大学病院による臨床研究をめぐるデータ不正操作に思う

 京都府医大に続き東京慈恵医大でも明らかになった降圧剤「ディオバン」の臨床研究をめぐるデータ不正操作。しかし、両大学や、ノバルティスファーマの第三者機関による調査からは、研究者と企業との間で何が起き、なぜ問題が拡大したのかといった真相は依然見えてこない。
 「すでに海外の科学誌では『日本人の論文だから注意して読まないといけない』といわれている」。日本学術会議大西隆会長は相次ぐ論文不正が与える影響をこう指摘する。
 ◆ノ社の肩書隠す
 研究者の中で特に深刻に受け止められているのが、企業の利益追求のため研究結果がゆがめられた疑惑がある、という点だ。臨床研究を行った5大学にはノ社から使途を指定しない奨学寄付金が渡され、データ解析や論文執筆など幅広い分野で臨床研究に加わったノ社の元社員は論文でノ社の肩書を隠していた。
  外部から金銭提供などを受けることで研究の中立性に疑義が生じることを「利益相反(そうはん)」といい、この状態がデータの不正操作とともに疑惑を増幅させている。
  しかし、産学連携が進む現状では、重要な研究になればなるほど、企業との結びつきは強くなり、利益相反は生じやすくなる。
  日本医学会は平成23年、論文や学会発表の際に研究費の提供先を明示するとした利益相反ガイドラインを作成。日本製薬工業協会は会員企業に、来年度から研究者らに支払った金銭を公開するよう求めている。
  ◆大学側に8400万円
  慈恵医大は30日、ノ社から臨床研究を行った循環器内科に対し、17~19年に計8400万円の寄付金が渡っていたと公表。ノ社も29日、24年に大学などへ研究費や寄付金、謝礼、接待費など計約236億円を支払ったと明らかにした。
  北里大学臨床研究機構の伊藤勝彦部長(54)は「予算がなければ重要な研究はできないし、研究費を出す製薬会社はいい研究結果を出してほしいと思うのも当然。だが、だからといって不正が行われるわけではない。研究者や企業は、利益相反が生じているなら隠すことなく表にした上で研究成果を発表していくべきだ」と指摘している。
 

これ「降圧剤データ 中立性確保へ金銭提供明確化」と題した産経新聞 7月31日(水)7時55分配信の記事である。
 

 医者に殆ど掛からなかった私が6年前の脳出血以来、いろんな病院の入退院を繰り返した結果、患者として医療現場の身近に居たお陰で、それなりに医療が見えてきたのでこの記事と直接は関係しないが、私なりに解かってきた事がある。
 山崎豊子の「白い巨塔」にもあるように、皆さん病院に行けばお目にかかれる現象ご存知だと思う。その良く見かける光景とは、大抵11時50分頃より、診察患者が終わりかけた頃、黒っぽいスーツに身を包んだ集団と言って良いが、待合室にたむろする光景がそれである。これら集団を医学用語で昔プロパーと言った。簡単に和訳すれば「医療情報担当者(製薬会社から医療機関に出向いて、医薬情報の提供や宣伝を行う担当者)」の者をそう呼んだみたいである。当時そのプロパーが医師に対して過剰な営業活動(接待など)を行った事からイメージが悪くなり、今はMR(medical representative:医薬情報に関する会社の代表の意味)と呼ぶと言う。そのプロパーが自社の利益追求のため何でもしたようだ。もちろん自社の開発した新薬を使ってもらうために、大学病院では教授の論文を書いてやったり、この記事のように臨床データを作成し、それが思わしくない場合は、捏造もいとわなかった事は事実である。
 私はここ何年もの入院で知った事は、医療界は余りにも汚い世界だという事である。一般の患者さんはお医者様を神様のように思っているから、何一つ疑念を持っても主治医に対しては黙認である。見てもらえないと困るからである。その点私等、病院側から嫌われ者になっている。全て納得しなければ、決して主治医の言う事を聞かないからである。何故なら脳卒中患者だからである。いろんな病気があるが、特に私みたいな脳卒中患者や、認知症患者、それに精神病患者は医者側から見れば、何も言わない、解からない、一番やり易い患者である。逆説すれば、一番臨床実験データを取りやすい患者なのである。私も以前紹介した事があるが、薬を変えても、少しくらい黙ってやっても本人が解からないからである。簡単に言えばモルモット扱いしてもわからないからである。実際そうして新薬が作られて行くのである。だからこそ脳卒中や、認知症、それに精神病の分野はお陰で直りが早い(ちょっと言い過ぎか)、つまり薬が良いためと言えば御幣があろうか。
 話を記事に戻そう、長々と書いたが要約すれば、一般の方々が知らないだけで、このような事は、日常茶飯事だという事だ。むしろ記事になる位、メジャーでもある訳だ。
 そうやって長年やってれば、感覚が麻痺して、慢性化してしまってるのが現実なのである。医者は神様でも無く、あくまでも人間だという事を理解しなくてはいけない事なのである。
 医療費が高騰している。それは突き詰めれば、医学会と製薬会社と、またそれの関係企業に天下ろうとする行政の役人とのトライアングルが見直さない限り、日本の医療費は青天井と成るは必定である。この事に踏み込める政党、政治家が出ない限り、我々の子孫は浮かばれないだろう。それを子孫に引継ぎしてはならないのである。