最初の質問は「17年1月20日に知った」との答弁を信じられるか、嘘だと思うか。結果は「嘘だと思う」が約84%に上った。
まず「信じられる」という主な理由は、「これだけ根掘り葉掘り探られて、いまだに確たる証拠は出ない」(62・女)
「都合が悪い事は忘れ、都合が悪い文書関連は破棄したと言ってるようにしか見えない」(36・女)
と、役所の文書を信じるという声が大きかった。
などと、そもそも首相の言葉に信頼が置けないという理由が目立った。
「事実と異なる答弁は森友問題でも繰り返されてきました。首相は『私や妻が関係していれば総理も議員も辞める』と断言したが、佐川宣寿理財局長(当時)はこの首相答弁との整合性を取る形で、計43回も虚偽答弁を重ねた。しかし、財務省が5月23日に公表した文書からは昭恵夫人の関与が一層明白になったのです」(政治部デスク)
メモによれば、学園と財務省が結んだ定期借地契約を巡って、谷氏は〈社会福祉法人に対し、定期借地権の制度を一部優遇する検討がなされているとの報道〉があり、〈優遇を受けられないかと総理夫人に照会があり、当方からお問い合わせいただいた〉と述べている。2日後、財務省は〈最大限の配慮をして対応している〉と応じているのだ。
「5日前の11月5日のメモには、籠池泰典前理事長が近畿財務局に〈総理夫人に国の賃料が高すぎると伝えている〉と述べたことが記されていました。つまり、籠池氏が昭恵氏に問い合わせ、それを受け、谷氏が財務省に問い合わせたということ。ここから状況は進展し、谷氏の問い合わせから約8カ月後、財務省は学園側と極めて異例と言える8億円値引きの売買契約を結ぶのです」(同前)
一方で文書には、妻の諄子氏が財務局側に〈あんたら、いじわるや、死んだら地獄に行くぞ〉と迫った場面もある。安倍首相も思わずこう漏らしていた。
「籠池がおかしいということが明らかになっただけだろ。妻も関係ない」
昭恵夫人がやり取りする相手 その昭恵氏は、今回の訪露にも同行。その間、ある人物とSNSでやり取りしていたという。ユーチューブで「森友事件の黒幕は麻生(太郎)財務相」などと発信していた立花孝志葛飾区議だ。立花氏が明かす。
そして昭恵氏は今なおこう語っているという。
「籠池さんは、私のことを誤解されたまま拘置所に入ってしまった。揉めるようなことはなかったはずですが、なぜ誤解が生まれたのか、話し合いたいのです」
昭恵氏に立花氏とのやり取りについて確認を求めたが、返事はなかった。
高収入の専門職を労働時間規制から外す高度プロフェッショナル制度の創設や、同一労働同一賃金の導入が柱の働き方改革法案。首相は今年2月、「裁量労働制で働く方の労働時間の長さは、一般労働者よりも短いというデータもある」と答弁していたが、このデータ自体が虚偽だったのだ。
「一般の労働者には『1カ月で最も長く働いた日の残業時間』を尋ね、裁量労働制で働く人には『1日の労働時間』を尋ねていた。全く違う質問で、『裁量労働制は労働時間が短い』という都合の良い結論を導き出していたのです」(同前)
この点を野党に追及されると、首相は「担当は厚労相だ」とかわし続けた。
「もちろん後付けと言われればそれまでというところはありますが、それぞれのご指摘を踏まえながら、削除する所は削除して(法案を)出しております」
――データ捏造問題の責任はどこにあるのか。
「捏造でもないですが、最終的には私たち大臣の責任であるのは当然です。時代によって求められているものは変わりますが、そのままやっていた所もあったわけで。我々も常にデータの取り方含めて反省しないといけないと思います」
――本当に首相の思い入れがある法案か?
