党首討論を見なかった人に(自民党・谷垣総裁)

▽職を賭すと約束を?谷垣氏

 ▽必ず5月末までに結論?首相

 【普天間移設】

 谷垣禎一自民党総裁 核安全保障サミットの報道にがくぜんとした。米紙ワシントン・ポストは「最大の敗北者は鳩山首相」と評価した。暴言だが、原因は首相にあることも否定できない。政治の責任者として発言が軽い。夕食会でオバマ大統領と何を話したのか。

 鳩山由紀夫首相 確かに私は愚かな首相かもしれない。昨年12月に、もし「えいや」と米軍普天間飛行場の移設先を(現行計画の名護市)辺野古に決めていれば、どんなに楽だったか計り知れない。しかし数年間、何も動かなくなり、結局は日米安保がおかしくなり「あの結論は間違いだった」と言われたかもしれない。その思いで大統領に「日米同盟を維持発展させるためにも沖縄の負担を軽減させる道はないかと努力している。5月末までに必ず責任を持つからぜひ協力いただきたい」と申し上げた。

 谷垣氏 もう一回がくぜんとした。「愚かだったかもしれない」とは、何ですかそれは。もっと使命感を持っていただきたい。なぜ正式会談をしなかったのか。

 首相 政府案がしっかり決まっていない段階であまり長い話をするより、夕食会の時の10分間がよいと大統領が判断したと思う。精いっぱい「必ず将来にとって良かったと思える決着をしたい」との趣旨を申し上げた。トップバッターとして(会談の)時間が与えられ感謝している。

 谷垣氏 首相が言う「危険性除去」の意味は。

 首相 普天間問題は周辺住民の危険性除去からスタートした。危険性除去が一番大事だ。結果として普天間の全面返還につながるよう最大限努力する。

 谷垣氏 現行計画なら2014年までに普天間は返還されていた。「危険性除去」は返還の先送りで大きな後退だ。

 首相 旧政権の下で何ができたのか。辺野古埋め立てに取りかかれる状況ではなかった。旧政権に任せていれば14年までに返還されず、ずるずる先延ばしされたに違いない。だから新しい発想が必要だ。

 谷垣氏 状況をあおって努力をつぶしたのはあなたたちだ。

 首相 あおったのではない。沖縄県民の意思を理解しながら選挙を戦った。その結果として勝利を収めた。

 谷垣氏 そろそろ腹案を明らかにすべきだ。

 首相 まず腹案が米国に理解されるかどうか水面下でやりとりしなければならない。それをしないうちに(移設候補地の)地元に「こうなるから」と言っても、米側が理解を示さなければ迷惑をかけてしまう。われわれがまだ何も申し上げていない中で鹿児島県・徳之島の皆さんに懸念を与えてしまったことは大変申し訳ない思いだが、まだ米側とやりとりしている最中だけに、ここで申し上げることはできない。

 谷垣氏 これだけ徳之島に不安を与えておきながら、まだ腹案を言えないとはおかしくないか。

 首相 今言えば、徳之島の皆さんや、そうでない場合に別の方々にも迷惑をかける。もっと擦り合わせながら、できるだけ早い時期が望ましいが、その時に話をする。

 谷垣氏 離島の経済的厳しさをだしにして、基地の移転に付き合うならば(予算を)何とかすると言わんばかりの手法が垣間見えることに、徳之島の人は怒っている。

 首相 まったくの誤解だ。予算と札束でほおをたたくようなやり方は新政権はやらない。

 谷垣氏 5月決着はできるのか。

 首相 全閣僚、意思を合わせながら努力している。沖縄県民、移設先になる可能性がある方々の理解も必要。米国も理解してくれないと話にならない。5月末までの時期を変えるつもりはない。

 谷垣氏 北沢俊美防衛相は5月末決着が難しいとの認識を示した。閣内不一致ではないか。

 首相 当然ながら簡単ではない。簡単にやろうとすれば(現行案で決着させる)話もあったが、その思いは消し去った。楽な道ではないと関係閣僚は皆理解している。心を一つにして頑張ろうと誓い合っているのだから、何も矛盾はない。

 谷垣氏 最低でも県外移設と言っていた。

 首相 沖縄県外に移設先を求めていく気持ちは変わっていない。沖縄の負担をできる限り軽減していかねばならない。

 谷垣氏 普天間飛行場が果たしている抑止力をどう理解しているのか。

 首相 日本を防衛する意味での抑止力の役割は大きいと理解している。

 谷垣氏 抑止力を維持するなら、選択肢は極めて限られている。

 首相 沖縄から距離的にあまり遠くまで海兵隊を移すのは物理的に必ずしも適当でない。選択肢をさまざま考えている。

 谷垣氏 国民や沖縄、鹿児島両県民をこれ以上愚弄し、もてあそぶことは許されない。首相の答弁が周辺世界の情勢を混迷させていることに気付かないといけない。

 首相 愚弄するつもりはない。今日までの負担を考えたとき、できる限り負担を減らすのが新政権の大きな責務だとの思いで努力している。

 谷垣氏 あなたはこの問題を軽く見た。職を賭して5月に問題を解決すると国民に約束したらどうか。

 首相 自分自身の覚悟を国民に示しながら行動している。必ず関係閣僚と協力しながら結論を5月末までに出す。

 谷垣氏 わが国の国際社会における信頼の基礎を完全に掘り崩した。昨年の国会で、麻生太郎前首相に「居座り続けること自体が国民の利益に反する。直ちに総辞職するか解散するか決断すべき時だ」と言っていた。そっくりそのままお返しする。

 首相 そう言ったのは結果として正しかったのではないか。すべての政策実現のため、職を賭して頑張ることは言うまでもない。