安倍首相に囲い込まれた宏池会会長(岸田派)岸田外相 戦後の故池田元首相後の前尾繁三郎似で安倍晋三首相の親御故安倍晋太郎さんの二の舞か

 安倍晋三首相(自民党総裁)が3日に断行した内閣改造・党役員人事では、次期首相候補と目される岸田文雄外相、石破茂前地方創生担当相、稲田朋美防衛相の処遇が分かれた。平成24年12月の第2次安倍政権発足時から外相を務めてきた岸田氏は今回も留任。岸田氏が会長を務める岸田派には「今度こそ閣外に出るべきだった」との落胆と、「留任は最善の選択だった」との評価が混在している。岸田氏にとり外相留任は「ポスト安倍」レースで吉と出るか凶と出るか-。
 
 「岸田氏は男を下げた。これでは向こうに完全に差をつけられてしまう」
 
 岸田派の中堅議員は、岸田氏が外相留任を受け入れたことへの焦りと憤りをあらわにする。「向こう」とは、「ポスト安倍」をにらんで閣内残留を固辞した石破氏のことだ。
 
 一般に、閣僚はときの首相を表立って批判することはできない。安倍氏にかぎらず、首相が自らの地位を脅かす政敵を閣内に封じ込めることはままある。
 
 しかし、岸田、石破両氏が次期首相を狙うのなら、安倍首相と意を異にすることも含めて自らの考えを主張し、「ポスト安倍」としての独自色や存在感をアピールする必要がある。そうするためには、閣僚ポストという「足かせ」を外さなければならない。
 
 当然、両者はそれぞれの周辺から「再び閣僚就任の打診を受け入れれば飼い殺しも同然。今度こそ閣外に出るべきだ」と迫られていたが、選択は対照的だった。岸田氏は外相続投を受け入れ、石破氏は閣内残留を固辞し無役になった。
 
 「足かせ」がなくなった石破氏は今、首相への批判も含め自由に発言できる立場にある。その上、自ら立ち上げた石破派には、安全保障、社会保障、経済、農業振興などに明るいメンバーがバランス良くそろっており、領袖の石破氏が閣外に出たのを好機に政権構想作りを本格化させている。
 
 「岸田政権」を目指す岸田派議員にとり、安倍政権との対立軸を確立しつつある石破氏が脅威であるのは間違いない。そもそも岸田派(宏池会)はハト派路線の派閥であり、首相の路線とは必ずしも一致しているとはいえないからだ。
 
 ただ、岸田派議員にとっての脅威は石破氏だけではない。防衛相として再入閣した稲田氏だ。
 
 稲田氏は首相と思想信条が近く、首相の出身派閥の細田派に所属している。26年9月の内閣改造・党役員人事で「次のスターをつくるチャンス」(首相)と、衆院当選3回(当時)にして政調会長に抜擢された「秘蔵っ子」だ。
 
 当選回数からすれば、現在4回の稲田氏は「ポスト『ポスト安倍』」かもしれない。岸田氏は8回、石破氏は10回を数える。
 
 ただ、3人がこれまでに務めた党の要職を比べてみると、岸田氏が国対委員長なのに対し、石破氏は幹事長、稲田氏は政調会長。岸田氏だけが党三役(幹事長・政調会長・総務会長)を経験していない。
 
 その上、稲田氏が今回の内閣改造・党役員人事で重要閣僚の一つとされる防衛相に就任したものだから、岸田派議員は「首相は稲田氏に箔を付けて『ポスト安倍』レースに参加させる気だ」と焦りを感じている。
 
 岸田氏が周囲からの再三の要請に反して外相にとどまってきたのは「首相からの禅譲狙い」との見方が根強かった。だが、稲田氏が岸田、石破両氏と並んで「ポスト安倍」レースに参戦するなら、首相により近い稲田氏のほうが「安倍路線」の継承者にふさわしいということになる。逆に「反安倍路線」が求められれば、次期首相の最右翼に石破氏が躍り出るだろう。
 
 そう考えてみると、岸田氏の立ち位置は石破氏と稲田氏の中間にあって何とも分かりにくい。パフォーマンスを好まない真面目な性格が影響してか、全国的な知名度も両者に後れを取っており、「ポスト安倍」レースで埋没する可能性もある。
 
 一方で、「外相留任は最善の選択だった」と見る向きもある。
 
 岸田派名誉会長の古賀誠元幹事長は8日のBS日テレ番組で「与えられた責務の中で一つずつ実績を積み上げていって、『ポスト安倍』に照準を合わせるやり方だ」と解説。次期首相候補の対応が分かれたことには「どちらがいいという問題ではない。一人一人のそれぞれの戦力と個性の違いだろう」と分析した。
 
 岸田氏も3日夜の記者会見で「人事の過程について何か申し上げることは適切ではない」と閣内残留の理由への言及を避ける一方、「結論として今回入閣することになった。その責任はしっかり果たさなくてはならないし、その責任を果たす中でしっかりと評価される」と述べている。
 
 このほか、「石破氏と同時に閣外に出れば『岸田氏vs石破氏』のガチンコ対決の構図になる。知名度で先行されている岸田氏には不利だ」との見方もある。
 
 岸田氏の外相在任期間は平成に入ってから最長となり、8月下旬には首相の父で歴代3位の安倍晋太郎元外相の1334日に並ぶ見通し。元慰安婦問題に関する日韓合意やオバマ米大統領の広島訪問などを通じ、外相としての存在感を国内外で高めてきたが、対ロシア外交でも貢献が期待されている。
 
 政治的野心を見せぬ岸田氏の思惑はどこにあるのか-。ひとまずは年内に予定されているプーチン大統領の来日でさらなる実績を積み重ねることが、外相としても「ポスト安倍」候補としても重要な試練となりそうだ。(政治部 豊田真由美)
 
 
これ『「男を下げた」「最善の選択」岸田外相の留任に賛否両論、派閥内では稲田防衛相への警戒感も…』と題した産経デジタルiza 8月17日1232の記事である。
 

 長期政権後の権力は決して禅譲は期待してはならない。これは政治史に燦然と輝く不文律である。権力は奪うものである。戦後の佐藤栄作内閣後の田中角栄福田赳夫内閣後の大平正芳中曽根康弘内閣後の竹下登、その間禅譲らしきと言うか消去法的派閥事情において、鈴木善幸内閣や宮澤喜一内閣等があったが、共に当時の宏池会の会長だった。宏池会と言えば政策に明るいが政争に暗いと評され、「公家集団」と揶揄されることもしばしばみられるし、戦後の池田の退陣・死去後は前尾繁三郎が派閥を継承したが、佐藤四選を許した前尾に飽き足りない当時の田中六助・田沢吉郎塩崎潤ら若手議員は大平正芳を担いで、前尾を会長から下ろした(大平クーデター)と言う過去があった。何かやはり岸田さんもこの宏池会「公家集団」のDNAを引き継いでいるとみられる。今のままで行けば安倍晋三首相の親御故安倍晋太郎さんの二の舞か。