今回の安倍政権の失態は菅官房長官の「策士策に溺れる」を地で行った結果である?

大手メディア各社が618日に発表した世論調査の結果は、官邸に激震を走らせたに違いない。朝日新聞によれば内閣支持率41%で、前回調査よりも6ポイント下落した。共同通信の場合は44.9%で、下落幅はなんと10.5ポイントにものぼる。
とりわけショックだったのは、毎日新聞の調査結果だろう。内閣支持率10ポイント下落の36%に対し、不支持率は9ポイント上昇の43%。支持と不支持が逆転した。高支持率をよりどころにしている安倍政権にとって、きわめて厳しい数字といえる。
 
■「深く反省している」
「国民のみなさんから信頼を得られるよう、冷静にひとつひとつ丁寧に説明していく努力を積み重ねていかなればいけない。その決意を国会の閉会にあたって新たにしています」。619日に行われた総理記者会見で、安倍晋三首相は一言一言かみしめるようにこう述べた。
「印象操作のような議論に対して、つい強い口調で反論してしまう、そうした私の姿勢が結果として政策論争以外の話を盛り上げてしまった。深く反省している」。頭を垂れて見せたその姿勢は、世論調査の結果を見て追加されたものだろう。しかしながら国民が疑問と怒りを感じるその真髄について、果たして安倍首相は理解していたのか。
たとえばスピーチの中で安倍首相は、「国家戦略特区を巡る省庁間のやりとり」「国家戦略特区における獣医学部の新設」などと加計学園問題について言及した。しかし一度も「加計」と“お友達”の名前を口にすることはなかった。
そのような言い訳がましさ感が漂うスピーチを聞いていた時、ふと目にとまったのは演壇の脇に座る菅義偉内閣官房長官だった。
菅長官は第2次安倍政権が発足して以来、4年半もの間その地位にあって安倍首相を支えてきた。官房長官としての在任期間は昨年77日に歴代1位記録を更新し、その絶大なる影響力で「影の総理」とも目された存在だ。
しかしこの総理会見の時の菅長官の様子は、「大物政治家」としての雰囲気とは全く違っていた。目はうつろで、考え込むかのように下を向いたと思ったら、まるで全てを拒否するかのように瞼を閉じてしまう。心ここにあらずという風情で、これまでの会見でも決して見せたことのない追い込まれたかのような姿だった。
いったい何が菅長官を変えたのか。
 
■菅長官を変えたものとは?
それは人事問題かもしれない。時事通信617日、安倍首相が秋までに内閣改造自民党役員人事を行う意向を固めたと配信。同時に政府関係者や自民党幹部によれば、麻生太郎副総理兼財務大臣と菅長官は留任が有力だと報じている。
だが一方で、菅長官更迭の話も伝わっていた。ひとつは自民党幹事長ポストへの横滑り説で、もうひとつは無役説。幹事長への横滑りは菅長官が希望するところで、ポスト安倍をも狙えるステップアップとなる。だが実はこのところ、後者の方が有力になりつつある。
「安倍首相と菅長官との関係がよくないらしい。理由は加計学園問題で菅長官が『私に任せて下さい』と安倍首相に大見えを切ったのに、まったく上手くいかなかったからだ」。ある政党関係者はこう解説する。
では、そもそもなぜ菅氏が加計学園問題解決に自信を持ったのか。「菅長官は地元の横浜市獣医師会の政治顧問を務めている。それに菅長官は、日本獣医師政治連盟から献金も受けている」(同関係者)
確かに日本獣医師政治連盟は、平成252013)年222日に横浜政経懇和会に30万円を寄付している。同会は菅長官が代表を務める政治団体で、その住所は衆議院2議員会館の菅長官の事務所となっている。
「菅長官にとって計算違いは、前川喜平前文科事務次官が出てきたことだろう。それを潰そうとして読売新聞に前川氏の出会い系バー通いについて書かせたが、うまくいかなかった。さらに文科省から出てきたと思われる一連の文書を『怪文書』と言ってしまった。その“失態”を安倍首相から厳しく叱責されたようだ」(同関係者)
そんな流れの中で19日の総理会見に繋がっているわけだ。が、実は舞台裏では、もうひとつ大きな騒動があった。
19日夜に放映されたNHKの「クローズアップ現代」である。同番組において、加計学園獣医学部新設について萩生田光一官房副長官文科省の局長に対して発言したメモ(1021日付け)が暴露されたのだ。メモには以下のように書かれており、安倍首相の関与が伺える。
○和泉補佐官からは、農水省は了解しているのに、文科省だけが怖じ気づいている、何が問題なのか整理してよく話を聞いてほしい、と言われた。官邸は絶対やると言っている。
○総理は「平成304月開学」とおしりを切っていた。工期は24ヶ月でやる。今年11月には方針を決めたいとのことだった。
これについて萩生田副長官側は「総理からいかなる指示も受けたことはない」「文科省への指示をしていない」と関与を否定した。しかしながら番組では「文科省の現役職員」が匿名で出演し、「これは安倍総理の関係する総理マターである。十分な議論のないままに、結論まで行ってしまった」と証言。さらに文科省OB加計学園理事の豊田三郎氏が文科省職員と会って獣医学部新設を強く推したことを示すメールの存在も明らかにされている。
 
■「とかげのしっぽ切り」を行うのか?
今年2月に発覚した森友学園問題からずっと続いている安倍首相の「お友達問題」。問題がここまで大きくなったのは、初期対応がまずかったことが原因だ。その責任を一身に負うべきは、官邸を牛耳る菅長官ということになる。
「原点に立ち戻り、政権与党としての責任を果たしてまいります」。19日の会見で安倍首相はこう述べている。首相の演説の原稿には反省の言葉が並べられたが、それが嘘ではないのなら、国会で真相を明らかにし、国民への説明責任を尽くすべきだろう。内閣改造の際に責任者のクビを切る「とかげのしっぽ切り」で終わらせるようなことがあってはならない。
 
 
これ『菅官房長官はクビ?安倍政権「亀裂」の深刻度』と題した620東洋経済onlineでのジャーナリスト安積明子氏の記事である。
 
 
「策士策に溺れる」とテーマしたが実のところ私はそうは思ってないと言った方が正解だ。
彼はあーやってて結構臆病である。ただ40数年来の政治人生において、周囲の政治屋の盛衰を間近に見て来た勘だけは養ったそのお蔭で、その直前での危機管理だけは異常に強い。だからこその風見鶏と言われる所以でもある。悲しいかな彼の質はナンバーワンの質では無い! 強いて言えばナンバー2の器である。それも順風満帆時のみと思える。かっての田中角栄時の乱世の小沢に近いと言う人間も居るが、とてもとてもそこまでの器量は彼には無い! 逆に安倍1強時だからこそここまで持ったとも言える。ここのところの数年は正に彼にとっては思いもよらない時間だったろうと私は解釈してる。チョッとした歪が彼を迷わせ、その策が策でなくなってしまう。そうなればガタガタと崩れ去る。今彼はそこに居る。安倍首相は起死回生の内閣改造にこの秋までに踏み切るだろうが、菅官房の姿はもうそこには無いだろうと思うのは私だけであろうか。