大規模施設に耐震診断を義務付ける改正耐震改修促進法は正にお役所のエゴである

 大規模施設に耐震診断を義務付ける改正耐震改修促進法が11月25日に施行されるのを前に各地の老舗旅館やホテルに困惑が広がっている。診断結果は公表されるため、「強度不足」とされれば、客足が遠のく恐れがあるからだ。利用者には必要な情報だが、改修費用は「億単位」とされる。なかには廃業を選択する老舗旅館も現れた。
 「耐震診断だけで数千万円かかることもある」
 群馬県草津温泉旅館協同組合の星野敏雄事務局長(68)は耐震診断の費用負担の重さをこう訴える。ただ、それ以上に問題なのは診断で「強度に問題あり」とされた場合の改修費だ。
 静岡県熱海市で昭和23年から営業する温泉旅館「大観荘」の総支配人、刀祢(とね)努さん(62)は「ウチが今回の診断対象なのかわからないが、もし改修となれば何億円という単位の話になる」と困惑する。
 
 ■診断「×」なら…客離れの恐れ
 神奈川県の箱根温泉旅館協同組合の担当者は、電気料金の値上げや、来年4月からの消費税増税の影響を指摘、「箱根でも改修費の捻出が厳しい旅館も出てくるだろう」とため息をつく。しかし、診断結果は公表されるため「強度不足」と診断されれば、「旅行会社から紹介してもらえなくなる」(山形県の旅館経営者)、「客足がストップしてしまう」(宮城県ホテル旅館生活衛生同業組合)など、利用者から敬遠されかねない。このため、診断や改修費用に対する公的助成を期待する声は大きい。
 
 ■静岡・神奈川は助成拡大の動きだが…
 診断対象の旅館やホテルが約70施設とする静岡県では、「改修費用を捻出できない古い旅館もあり、診断の結果が悪ければ、廃業に追い込まれることもある」と危機感を強め、助成を拡充する方針だ。
 改正法施行に合わせて国が耐震診断の補助率を3分の1から2分の1に引き上げるのに伴い、県も各市の補助率と同率を補助できるようにする。伊東市は4分の1を補助するため、県も同率で補助すれば、国の補助と合わせて事業者負担は実質ゼロになる。改修費用についても補助率を上げる方針。神奈川県と箱根町も来年度に新たな助成制度を創設する見通しだ。
 しかし、地方財政が厳しい中、こうした動きはまだ一部だ。被災地・宮城県では、県ホテル旅館生活衛生同業組合が「補助金は欲しいが、震災復興で県にもお金がない」と半ば諦め気味だ。
 こうしたなか、青森市浅虫温泉の老舗ホテルが11月で閉館する。担当者は「老朽化で維持費がかさむなか、施行前のタイミングで決断した」といい、今後もこうしたケースが相次ぐ可能性もある。
 
【用語解説】改正耐震改修促進法
 耐震基準が強化された昭和56年以前に造られた、不特定多数が利用する大型施設に耐震診断を義務付けるのが柱。3階建てで床面積5千平方メートル以上の宿泊施設のほか、一定規模以上の幼稚園や保育所、病院やデパートなどが対象。施設側が診断結果を報告しなかったり虚偽報告をして、行政の是正命令に従わない場合には100万円以下の罰金を科すことができる。11月25日施行。
 

これ「老舗旅館「耐震廃業」の不安 改正法、強度不足なら億単位の出費」と題した産経新聞 10月20日(日)16時27分配信の記事である。
 

 いくら9.11大震災が起きたからと言って、当時の法を忠実に守った当事の耐震建物が、現在の耐震基準を満足し無いからと言って建替を強要するのには無理があると言うものである。例え現在の建物に人命が掛かってもである。何故なら現在の建物の所有者には何の責任も無いからである。むしろ共有の責任として、その建替えの費用は全て国が面倒を見るべきである。何か私には建替を強要しなくては現在の役所の係りが、有事の責任を回避する口実に聞こえるし、お役所のエゴに思えてならないのである。