法律に違反してない事でも、人間としての価値が試されるのが国の機密費 内閣官房機密費の使い方である

既得権益”と“身内への甘さ”

 週刊文春の取材で、菅義偉首相の長男が東北新社に“コネ入社”した可能性や、菅氏が大臣を経験した後も影響力を保持する総務省の担当として、長男が同省のキャリア官僚接待に精を出すさまが浮かび上がった。秋田のイチゴ農家の息子から徒手空拳で上京し、権力の階段を駆け上がった立身出世のストーリーは今や崩壊した格好だが、一方で菅氏の“既得権益”“身内への甘さ”を物語るのが、「官房機密費」問題である。

 

*    *    *

 

 1月28日の参院予算委員会で、共産党小池晃氏は、菅首相官房長官だった第2次安倍政権下で官房機密費として約95億4000万円が支出されていたことを取り上げた。

 小池氏は、昨年9月の自民党総裁選のために支出したのではないかとただしたところ、首相は「そのようなことは一切ありません」と否定している。

 この質問は年明けすぐの赤旗の取材に拠るところが大きい。赤旗共産党はかねて官房機密費の使途の明確化に熱心で、宮澤喜一内閣における加藤紘一官房長官(1991年11月~92年12月)が使った機密費の明細を手に入れて公表したこともあった。

《国会対策費》からは、英国屋などスーツの仕立券が与野党幹部に支出されており、《パーティー》の項目には政治家のパーティー券購入の実態が記述され、さらには、《長官地元入り経費》や《日比谷高校会費(加藤氏は日比谷高出身)》など、私的費用への流用も疑われた。

 明細に、「50万円の支払い先」として氏名のあった古賀誠自民党幹事長は、受領を認める旨のコメントをしている。

 

 では今回の赤旗の記事(1月4日)の内容について、ざっと紹介しておこう。

1日で2億5000万円引き出した

 

菅義偉首相が内閣官房長官に在任した7年8カ月余(2822日)で自身に支出した内閣官房機密費は86億8000万円超だった。

 

◆支出した官房機密費の総額95億4200万円余の90・97%を菅氏は、自身の自由に使えるカネとして1日平均307万円を使ったことになる。

 

◆昨年8月28日、安倍晋三首相(当時)の突然の辞任表明後に菅氏が総裁選への出馬を表明したのは、9月2日。その前日の1日に菅氏は、官邸内にある官房機密費1億3200万円余のうち、9020万円を菅氏自身が自由に使える領収書不要の「政策推進費」に振り分けた。

 

◆官房機密費には「調査情報対策費」「活動関係費」「政策推進費」の3類型があり、このうち「調査情報対策費」と「活動関係費」は、事務補助者が出納管理をする。

 

◆「政策推進費」に関しては、官房長官にカネが渡った時点で“支出完了”となり、何に使ったかを知るのは官房長官のみで、官房機密費の中でもっとも闇のカネの要素が強いカネ。

 

◆菅氏は9月16日に官房機密費の引き継ぎを行ったが、その間で4820万円を使っていた。総裁選中もきっちり1日平均300万円を使った計算になる。

 

 官房機密費は内閣官房の仕事を円滑に進めるために機動的に使える経費とされ、月額は1億円前後で、これは2009~12年の民主党政権時代も同様だったから、菅氏が特別多く使ったというわけではない。

 ちなみにこの枠を大幅に超えて、「それまでの支出の態様とは異なるものと言わざるを得ない」と閣議決定された事案もある。

 政権交代が決まった衆院選直後の09年9月1日、麻生政権の河村建夫官房長官が2億5000万円の官房機密費を引き出したことがわかっている。

 

過去には選挙対策

 菅氏の引き出しと同じように、“駆け込み”感が目立つもので、政府は、鈴木宗男衆院議員(当時・新党大地代表)の質問主意書に答える形で「異常」と断じた格好だ。

 交代が決まった政権の官房長官に「内閣官房の仕事を円滑に進める」という動機を見つけるのは難しいだろう。さらに悪いことに、1日300万円という通り相場を遥かに超えていることも国民の理解を得られるとは思えない。

 

 同じ鈴木宗男氏に関しては、こんなエピソードもある。

平野博文官房長官は2010年4月22日、東京都内のホテルで開かれた新党大地鈴木宗男代表の政治資金パーティーであいさつし、鈴木氏が自民党総務局長だった時期の大阪府知事選の際、「5000万円なら出そう」と打診してきたことを披露し、「今思えば、そのカネは官房機密費(内閣官房報償費)から出ているんじゃないかな」と述べた。平野氏は、鈴木氏が機密費に関する質問主意書を多く出していることにも触れ「パーティーにはポケットマネーで参加させていただいた。主意書がなければ、ひょっとしたらそこ(機密費)から出したかもしれない」とおどけてみせた。鈴木氏は自民党の選挙実務を仕切る総務局長に99~01年在任。00年の府知事選では民主、自民両党が相乗りで推薦した太田房江氏が初当選した》(毎日新聞2010年4月23日より)

 国会対策にも日比谷高校の会費にも支出されているくらいだから、選挙対策に使われていてももはや不思議ではないが、当事者がそれをにおわせていたことは注目に値する。

 自民党の閣僚経験者によると、「総裁選は政治資金規正法にも公職選挙法にも引っかからないので、現金が飛び交う天国だというのが永田町の常識。2つの派閥からカネをもらう『ニッカ』、3派閥なら『サントリー』、あちこちからもらうパターンは『オールドパー』なんて昔は言われたけどね、まぁ今もカネの授受は普通にありますよ」

 少なくとも、菅氏による“駆け込み”引き出しについての弁明は聞いてみたいものだ。

 機密費の使用も、そしてコネ入社も、ごく一握りの人たちに許された既得権益の象徴である。

021年2月6日 掲載のデイリー新潮取材班

 

 

これ『「菅首相」は「官房機密費」をホントに総裁選に使っていないのか?』と題したディリー新潮2/6(土) 6:00の配信記事である。

 

 

この官房機密費(正式名称=内閣官房報償費)とは政治行政において「国が国の事務または事業を円滑かつ効果的に遂行するため」の経費と言う事だが、正に政治においては打ち出の小槌と同じである。これを自由に使える内閣官房長官は正に役得であり、政治の実質ナンバーワンと言えるのではないか。何故ならどんなに偉い人間でもカネが無ければ何も出来ないからである。それだけ金庫番は重要な役目だからである。どんなに自由に使えて、尚且つ使途を明らかにしなくても良いカネでもその使い道によってはその人の人間性が問われるからである。人間を敬うかあるいは卑下するか一番良く解る役柄形態と言えよう。上記事にもあるが、解る筈無い機密費の内容が暴露された当時の加藤紘一官房長官時の内容、あのどちらかと言えば融通の利かないあの加藤紘一さんの時でも私的な高校の会費等にも使っていたとは、莫大な機密費はその人間まで変えてしまうモノなのかも知れない。