タブーに挑戦、性の介護者「ホワイトハンズ」に見る身障者の性(せい)と性(さが)(その2)

3.ドキドキの初回訪問:「言語障害でうまく話せなくても、大丈夫です」
 
初回訪問日当日、自宅にてドキドキしながらスタッフさんを待っていました。
スタッフさんは30代後半の方、ということだったので、どんな方が来るのかな、そして何を話せばいいのかな、と、いい年こいて思春期真っ盛りの少年のようにときめいておりました。
予定時刻になって、「こんにちは、ホワイトハンズです~!」という声が玄関から聞こえて来ました。
鍵は空けておくので到着したら勝手に入ってください、と事前に伝えておいたため、スタッフの方は迷うことなく、慣れた様子で丁寧に挨拶をしながら、部屋に入ってきました。
小ぎれいな格好をしたセミロングの女性で、ケア用品の入ったバックを小脇に抱えながら「斉藤さん、はじめまして。私、ホワイトハンズの川本と申します。今日は短い時間ですが、よろしくお願いいたしますね。」と、にこやかな笑顔で挨拶してくださいました。
お話を聴くと、普段は重度心身障害者の療護施設で働かれているとのこと。
そのため、重度の脳性まひ者に対するケアやコミュニケーションには、一通り慣れているそうです。
今日は、3歳になるお子さんを保育園に送った帰りなのだとか。
私は緊張すると、頭と右腕の不随意運動が、かなりくねくねと激しくなってしまうのですが、それに関しても特に怯えたりすることなく、「あ、そんなに緊張されなくても大丈夫ですよ。
私、そんな偉い人間じゃないですので(笑)、お気楽になさってください」と、雰囲気をなごませてくださいました。
前述の通り、私は重度の言語障害のために、初対面の方と満足にコミュニケーションをとることはほぼ不可能なのですが、川本さんはそのことをしっかり踏まえて、丁寧に対応してくださいました。
さすが施設職員経験者、といったところでしょうか。
脳性まひの人の中には、「いかにも施設職員」的な話し方や対応を嫌う人も大勢いますが、私自身は施設への入所経験も施設に関するトラウマも無いので、特に気には障りませんでしたね。
「スタッフは全員施設職員経験者」というわけでは全く無いそうなので、気になる人は職員未経験の普通のスタッフを選べばいいと思います。
次に、ケアの下準備ということで、お風呂場で洗面器にお湯を汲んできてもらいました。
お湯の出し方や湯沸かし器のスイッチの入れ方、タオルや洗面器の位置などは、事前に私が指示内容をメールで事務局に知らせていたので、川本さんがそのメールをプリントアウトしたものを片手に、てきぱきと動いてくださり、特に問題なく準備を行うことができました。
 
