頷ける。但し、それを解かっててそうしてるのかどうかは私には解からないが、ブラックホールに突き進んでいるような感覚を感じ取っているのではと私は考える。少なくとも日本の企業で今までにこのようなグローバルな企業あったろうか。売り上げで無いし、営業利益でも無い、それこそ連結純利益が2兆円に迫ろうと言うのである。とてつもない怪物企業である。裏を返せばもし、一瞬の経営の判断を誤れば、この怪物企業も一瞬にして落胆の憂き目に会ってしまうからである。それを感じ取ったからこその巻頭の表情だったのではあるまいか。良ければ良いでの気苦労である。しかし、私は現実に将来のこのトヨタを憂う。それは今日にして賞賛されている、トヨタが編み出した、「カンバン方式」そのものである。つまり在庫を持たないやり方である。事実ライバル日産を引き離した源泉そこにあったからである。確かに損益分岐点は下がるが、リスクは増幅するのである。それを後述したい。
 私事で悪いが、ここでチョッと時間を頂けば、私は昔よりトヨタの車嫌いで、物心付いてよりズーッと日産党であり、それは今も変わらない。生を受けてより、1度もトヨタ車のオーナーになった事は無い。それはパブリック車から高級車まで、カンバン方式の部品やその他の共有だからである。私は車を買えば約1昔は車の買い替えをしないで、ジックリと愛着を持って乗る性分である。だから必然と最高グレードの車にする。そうなるとステイタスでは無いが、クラウンマジェスタ等のダッシュボード周りのスイッチ類等小型車から上級車まで同じもの使ってるトヨタ車が非常に私は嫌いだった。そんな訳で私はシーマの方が好きだった。そんな私の様なマニアがいてもトヨタ車売れに売れたのである。そこが私の理解出来無い事だったが、数出てる強みだったと理解してる。私がトヨタを危惧してるのはそんな事では無く、そのトヨタの「カンバン方式」の部品の共有化の弊害である。数出てるトヨタ車、もし、その1つの部品の不良品が出れば、当然に無償修理(リコール)の数半端じゃ無くなるのである。それの頻度がある一定の数超えた時にトヨタトヨタでなくなるのである。それを考えるからこそ私はトヨタ車を買わないのである。それを知ってか知らずのトヨタブラックホールと言えるのである。