「森友・加計学園問題」をうやむやにしてあわよくば「憲法改正」をと考えた、今回の内閣改造である 果たしてそう上手く行く?

 内閣改造北朝鮮のミサイル騒動など目先が目まぐるしく変わり、支持率急降下の政権は土俵際で踏みとどまった。しかし政治家安倍晋三の信用は傷ついたままだ。
 
 悲願の憲法改正は遠のいてしまった。体制立て直しに解散・総選挙という観測さえ流れている。
 
 総選挙だろうと憲法改正国民投票だろうと「国民の信」なしに果たせるものではない。避けて通れないのが加計・森友のみそぎだろう。火元は安倍家、首相の不徳に根源がある。個人としてどこまで関与していたかは不明だが、安倍夫妻の人間関係が疑惑の底流にある。追及を逃れようと首相周辺は「記憶にない」を連発、決定に関与した役所は「書類はない」「廃棄した」という。
 
 うやむやにして逃げ切ろうとする政権の姿勢が有権者の不信を増幅している。お友達が厚遇されているのではないか、と国民は疑っている。そんな中で、加計学園獣医学部新設を白紙に戻す、という選択肢が首相周辺で語られているという。人気挽回のサプライズとしての戦略だという。
 
● 加計問題は疑惑を抱えたまま逃げ切りで はたして「安倍政権の勝利」になるのか
 
 獣医学部の新設が今の日本に必要なのか、加計学園が新学部を作って担当することが望ましいのか、衆目監視の中できちんと議論する。冷静になれば誰でも分かることだ。行政を正常軌道に戻すことしか信頼回復の道はない。その決断が安倍首相にできるか、そこが課題だろう。
 
 加計学園の理事長は、安倍首相の親友で、これまで事業の手助けを頼んできたことはなかった、という。ならば「認可申請の取り下げ」を学校法人として決断することは、親友の窮地を救うことになる。加計孝太郎氏もまた決断を問われている。
 文科省の大学設置・学校法人審議会は、8月末までの予定だった獣医学部新設の認可を10月に先送りした。教授数など教育体制が十分でなく、経営主体である岡山理科大加計学園系列)からさらに事情を聞く必要がある、という。審議会は専門的な見地から厳格な審査を行うことになっているが、政治問題化している獣医学部の認可は荷の重い仕事だろう。事務局である文科省高等教育局は、学部新設に慎重だった局長が7月の異動で外された。文科大臣も「加計疑惑収拾」を使命とする林芳正氏に替わった。審議会が「不合格」を決定した前例はない。普通なら危ない案件は事前に指導が加えられ、審議会にかかる前に条件はほぼ満たしているからだ。
 
 今回は、文科省の慎重姿勢を押し切って「20184月開学」という官邸からの要請で進んだ案件なので、しわ寄せが大学設置審議会に及んだ。
 
 審査を遅らせ、その間に体制を整えたので認可しました、という筋書きのようだが、果たして世論は納得するだろうか。獣医学部が認可されれば、加計学園の「無理が通った」ということになる。
 
 国家戦略特区での新設は、国際競争力の強化、国際ビジネスの拠点化、という特区ならでは認定条件に合致しなければならない。さらに、既存の獣医学部ではできない研究や新分野への挑戦という「石破4条件」を満たすことも必要だ。ペットのお医者さん養成という程度の軽い大学では認可の対象にならない。
 
 文科省の内部文書では荻生田官房副長官(当時)もこの点を懸念していた。強引に進めることを迫ったのは「総理のご意向」という殺し文句だった。普通なら認められない申請が認められる、という流れを指摘したのが「行政が歪められた」(前川喜平・前文科省次官)という表現だった。
 
 審議会が認可すれば、あれだけの騒ぎになっても、走り出した「政府の方針」は変えることができない、疑惑を抱えたまま逃げ切った、と国民の目に映るだろう。この決着で「安倍政権の勝利」になるのだろうか。
 
● 楯突いた籠池夫妻は逮捕 役所側は“証拠隠滅”と“高飛び”の対照
 
 森友学園では籠池理事長夫妻は、補助金詐欺で逮捕され、拘留された。加計学園の理事長は姿をくらまし、表舞台に出て説明することもない。自民党は証人や参考人として国会に呼ぶことさえ反対している。
 
 籠池夫妻は「切り捨てられた」という思いから安倍夫妻に異議申し立てしたら、刑事責任さえ問われた。逃げ回る加計理事長は学部新設まで認められ、盾突いた籠池夫妻は留置場。田舎芝居のような現実を、国民はどう受け止めるだろう。憲法改正を叫んでも誰が耳を傾けるだろうか。
 