4.いよいよサービス初体験!:「・・・わずか1分で終わりました(笑)」
 
さて肝心のサービスですが、開始してわずか1分で、無事?終了してしまいました。
原則として、専用リフト以外の身体接触を伴う移乗行為はできない、とのことだったので、車いすに乗った状態のままで、ズボンだけをおろしてケアをする形にしました。
私の車いすは電動リクライニングなので、乗ったままの状態でケアができましたが、リクライニングが無い車椅子を使われている方や、腰痛のある方は、ちょっと難しいかもしれませんね。
場合によっては、介助者や家族・知人に、ベッドへの移乗の協力をしてもらうことが必要になるかもしれません。
また専用リフトがある家の場合でも、初回のケアの際はかなり時間がかかってしまうと思うので、ちょっと面倒でも、事前にリフトの使い方を事務局にメールで指示しておいた方が、無難でしょうね。
ズボンを下ろした後、川本さんが介護用手袋をはめて、私の陰部全体を、お湯で絞ったタオルで丁寧に清拭してくださいました。
陰部洗浄の際には、きちんと男性器の包皮も剥いて、内部の垢も洗ってくださいましたし。
通常の介護事業所だと、担当のヘルパーによっては、陰部洗浄の際に、「恥ずかしい」「できない」などの理由で、包皮を剥いて洗ってくれないこともあるんですよね。
ですが、恥ずかしいのはこっちも一緒ですし(笑)、そもそも男性の陰部の清潔を保つために絶対に必要な介護行為なので、介護のプロとして、きちんとやっていただきたいものです。
 陰部洗浄後、手のひらにローションをなじませて、ゆっくりとケアを開始。
 かれこれ十数年、まともに自慰行為をしていなかったので、 刺激に敏感になっていたのでしょうか。
 川本さんの手が陰部に触れて、2~3回上下に摩擦した瞬間、 刺激に耐え切れず、すぐに発射&終了。
コンドームはしていなかったのですが、川本さんがうまくティッシュで処理してくださったので、特に服やズボンが汚れるようなことはありませんでした。
まぁ、思ったより、というか、想定外に早かったですね。お、男としてのプライドが・・・(笑)。
ちなみに、脳性まひ者御用達の薬である「セルシン」を飲んでいる場合、性機能が鈍感になって、ケアに時間がかかることもあるそうです。
ケア自体があえなく1分で終わってしまったので、残り時間は川本さんとのおしゃべりで時間を潰しました。
これはスタッフの能力・経験による個人差もあると思うのですが、私のような重度の言語障害の人間ともコミュニケーションがしっかり取れる方に来ていただけると、非常に嬉しいですね。
ケアそのものよりも、こうした会話の時間が楽しみで利用される方も、多いそうです。
ただ、おそらく川本さんレベルのスタッフはそうはいないと思うので、重度の言語障害の人は、会話をスムーズに行うためのトーキングエイドや文字盤などを予め準備しておくのがベターかもしれません。
和気あいあいと話しているうちに、あっという間に予定時間になりました。
予め昨日のヘルパーさんに封筒に入れておいてもらった利用料金を、川本さんにお渡ししました。
川本さんは、私の目の前でお札の枚数を数えて、「では確かに頂戴いたしました」と丁寧に確認してくださりました。こういう心配りがあると、嬉しいですね。
「斉藤さん、今日はありがとうございました。次回はもっとゆっくり時間をかけてケアをさせて頂きますので、楽しみにしていてくださいね。それでは、また来月お会いしましょう!」という彼女のキラースマイル&営業トークにやられてしまい、その場でうっかり?今後の定期利用の口約束をしてしまいました。
私もまだまだ、甘いですね・・・。
 
5.サービス後の感想:「十数年ぶりに、朝勃ちがよみがえりました!」
 
翌日、朝起きてみると、妙に下半身が元気なんですよね。硬さも角度も、いつもの5割増しです。
十数年ぶりにスッキリしたので、これまで眠っていた精力が戻ってきたのでしょうか。
ああ、これが「性機能の健康管理」「性機能の低下予防」ということなんだな、と、改めてホワイトハンズのサービス目的を実感しましたね。
精力が戻ってくると、毎日の暮らしにもツヤとハリがでますし。
そういう意味では、食事介助や排泄介助、入浴介助と同様に、毎日の生活の中で当たり前に行われるべきケアなんだなぁ、と思いましたね。
自立支援法の逆風の中、私も赤貧洗うが如しの年金暮らしなのであまり経済的に余裕は無いのですが、毎月1回15分、3,500円のコースを定期的に利用することにしました。
毎月3,500円程度で、毎日の暮らしに活力が戻るのであれば、まぁまぁ妥当な「買い物」だと思うので。
まとめますと、ホワイトハンズは、ポルノや性風俗といった単なる性的な娯楽サービスではなくて、健康管理&生活の質の向上を目的とした、ケアサービスなんですよね。
そういう意味では、純粋に「性欲を満たすための娯楽」が欲しい、という人は、無理に利用する必要はないと思います。他のポルノやアダルトビデオ、性風俗のほうが、はるかに娯楽としてのコストパフォーマンス&満足度は高いでしょうから。
また「恋愛」と「性」、「愛情」と「性」を分けて考えられない人も、ちょっと利用は難しいかな、と思います。
医療・介護の視点から、「性機能の健康管理」「性機能の低下予防」のために行うサービスである、
という考え方ができないと、ケアを受けることに精神的な抵抗感が残るでしょうし。
ホワイトハンズは、自分の性機能の健康管理の必要性を客観的に認識し、かつ「恋愛」と「性」を切り離して考えることのできる「大人」のためのサービス、「紳士」のためのサービス、と言えるかも知れませんね。
・・・まぁ、私自身、紳士たりえているかどうかは、かなり疑問なのですが(笑)。
拙文をここまでお読みくださり、ありがとうございました。
 
以上です。