前川喜平前事務次官が告発した「加計学園」の内部文書について、松野博一文科相は6月15日、「追加調査」の結果を報告。民進党などが指摘した19の文書のうち、菅官房長官が怪文書と断じた「官邸の最高レベル」との文言が記されたものを含む14の文書の存在を認めました。この調査結果をすでに予測していたメルマガ『国家権力&メディア一刀両断』の著者・新 恭さんは、「安倍内閣の権力乱用と公私混同は国民主権の冒涜だ」と一刀両断しています。
■殿のご乱心、家老の悪巧みで「安倍加計騒動」火焔広がる
いわゆる「総理のご意向」文書の有無について、あれだけ「確認できない」「調査は必要ない」と言い張っていたのに、前川喜平前次官に続いて現職官僚からも文書の存在を証言する声が上がるにおよび、松野文科大臣が「追加調査する」と姿勢を大転換。
しかも、瞬時に終わってしかるべき追加調査とやらがいまだに続き、時間稼ぎが行われている。野党議員から、告発者を懲らしめるための「犯人捜し」で手間取っているのではないかと指摘されるのも仕方がない。
追加調査も、再調査も、ヘッタクレもない。単に、前川文科前次官の証言でウソがばれ、それでも強弁し続けたが、ついに限界に達しただけのこと。どうせ、「支持率症候群」で心をかき乱した安倍首相から、取り繕いの令が出たのだろう。
「もし、働きかけて決めてるんであれば、これは私、責任とりますよ。当たり前じゃないですか。」
今治市で獣医学部の建設が進む加計学園の加計孝太郎理事長と安倍首相の親しい関係を指摘され、興奮して口走ったのが「責任をとる」という言葉だった。あまりの過剰反応に、福島議員は「どうしてそんなに恫喝するのか」と訝った。
その後、前川前次官が「文書はホンモノ」と証言するや、菅官房長官ら安倍官邸の面々は前川氏を「クセモノ」扱いし始める。読売新聞に三流週刊誌なみの記事を書かせ、前川は信用できない男だとお得意の「印象操作」におよんだ。
しかし、官邸の工作もむなしく、出会い系バーで前川氏に出会った女性の証言などにより、かえって前川氏の「株」が上がる皮肉な結果となり、半面、官邸側の陰湿な謀略が際立った。
明るみに出た8つの文書のうち、これまで「官邸の最高レベルが言っていること」「これは総理のご意向だと聞いている」という記述が、安倍首相の関与をうかがわせるものとしてクローズアップされてきたが、筆者が注目するのは、昨年10月7日の日付が記された「萩生田副長官ご発言概要」という以下の文書だ。
「再興戦略改訂2015の要件は承知している。問題は、「既存の大学・学部では対応が困難な場合」という要件について、例えば伝染病研究を構想にした場合、既存の大学が「うちの大学でもできますよ」と言われると困難になる。」
「四国には獣医学部がないので、その点では必要性に説明がつくのか。」
「加計学園が誰も文句が言えないような良い提案をできるかどうかだな。構想をブラッシュアップしないといけない。」
「福岡6区補選(10月23日)が終わってからではないか。」
「獣医師会や農水関係議員との関係でも、農水省の協力が必要。」
「私の方で整理しよう。」
この時点で、萩生田氏は超えるべきハードルを認識していたということだろう。2015年6月30日に閣議決定された「日本再興戦略改定2015」における、獣医学部「新設のための4条件」をクリアできないのではないかという文科省の懸念にも理解を示していたことがうかがえる。
文科省官僚がレク資料として記録に残した萩生田氏の発言からは、そのためのポイントが浮かび上がる。
「私の方で整理しよう」というのは、利害調整などはこちらでやるという意味だろう。「総理のご意向」にとって障害となる組織や人は、彼らにとっての抵抗勢力だ。獣医学部をつくりたがっている他大学、計画に反対する獣医師会、農水省とその族議員、さらには獣医師会とつながりの深い麻生副総理…。
「福岡6区補選が終わってから」と萩生田氏が言ったのは、鳩山邦夫氏の急逝にともなう同補選で、麻生氏が日本獣医師会会長である蔵内勇夫氏の長男、蔵内謙候補を推し、菅官房長官が鳩山二郎候補を応援するという「代理戦争」の様相を呈していたからだ。選挙戦のさなかに、調整は難しい。
また、「構想のブラッシュアップ」といっても、教授陣も決まってない段階で、実質をともなうはずもなく、いわば「作文」を上手に、という程度のものであろう。
「四国での必要性に説明がつくか」という問題については、おそろしく強引な決着が図られた。
ところで、政府が文科省内部文書についての再調査に追い込まれた背景には、二人の女性によるこの問題への強烈な追及があった。
一人は東京新聞の望月衣塑子記者だ。社会部員だったと思うが、「永田クラブ」に籍を置いているのであろうか、6月6日、8日の菅官房長官定例会見で、日和見空気にどっぷりつかっている他社の政治部記者をしり目に、一人気を吐いた。
望月記者「公文書管理についての告発が相次いでいます。前川さんだけでなく複数の方の告発が出ています。もう一度真摯にお考えになって文書の公開、あるいは第三者による調査をお考えになりませんか」
望月記者「匿名で出所がハッキリしない文書は調べないということですが、公益通報者保護法のガイドラインに匿名の通報についても可能な限り同様な取り扱いを行うとなっています。法治国家であればこのガイドラインに沿って文書があるかないかを真摯に政府の方で調べるべきではないですか」
望月記者は司会者の「同じ質問を繰り返さないで」「質問は簡潔に」という声にもひるまず続けた。官房長官の記者会見では異例なことだ。