――しかし、首相は過労死遺族との面会を拒否した。
「政策的なお話でもありますから、担当する大臣が聞くと。一回、私も聞きましたが。そういう対応がいいのではないか、ということを申し上げています」
根強い批判に晒されながらも、首相自ら働き方国会と謳った手前、今国会で法案を成立させる意向だ。
「安倍政権は社会保障政策を巡り、これまで様々な看板政策をぶち上げてきました。16年には『働き方改革』、昨秋には新たに『人づくり革命』を掲げ、茂木敏充氏を担当大臣に起用した。しかし、その陰でいつの間にか消えた政策もあるのです」(自民党幹部)
「一億総活躍社会は15年秋に首相が突如として掲げたスローガンです。当時安保法制で支持率が低下する中、高度経済成長を実現した池田勇人首相時代の『一億総中流』をヒントに、今井氏と佐伯氏が辿り着いた言葉。首相は当時『いいスローガンだろ』と満足気でした」(官邸幹部)
この一億総活躍社会を実現するために、安倍首相が打ち出したのが、〈(1)GDP(国内総生産)600兆円、(2)希望出生率1.8、(3)介護離職ゼロ〉という「新3本の矢」だった。ところが「首相の口から最近、新3本の矢という言葉はほとんど聞かない」(同前)という。どうなっているのか。
GDPの算出方法を変えた
「第1の矢〈GDP600兆円〉は首相が藤井聡内閣官房参与から『経済成長が順調なら、21年までに600兆円超との試算を内閣府が出している』と進言され、『それはいい』と引っ張ってきた数字です。GDPの数値目標は政権にとって都合が良かった。16年から新たに研究開発費をGDPに算入する国際基準2008SNAを適用することが決まっていたからです」(同前)
甘利明経済再生相(当時)は「従来統計で目標に取り組むのが基本」としていたが、首相は新基準をベースに「GDP550兆円を突破」とアベノミクスの成果を強調。しかし『アベノミクスによろしく』の著者、明石順平弁護士が指摘する。
「算出方法の変更で、GDPは年20~30兆円上振れしましたが、旧算出方法だと、民主党政権の3年間に比べ、アベノミクスの3年間は実質GDPを3分の1程度にしか伸ばせていない。さらにアベノミクス以降、2008SNAと関係のない『その他』という項目によって、年平均5.6兆円も不自然にかさ上げされているのです。また、首相は『アベノミクスで賃金が増えた』と言いますが、物価を考慮した実質賃金は民主党政権を下回っている。安倍政権はこうした“数字のマジック”が目立ちます」
「甘利氏の側近で、経産次官だった菅原郁郎氏(現内閣官房参与)が『厚労省から良い案が出ないから俺が考えた』と吹聴していました。一方、財務次官だった田中一穂氏(現日本政策金融公庫総裁)は『財源はどこにあるのか』などと吐き捨てていました」(前出・官邸関係者)
菅原氏本人はこう語る。
だが、当初は華々しく射られた2本の矢も、新生児の出生数は16年に100万人を割り込み、17年にはさらに3万人減。合計特殊出生率は1.44(16年)で、希望出生率1.8には程遠い。また、親の介護を理由に仕事を辞める人は現在も年間10万人以上とされ、抜本的な対策は実施されていないままだ。
「一億総活躍相に起用された加藤氏は各省庁に『エース級を出せ』と命じ、参事官クラスを推進室に参集させたものの、方向性が見えない部署になった。その後も毎年、人づくり革命など新たな看板を掲げますが、中身はほとんど同じ。ただ、時々の世論受けを狙って、派手な数字と言葉を並べているだけなのです」(元事務次官)
新3本の矢の現状についても加藤氏に尋ねたが、
「一億総活躍の時にも、働き方改革は大事だということは申し上げていた。一連のストーリーをもって展開しているわけです」
――後任の松山政司一億総活躍相の存在感が薄い。
「私の頃に比べて所掌が拡大されているのでは。でも一億については、フォローアップしていますよ」
松山氏の携帯も鳴らしたが、訪露中ということもあり、応答はなかった。
「昨年10月時点で少なくとも5万5000人超の待機児童がいました。そこで今度は『20年までに32万人分の保育の受け皿を作る』とぶち上げた。しかし、野村総研の試算では必要な受け皿は約88万人分とされ、政府の目標では待機児童ゼロは絶望的。ただ、当の首相は『彼女がいなくなったからね』と余裕を見せています」(前出・首相周辺)
「首相は野党議員の中でも山尾氏が特に嫌い。昨年9月の不倫報道にも『気持ち悪いよね。自分には甘い人なんだよ』と切り捨てていました。首相はここに来て、幼児教育無償化を掲げていますが、そうすればまた待機児童は一層増えると見られます」(同前)
安倍政権と日大の共通点
などと、饒舌に語っていたという。
「セクハラやモリカケ問題から、日大へと世間の注目が逸れたと安堵したのでしょう。しかし、トップを守るために上司が『記憶にない』と逃げ、部下だけが責任を取らされる姿は、安倍政権と日大の共通点と言えます」(前出・政治部デスク)
「安倍さんも『加計さんから聞いていた』と言えば良かった。そう言わないから、何か隠しているのかなと思われる。私も直接聞いたけど、安倍さんは『嘘はついていない』と。本当にそうなのか、そう思いこんでいるのか分からない。モリカケで次々と出ていることは、昔ならそれぞれで一発アウト。退陣しなきゃいけない。野党が不甲斐ないからそうなっていないだけ。解散すれば、総裁選は無投票って言うけど、安倍さんが総理でい続ける限り、モリカケ問題は言われ続けてしまうからね」
首相の頭の中を占めているのは、その総裁選のことだ。5月8日夜、一人3万円は下らない渋谷の高級フレンチ「シェ松尾」。1月下旬に続き、再び2階の個室で首相は麻生氏と二人で向き合っていた。麻生氏は「そんなに美味い店か」と周囲にこぼすが、首相は麻生氏に私邸で長居されるのを避けたいのだという。
「話題は総裁選。麻生氏が『岸田(文雄政調会長)はまだ小さいですね』と言えば、首相も石破茂元幹事長を『許せません』と痛烈に批判しました。麻生氏の辞任論も出ていますが、次は首相自身の責任問題になってくる。このまま強行突破するほかないと考えているようです」(前出・首相周辺)
「信なくば立たず、です」
この言葉すらも嘘だったのだ。
正にこの文春の通りと思われる。この記事には言う事は何一つない。正にこの記事が真実である。