民主党2010参議院選の総括その1

 政局も平穏で記事に苦しんでいると、表題に関した記事が日刊ゲンダイの2010年7月15日に 掲載していた。私が一番思い、主張したかった事がすべて書かれているので、見てない人に紹介したい。
 
参院選惨敗!菅・民主党 真相と今後の迷走政局】

今度の選挙でハッキリしたのは、「脱小沢路線」が大失敗だったということ
参院選惨敗! 菅・民主党 真相と今後の迷走政局
 
参院選で世紀の大惨敗を喫した菅民主党は、執行部の責任回避に躍起だ。しかし、今度の選挙でハッキリしたのは、「脱小沢路線」が大失敗だったということだ。
「小沢さんにはしばらく休んでもらう」と言い、クーデターのごとく、小沢切りを断行した菅政権。その主役は菅であり、知恵を授けたのが仙谷官房長官や枝野幹事長であるのは言うまでもないが、その結果が、このザマだ。脱小沢でいい気になったのは一瞬で、あとは国民も呆れ返る迷走の連続だった。
 しょせん、小沢がいなければ何もできないじゃないか。菅らの“幼稚さ”をまざまざと見せ付けられた選挙戦だったのである。
 政治ジャーナリストの角谷浩一氏はこう言う。
「就任後、菅首相がやったのは、唐突な消費税増税論議と、昨年、国民と約束したマニフェストを骨抜きにすること。さらに民主党の売り物だった透明性に逆行する取材拒否と、選挙終盤にはメッセージを伝えるために取材に応じるという自分勝手でした。これだけ裏切りを続ければ、この選挙結果になりますよ。総理は改めてスタートラインに立ちたいとか言っていましたが、スタートからズッコケ、この結果を招いたのです」
 菅が打ち出したことは消費税を筆頭にすべて、小沢流の逆張りだ。この間、小沢は「国民との約束は果たさなければいけない」と再三、メッセージを発したが無視された。
 その結果が比例で1845万票、選挙区で2275万票と、自民党をはるかにしのぐ票を集めながら、第1党の座を自民に譲るという世紀のマヌケ選挙だったのである。
「1人区でなぜ、これだけ負けたのか。私は菅首相や枝野幹事長の物言いが、野党やその支持者を怒らせ、燃え上がらせたのだと思います。与党なのに野党の過去の失政の揚げ足を取り、バカにするような言動です。これで自公の選挙協力がかつてないほど強固になった。菅首相や枝野幹事長を見ていると、その言葉が議論ではなく、相手を傷つける武器になっている。それが有権者の拒否反応を招く。私は小沢切りにも共通の怖さ、冷たさを感じました」(元参院議員・平野貞夫氏)
 頭デッカチで、人の痛みも分からず衝突ばかりしている子供がいるが、よく似ている。それをいさめる小沢がいなければ、民主党はどうにもならない。
「50議席を割ることはないよ」
 朝日や読売が民主党の50議席割れの可能性を伝えた日。番記者の前でこう言い放ったのが、安住選対委員長だ。
「枝野幹事長も同じように楽観的でした。さすがに『大丈夫か』と騒ぎになりましたよ」(全国紙記者)
 根拠なき楽観論に支配されていた民主党執行部。これぞ、ダメな組織の典型だが、それ以外でも、民主党は負けるべくして負けた。菅、枝野、仙谷の3人は、脱小沢で世論の支持率がV字回復したことで、すっかりテングになったのである。
 いい気になっている3人は、シロウト感覚で小沢から引き継いだ選挙体制をことごとく壊した。これが傷口を広げていく。
「例えば、選挙資金の配り方ひとつとっても、小沢さんは緻密でした。選挙区によって、渡す相手を本人、選対、県連と変える。常におカネを効果的に流す方法を考えていました。しかし、菅体制になって、選挙資金は公平配分が原則。あと一歩で通りそうなのも、てんでダメなのも一緒にしたのです。揚げ句が1人区の大惨敗。カネの使い方を知らなすぎる」(小沢に近い関係者)
 組織票もみすみす逃した。小沢は、連合幹部と一緒に全国行脚して、組織を固めた。頭を下げ、酒を酌み交わし、血の通った人間関係を築くことで、組織票を一票一票積み上げてきたのである。枝野は連合任せでほったらかし。それじゃあ下部組織は動かない。
 その一方で、連日、激戦が続く選挙区に大勢の幹部が入り、駅前で応援演説をやる空中戦が目立った。代表、幹事長、政調会長、選対委員長、財務委員長、組織委員長、大臣、副大臣政務官……と、じゅうたん爆撃みたいだが、「受け入れ体制づくりに人手を取られたり、動員疲れで逆効果のところもあった」(県連関係者)という。これでは勝てない。選挙のイロハも知らない青二才が選挙を仕切ったことが、大間違いだったのである。
 投票日前日の新聞広告で「説明不足」を陳謝するぐらいだ。菅首相は、自らの「消費税発言」が、選挙で足を引っ張ったことをよく分かっているのだろう。だったらなぜ、そんな不用意な発言をしてしまったのか。
