尖閣その正体を調べて(その2)

(昨日より続く)
 
ーーわが国の領土・主権が、中国政府の事実上の「承認」の下で侵犯されたのです。
―― この事件を、日本政府がこれまでの「弱腰」から一転して「毅然として領有権を示した」とか、(中国)国内の「反日世論」と、日本との友好関係維持との板挟みになっている中国政府に対する外交的配慮を示したとか、
ーー日本政府の弁明や、マスコミの解説がなんとも虚しいものに聞こえます。
無人島の保護・利用・管理規定」という、この重要な中国政府の決定を、
・我が国政府もマスコミも知らないのか?
・それとも、知っていても知らない振りをしているのか?
尖閣諸島東シナ海で、中国が日本を無視した大胆な行動をとることができるのは、自国の主権や領土が侵犯されても「友好」を第一とする日本側の消極的な対応を見透かしているからです。
ーーこの点を、日本政府は十分に認識しなければなりません。
これまで日本政府が取ってきたその場しのぎ、外圧対応型の対症療法を今後も続けるならば、遠くない将来、極めて危険な立場に追い込まれることになる惧れ(おそれ)が大です。
ーーそのような事態はなんとしても回避しなければなりません。
尖閣諸島の、普通のテーブル大の大きさの島嶼岩礁を円心にして円を描いてみると、1550平方キロの海域が領海面積になり、また200カイリの円を描くと、その周囲43万平方キロの海域が排他的経済水域となります。
その海域の海洋生物資源の漁労、及びその海底の大陸棚に埋蔵されている石油・天然ガスなどの鉱物資源の採掘、利用などにたいする主権的権利を維持することができます。それ故にこの島嶼は、軍事的には「不沈母艦」、経済的には内陸に通じる「島の橋」であるとしてとらえることが出来ます。
我が国で尖閣諸島問題に関心を持つ人の多くは、中国が軍事力で盗りに来るとみているようですが、そんな子供にも分かるような手段は使わず、今回のように民間組織を装ったり、さらに次々と手を変え品を変えて押し寄せてくることになるでしょう。
中国が軍事力で尖閣諸島を盗りに来るならば、自衛隊が出動するとになり占領されることはまずないでしょう。中国がそんな単純な方法を採るとは考えられません。中国がこれまで行ってきたことは、領有権問題は後回しにして、海洋調査活動・石油開発などを含め、東シナ海にプレゼンスすることであり、そうなれば、尖閣諸島は自ずから中国の支配下に入ってしまいます。
ーー中国の狙いはそこにあるのではないでしょうか。
中国は、東シナ海の大陸棚の石油資源調査を70年代から進めており、80年代に入ると「日中中間線」の日本側のスグ向こう側の海域で石油開発のための試掘に着手し、同年代後半には、幾つかの地点で正式の石油試掘を実施、その一つである平湖油田では、石油採掘のプラットフォームを建設し、上海に輸送する海底パイプラインを敷設する計画が立てられるところまで進んでいます。
ーー次は日本側海域での資源探査が始まるものと推定されます。
そして現実に、90年代半ばになると、中国の海洋調査船が日本側海域に入って資源探査と推定される調査活動を始めました。
日本政府の、調査活動停止の要請を無視して海洋調査は進んでいます。
また、平湖油田よりさらに「日中中間線」に近い、春暁油田の採掘施設の建設も進行中で、おそらく、間もなく採掘のプラットフォームが完成します。ここの石油・天然ガスは、杭州湾に臨む寧波に海底パイプラインで送られます。
ーー寧波には、中国東海艦隊の司令部があります。
日本政府は、日本の南西諸島は中国と同じ東シナ海の大陸棚にあるから、向かい合っている国の間に存在する東シナ海の大陸棚は「日中中間線」で二等分するとの立場なのに対し、中国は、東シナ海の大陸棚は、日本の南西諸島に沿って存在する「沖縄トラフト」まで続いているとの立場に拠る「大陸棚延長論」を主張し、日本には東シナ海大陸棚に対する権利はないとしています。
もし、日本が東シナ海に「日中中間線」を引かないと、中国はそれを認めていないのですから、中国は日本の立場を無視して、日本側海域で海洋調査活動を始めるようになる恐れがあります。従って、日本政府が早急に「日中中間線」を引かなければ、中国が日本側海域で調査活動をはじめた場合、それを停止させることができなくなります。
中国は、90年代中葉になると、「中間線」を越えて我が国海域で調査活動を開始しました。しかも我が国政府の停止要求を無視し「ここは中国の領域である」として調査を続行、96年7月20日、わが国政府がようやく国連海洋法条約を批准して「日中中間線」を設定しましたが、中国の海洋調査活動を阻止できないまま、ーー2001年には「事前通報」制度により..中国の海洋調査活動を容認したばかりか、今回は尖閣諸島への上陸まで許してしまいました。
日中中間線」を引いた段階で、日本側海域における中国の活動を阻止させることができなければ、次はわが国の領海内で中国の活動を阻止するほかはありません。我が国政府は、4回にわたり中国政府の「お墨付き」民間団体により領海を侵犯されたばかりか、今回は領土までも侵犯させてしまったのです。
ーーそれでも、日本政府は中国の意図がどこにあるか理解できないようです。
―― アメリ国務省のエレリー副報道官は記者会見で
沖縄返還に伴い、尖閣諸島は日本の行政下にある」と述べ、「日米安保条約は、日本の施政下にある領域に適用され、尖閣諸島にも適用される」と明言しましたが、それに続いて「尖閣諸島の最終的な領有権については、何れの立場にも立たないというのが米国の長年の方針である」とも述べ、領有権については中立を維持する姿勢を示し「領有権を主張する国と地域が、平和的に問題を解決することを期待する」と語って、冷静な対応を両国に求めています。
―― 申すまでもなく、自国の領土は自分で守るのが基本です。
尖閣諸島に限らず、日本が有事の際に日米安保条約が適用されるかどうかは、その時点での国際情勢と、それに対する米国の立場によって左右されます。
つまるところ、日本が自国の領土を守る決意を示すことなく、初めから他国に依存する国ならば、どうして米国が護ってくれるでしょうか。
日本が、自国の領土を守る決意を日常的に外に向かって示していれば、中国にしても、日本をバカにして押し寄せてくることはできないでしょう。
 
 
参考画像として尖閣諸島の位置図を添付します。
 
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