菅官房長官は「嘘だとは言っていません」と言い、またしても同じ発言を繰り返した。「入手経路が明らかにされていない文書についてはその存否や…」
男性記者「なぜそう考えるかと言う理由の説明がない。要するに、やりたくないとしか聞こえないんです」
森議員は今治市に情報開示請求して手に入れたおびただしい数の行政文書を持参していた。
森議員「萩生田副長官、そのさい今治市の担当者は官邸で誰に会ったのですか」
萩生田副長官「確認できませんでした。公文書管理法により、すめば遅滞なく廃棄することになっており、確認は困難です」
萩生田副長官「そのような事実はない。面会記録に今治市関係者はない」
これまでの国会審議や報道により、加計学園の獣医学部を岩盤規制突破の名のもとに作らせるという官邸の意思を受けて、担当窓口である内閣府が今治市と連絡をとりながら、実現へ向けて準備を進めてきたことがわかっている。
森議員の怒りは、文科省の現役職員が文書の存在を認めているにもかかわらず、「確認できない」と逃げ続ける常盤豊高等教育局長に向けられた。
森議員「現職官僚は命がけで告発しているんですよ。このままでは法治国家でなくなる。局長、真実を言ってください。あれは本物でしょ。部下を見捨てるのですか」
森議員の迫真の追及に、委員会室のよどんだ空気は一変し、水を打ったようになった。
安倍首相は、このまま逃げ続ければかえって傷口が広がることをようやく悟ったのかもしれない。こうなったら、ことのついでに文科省をさらなる悪役にして、「徹底調査せよ」と厳命を下す側に回ったほうが得策と判断したのではないか。
イエスマンの松野文科大臣は「追加調査をしたいと申し上げ、総理から徹底的に調査するよう指示された」と記者会見で釈明するにいたった。とんだピエロ役を仰せつかったものだ。
今治市の資料から見ても、官邸の意図は明白だ。
2015年4月2日に担当者が官邸を訪問した後、今治市は、同年6月に獣医学部新設の特区を提案、12月15日に特区指定を受けた。その約10日後のクリスマスイブに加計孝太郎氏と安倍首相がワインで祝杯をあげている写真が安倍昭恵夫人のフェイスブックに投稿された。2016年8月、内閣府の指示で今治市が平成30年4月開校をめざすスケジュール表を作成した。
内閣府が「総理のご意向」として文部省に圧力をかけたのがスケジュール表作成後の同年9月から10月にかけて。同じころに加計学園理事で内閣官房参与でもあった木曽功氏や、和泉洋人首相補佐官らが前川前次官に面会して、協力を求めたことなども明らかになっている。
さらに11月9日には国家戦略特区諮問会議で京産大締め出しのため「広域的に獣医学部が存在しない地域に限る」という条件を設定。今年1月、今治市の特区で2018年4月に開設する一校に限り獣医学部新設ができるという告示を出し、申請者を募集した。開学時期をそこに合わせて準備万端の加計学園しか手をあげられないことを見越した募集だった。
まさに、加計学園のための国家戦略特区である。少なくとも、一般国民の視点とは大違いだ。
6月13日の参院内閣委員会では加計学園に関する質疑をやめさせるため自民党議員から採決の動議が出され紛糾する場面があった。「質問権を奪うのか」「参院自民党は恥を知れ」などと野党議員から怒号が飛ぶなか、委員長が「暫時休憩」を宣言した。
自民党は加計問題に関する追及を長引かせないため、18日までの会期を延長せず、共謀罪法案については、委員会採決を経ずに参院本会議で15日朝、成立させた。十分な審理を尽くさず党利党略を優先する暴挙というほかない。
そのうえで安倍官邸は、「追加調査で文書の存在が確認できた」と文科大臣に発表させ、国会閉幕とともに野党の追及の場を奪うことで、報道の鎮静化をはかりたいのであろう。
そうした思惑が透けて見えるだけに、この問題に関する報道を継続すべきメディアの責任は大きい。森友、加計問題と続く首相の権力乱用、公私混同は、国民主権の冒涜であり、決してうやむやに終わらせてはならない。
これ『新恭(あらたきょう)「国家権力&メディア一刀両断」』と題した第一線の専門家たちがニッポンに「なぜ?」を問いかけるMAG2NEWS6月15日の記事である。
一度ウソをつくとこうなる良い例だ!官邸は「天下り問題」で失態を重ねた文科省に罪を着せて幕引きを図るつもりだったろうが、その責任を取って辞めた前文科事務次官の前川喜平氏にそのからくりを暴露され、泡食って菅官房の失態が続いた。確かに前川さんの行動は、ここまでやるかと言う位痛烈に役所の裏を話続けた。これは単に前川さんの遺恨だけではない!戦略特区に名を借りた霞が関叩き=政治主導の見せしめに、文科省のトップだった意地を掛けた、内閣府への挑戦と私には思えた。前川さん事務次官経験者としてのプライドと栄光を捨てた誰もがやれなかった闘いを安倍独裁政権に挑んだと言って良い。彼は中々老獪である。かなり作戦練ったように感じる。その上手さはカウンターパンチをボディブローのように、小出しにした事である。これには安倍首相も参ると思われる。終わったと思ったらまた少しである。上手いもんである。たった一人で安倍官邸を翻弄してる。この痛快劇もっとやってほしいし、やるだろう。ターゲットは羽生田官房副長官である。いづれボディブローのように安倍首相に効き、安倍首相そのストレスで、一次政権投げ出しの時のように、もしかすれば投げ出すかあるいは、病気再発でダウンだろう。意外と早く来るかも知れない。これは見ものだ!ガンバレ前川!