「菅さんは元来、政局オンチなのです。党内手続きも踏まず消費税増税を言い出したらどうなるか、全く分かっていなかった。案の定、選挙戦では民主党の候補者が消費税増税に『賛成』『反対』バラバラで、有権者が失望し離れてしまった。菅さんの周辺に、『総理、それはおかしいですよ』と進言する人もいない。裸の王様なのです」(民主党中堅議員)
 選挙後の判断でも、菅首相は世論を読み違えている。
 大勢判明の深夜に、早々と執行部の続投まで宣言。仙谷もきのう(12日)の記者会見で、「大変もだえ苦しむことになると思うが、それをくぐり抜けてこそ日本の政治が成熟する」と、自分たちの続投を正当化した。ホンネは政権にしがみつきたいだけだろう。
 落選した千葉法相のクビも切らない。閣僚をひとり動かすことで「だったら内閣改造を」の声が高まり、「執行部も交代しろ」に拡大するのを恐れてのことだ。奇策まで繰り出して逃げる政権を有権者が支持するわけがない。
 政治ジャーナリストの鈴木哲夫氏はこう言う。
有権者はこれまで『責任を取らない政治』に不信感を抱いてきた。参院選の民意を反映すれば、菅さんは党と有権者に何らかの責任を取る必要があります。菅さんが続投なら、選挙を仕切った幹事長が責任をとるのが筋です。民主党の良さは、何事にも逃げないで議論していくところでしたが、今は政権病にかかってしまっています」
 菅首相民主党の支持率続落は必至だ。逃げてばかりでは、巻き返しなどできない。
 民主党惨敗の大きな要因のひとつが、菅政権になって“民主党らしさ”が急速に失われたことだ。限りなく自民党に近づいたのである。
 普天間問題では辺野古案での合意をオバマ米政府と約束。「生活第一」は後退し、法人税の引き下げなど大企業優遇が鮮明になり、マニフェストは骨抜きにされた。その結果、財務官僚の言いなりで消費税増税に突っ走ったのだ。
 思い返せば昨年の政権交代、国民が熱狂したのは、民主党の理念に対してだった。政治主導、対等な日米関係、国民の生活が第一??。50年続いた自民党のデタラメ政治にホトホト嫌気がさした有権者は、民主党が掲げる理念に熱狂し、政権を託したのだ。それが、ことごとく裏切られてしまった。
民主党政権が支持されてきたのは、戦後ずっと続く官僚支配、対米従属関係を政治主導で改革すると訴えてきたからです。鳩山政権には稚拙な面もあったが、志はあった。挑戦もしてきました。しかし、菅首相はその理念をアッサリ捨て去ったように見えます。消費税増税は、どう釈明しようが、官僚や財界、大マスコミに媚びようとしたのは明らか。財源問題をつつかれた鳩山失脚を目の当たりにし、保身のためにスリ寄ったのでしょうが、民主党らしさの喪失に有権者は敏感に反応した。それがこの選挙結果です」(筑波大名誉教授・小林弥六氏=経済学)
 こうなると、民主党が支持を取り戻すのは難しい。苦しい生活を強いられている国民が政治に期待するものは何なのか、もう一度、じっくり考えることだ。自民党と変わらない政治なら、本家に一日の長がある。自民党に任せておけば済む話だ。民主党はもう一度、原点に立ち戻るしかない。
 今度の選挙の敗因について、前出の平野貞夫氏はハッキリこう言う。
「大きな理由のひとつは挙党体制を敷かなかったことです。小沢氏を選挙対策の責任者にすれば、何の問題もなかった。排除するから、こういうことになったのです」
 鳩山が首相を辞した以上、小沢の幹事長辞任まではしようがない。問題なのは、その後の処遇だ。小沢を遠ざけ、排除し、小沢色の一掃をもくろんだことが、さまざまな軋轢や混乱を生んだのだ。
 それにしても、不可解なのはなぜ、「選挙の神様」を切らなければならなかったのか、ということだ。ふつうは考えにくいから、「脱小沢はポーズだろう。本当は菅と小沢はつながっているんじゃないか」なんていわれたものだ。
 しかし、消費税増税マニフェスト見直しと、菅が次々と小沢路線を否定、それも神経を逆なでするような方向に進みだしたことで、ハッキリとした答えが出た。本当に小沢排除に動きだしていたのである。
「こうなると、全国に散らばり、新人候補の選挙の手伝いをしている小沢の秘書軍団だって、力が入りません。しかも、菅政権が脱小沢路線をあからさまにしたものだから、自分が小沢系であることを隠そうとする候補者まで現れた。小沢流の選挙をやるのかやらないのか。現場では指揮系統も混乱し、本来の選挙戦術が徹底できなかったのです」(政界関係者)。
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