 内閣改造北朝鮮のミサイル騒動など目先が目まぐるしく変わり、支持率急降下の政権は土俵際で踏みとどまった。しかし政治家安倍晋三の信用は傷ついたままだ。
 
 悲願の憲法改正は遠のいてしまった。体制立て直しに解散・総選挙という観測さえ流れている。
 
 総選挙だろうと憲法改正国民投票だろうと「国民の信」なしに果たせるものではない。避けて通れないのが加計・森友のみそぎだろう。火元は安倍家、首相の不徳に根源がある。個人としてどこまで関与していたかは不明だが、安倍夫妻の人間関係が疑惑の底流にある。追及を逃れようと首相周辺は「記憶にない」を連発、決定に関与した役所は「書類はない」「廃棄した」という。
 
 うやむやにして逃げ切ろうとする政権の姿勢が有権者の不信を増幅している。お友達が厚遇されているのではないか、と国民は疑っている。そんな中で、加計学園獣医学部新設を白紙に戻す、という選択肢が首相周辺で語られているという。人気挽回のサプライズとしての戦略だという。
 
● 加計問題は疑惑を抱えたまま逃げ切りで はたして「安倍政権の勝利」になるのか
 
 獣医学部の新設が今の日本に必要なのか、加計学園が新学部を作って担当することが望ましいのか、衆目監視の中できちんと議論する。冷静になれば誰でも分かることだ。行政を正常軌道に戻すことしか信頼回復の道はない。その決断が安倍首相にできるか、そこが課題だろう。
 
 加計学園の理事長は、安倍首相の親友で、これまで事業の手助けを頼んできたことはなかった、という。ならば「認可申請の取り下げ」を学校法人として決断することは、親友の窮地を救うことになる。加計孝太郎氏もまた決断を問われている。
 文科省の大学設置・学校法人審議会は、8月末までの予定だった獣医学部新設の認可を10月に先送りした。教授数など教育体制が十分でなく、経営主体である岡山理科大加計学園系列)からさらに事情を聞く必要がある、という。審議会は専門的な見地から厳格な審査を行うことになっているが、政治問題化している獣医学部の認可は荷の重い仕事だろう。事務局である文科省高等教育局は、学部新設に慎重だった局長が7月の異動で外された。文科大臣も「加計疑惑収拾」を使命とする林芳正氏に替わった。審議会が「不合格」を決定した前例はない。普通なら危ない案件は事前に指導が加えられ、審議会にかかる前に条件はほぼ満たしているからだ。
 
 今回は、文科省の慎重姿勢を押し切って「20184月開学」という官邸からの要請で進んだ案件なので、しわ寄せが大学設置審議会に及んだ。
 
 審査を遅らせ、その間に体制を整えたので認可しました、という筋書きのようだが、果たして世論は納得するだろうか。獣医学部が認可されれば、加計学園の「無理が通った」ということになる。
 
 国家戦略特区での新設は、国際競争力の強化、国際ビジネスの拠点化、という特区ならでは認定条件に合致しなければならない。さらに、既存の獣医学部ではできない研究や新分野への挑戦という「石破4条件」を満たすことも必要だ。ペットのお医者さん養成という程度の軽い大学では認可の対象にならない。
 
 文科省の内部文書では荻生田官房副長官(当時)もこの点を懸念していた。強引に進めることを迫ったのは「総理のご意向」という殺し文句だった。普通なら認められない申請が認められる、という流れを指摘したのが「行政が歪められた」(前川喜平・前文科省次官)という表現だった。
 
 審議会が認可すれば、あれだけの騒ぎになっても、走り出した「政府の方針」は変えることができない、疑惑を抱えたまま逃げ切った、と国民の目に映るだろう。この決着で「安倍政権の勝利」になるのだろうか。
 
● 楯突いた籠池夫妻は逮捕 役所側は“証拠隠滅”と“高飛び”の対照
 
 森友学園では籠池理事長夫妻は、補助金詐欺で逮捕され、拘留された。加計学園の理事長は姿をくらまし、表舞台に出て説明することもない。自民党は証人や参考人として国会に呼ぶことさえ反対している。
 
 籠池夫妻は「切り捨てられた」という思いから安倍夫妻に異議申し立てしたら、刑事責任さえ問われた。逃げ回る加計理事長は学部新設まで認められ、盾突いた籠池夫妻は留置場。田舎芝居のような現実を、国民はどう受け止めるだろう。憲法改正を叫んでも誰が耳を傾けるだろうか。
 
