河井克行、河井案里夫妻の大規模買収事件に、当時の安倍晋三首相がどのように関与していたのか、中国新聞「決別金権政治」取材班による『ばらまき』(集英社)がその真実に迫っています。今回のメルマガ『佐高信の筆刀両断』で評論家の佐高信さんは、中国新聞記者の質問に対し、のらりくらりとはぐらかす安倍氏の「ひどさが露出した」対応を取り上げ、全国民が知るべきと糾弾。中国新聞による追撃に期待を寄せています。
中国に向っては勇ましいことを言うけれども、アメリカに対しては口をつぐむチキンの安倍晋三のひどさが中国新聞「決別金権政治」取材班の『ばらまき』(集英社)に露出されている。この本の副題が「河井夫妻大規模買収事件全記録」。
広島県府中のベテラン町議の繁政秀子が和多記者に打ち明けた。参院選公示の2ヵ月前に河井克行から「案里を頼みます」と30万円入りの封筒を渡された繁政は、当時の首相、安倍晋三に関して、「安倍さんの名前は出てこなかったんですか?」と尋ねられると、「和多さんだけにしか言わんけど、そうなんよ。私は『選挙活動できんくなるから』と断ったんじゃけど、(克行から)『安倍さんから』って言われた。(現金が)いる、いらんのやりとりの時にね。安倍さんからじゃから、ええんじゃけえという感じ。それで受け取った」と答えた。そして、「総理じゃけえね。安倍という名前を聞いて受けたんですよ」と続けた。
「安倍さんとはっきり言ってました?」和多がさらに問うと、彼女は、「びっくりしてね。なんと気持ち悪いと思った」と返し、本当に総理からと思ったかという和多の確認に、「私はその時、そう思ったんじゃろう」と応じたので、『中国新聞』は翌日の紙面で「『安倍さんから』と30万円」と報じた。
そして、2021年6月16日、『中国新聞』は「河井夫妻への(自民党からの)1億5千万円の件」について、安倍にぶつける。「ああ、あれね、近々党本部が説明しますから」という安倍に、「最終責任が幹事長と安倍前総裁にあると二階(俊博)さんが発言しましたが」と尋ねると、苛立ってこんな答えが返って来た。「いきなり言われても答えないから」唖然とするしかない。
「党本部からしかるべき説明が近々あるということか」には、「はい。いちいち言わないで下さいよ。私も総理大臣の時に答えているんだから。ちゃんと。今、党本部が整理している。(検察が押収した河井夫妻の政党支部の)資料がちゃんと戻ってきたら、皆が納得するように説明すればいい」
さらに「総裁」ではなく、「幹事長が説明する」と付け加え、「ちゃんと勉強しなきゃ。公選法をちゃんと勉強したの?私は答えているからね、ちゃんとね」と言い放ったとか。
このヤリトリは全国民が知るべきだろう。現在、日本維新の会に属する鈴木宗男の元秘書も案里の応援に入って安倍の秘書と企業をまわっているが、宗男の盟友の佐藤優は、克行の衆院選の応援に行って演説したことを告白している。『中国新聞』には、その時どんな話をしたのか、是非明らかにしてほしい。
これ『安倍晋三という「巨悪」 1.5億円河井事件、徹底取材で暴き出された素顔』と題した佐高信『佐高信の筆刀両断』と言う2022.02.01のメルマガである。
政治家の行動は旧来より、悪い事するにも変だが国民にかなり気を使い議員としての矜持にも意識して来たように思えるが、安倍政権には当時の官房長官だった側近菅義偉前首相や甘利明代議士のように、権力に物言わせた有無を言わさないような上から目線の独裁的政治姿勢が随所に見られ、ともすれば国民と言うより、自の延命に傾斜して来た過去が見え隠れする。だからこそ8年9か月もの長期の政権を維持できたと言っても過言ではない。特にアゴで使う官僚にも、有無を言わさない首根っこを押さえる、内閣人事局を作った事でも良く解かる。結果的にこの手法が官僚を委縮させ旧来手法以下の国民に気遣いする政治手法の崩壊を招いたとも言える。見方を変えれば経済発展の良さに反比例する政治の時代の後退と言えるのも頷ける所業である。