● 常識をわきまえた政治家が中枢におらず 誰一人として深く責任を感じていない
 
 二つ目の隠蔽体質は、健全な常識をわきまえた政治家が政権中枢にいないことを示している。「ウソで固めて逃げ切る」という対処方針が誤りだった。メディアや国会対策に目が奪われ、その場しのぎの答弁や説明で切り抜けられると思ったのか。
 
 その場しのぎでウソをつくと、どんどん辻褄が合わなくなり、さらに大きなウソをつかなければならない。多忙な首相が年に5回もゴルフや焼き肉でご一緒しながら、「加計学園が国家戦略特区に申請するということを知ったのは今年1月」。誰も信じないような答弁をする結果となった。
 
 答弁のつじつま合わせに知恵を絞るが、大局が読めない。浅知恵に長けた側近を重用した結果である。「首相は本当のことを言っていない」と多くの人は受け取った。平気でウソをつく首相が支持を失うのは自然なことだろう。
 
 官邸主導で迷走する今回の事態に、深く責任を感じている当事者が見当たらない。指揮を執るのは菅官房長官だが、厄介な仕事を押し付けられた、という素振りが見え見え、と官邸詰めの記者は言う。事実上の司令塔は政務担当の今井尚哉秘書官だという。秘書グループが答弁書などの方向付けをしているというが官僚の集まりでしかない。今井秘書官を軸に森友学園財務省加計学園内閣府とその後ろにいる経産省が対応していることに限界がある。
 
 役人は論理的整合性を重視するが、世間がどう受け止めるかには無頓着だ。担当する部分には知恵を絞るが、全体像に想像が及ばない。菅官房長官の下で事務を仕切る杉田官房副長官や、国家戦略特区を担当する和泉首相補佐官も同様。だれもが責任を感じていないから、誤った政策を転換する、という大きな決断ができない。決めた方向を変えることができないまま、政策暴走を許している。
● 憲法改正を画策する首相が 本気で加計学園と心中するか
 
 事件は小学校や獣医学部の認可で起きたのがせめてもの幸いだった。満州事変から太平洋戦争へとのめり込み、原爆が落とされるまで「政策の軌道修正」ができなかった大失敗の経験が日本にはある。その反省の上に今日があるのに、歴史に学ぶことをしない安倍政権は、愚行を繰り返している。
 
 森友学園は籠池逮捕で終わらない。詐欺で起訴され、これにて一件落着となれば、「国有地安売り」の財務省へ批判が沸騰するだろう。国税庁長官になったまま姿を現さない元理財局長の佐川宣寿氏への風当たりだけでなく、事件当時の近畿財務局長らに厳しい視線が注がれるだろう。この件については、改めて書く。
 
 加計学園獣医学部新設を政府は本気で正面突破するつもりだろうか。方向転換できない政権は突っ走るかもしれないが、冷静に考えれば、一歩後退して安倍政権の体制を立て直すことが得策であると誰でも分かることだ。責任を取らない側近の差配で愚行を改められないなら、政治家はいらない。憲法改正を画策する首相が加計学園と心中するとは思えない。首相周辺で、白紙撤退のダメージを瀬踏みしつつ「選択肢のひとつ」として密かに検討されているという。
 
 新国立競技場の建設費が膨大になって、政府は計画を白紙に戻した。誰の入れ知恵か知らないが、賢い選択と評価され、安倍内閣への風当たりは和らいだ。完成は東京五輪にはなんとか間に合うが、前年に予定されるラグビーワールドカップの東京開催に間に合わなくなった。ラグビーWCの旗を振った大先輩の森喜朗元首相の顔に泥を塗ってでも決断したのである。背後に高い支持率があった。
 
 今回は親友の加計理事長に泣いてもらうしかない。その決断を、安倍首相ができるか。政治家としての正念場である。
 
 (デモクラシータイムス同人・元朝日新聞編集委員 山田厚史)
 
 

これ「加計・獣医学部を白紙撤回?安倍政権が人気挽回サプライズ作戦か」と題したDIAMONDOOnline 8/17() 6:00の配信記事だ。

 
 
森友・加計学園問題」をうやむやにしてあわよくば「憲法改正」をと考えた、内閣改造と考えられる今回の安倍政権の浅知恵だ。
本当に全くこの記事の通りである。今日はこの記事を紹介して終わりたい。