農業TPP問題、今までの姑息な癌治療薬療法で済まされた為か

 私は今回の我国の農業TPP問題は、病気に例えれば、病巣を摘出する大手術を回避して来た問題を先送りして、現在どうしようもなくなって泡を食ってるように思える。これ全て自業自得の結果である事に誰も気付いていない事である。実に滑稽な話である。特にそれらの責任を痛切に感じなければならない自民党と立法機関の国会議員の先生方面々は、まるで他人事の様である。
 
 私は今日まで、その農業と公共事業を相手にして来た人間である。
 自民党55年体制政権より、途中のバブルと最高の建設投資を含め右肩上がりの経済を生きて来た者である。
 
 私のところは東北の、小さな農業と公共事業に依存した小さな小都市であった。それが小泉純一郎竹中平蔵最悪政権以来の小泉構造改革規制緩和政策の、「出来る事は民間に」の小さな政府・新自由主義の政策により、長いデフレ不況に陥ったお陰で、我々公共に依存する仲間達は皆、自殺や破産を招き、ほぼ、淘汰され尽くされてしまった。その影響で、地方小都市の中心街がシャッター通りと化してしまった。全てがそのせいとは言わないが、少なくともその影響大であることは紛れも無い事実である。
 
 我々の従事する公共事業依存業界は、この日本の成長と共に生きて来た。これ全て農業と表裏一体で行われて来たのである。
 
 当時は余りにも仕事があり過ぎて、首では無く目が回らずにいた。今ではウソのようなホントの話である。官公庁より入札の依頼があると、誰もその入札に参加しないで欠席するのである。何故か余りにも工事が立てこみ、落札しても完成出来る余力が無いからである。本当に今にして思えば夢の様な話であった。だから我々の業界は直接その仕事に携わる作業員が不足するのである。そうなると、その作業員を何処から確保する?。そうなのである、兼業農家の働き手の農業従事者を集めるしかないのである。当時より日本経済はホワイトカラーの時代が真っ盛りで、必然作業員不足であった。大卒のブルーカラーはゼネコンか大手の製造系会社に流れ、現場で働く者が居なくなってしまったのである。政府も自ずと黙認するようになった。その歪が現在出てしまっているとも言って良い。
 
 当時から我々の業界に従事する作業員の株が上がり完全に作業員の売り手市場となってしまっていた。そこからである、建設作業員の手間が設計金額20,000円/日・人を超えたのである。そしてそれがこの頃より現在の大都市東京を擁する、関東圏の建設作業を下支えし、現在に至っているし、冬ともなれば、出稼ぎと称し東北の兼業農家が東北地域経済の一端を支えているのも事実である。 そうして、同じ土に塗れるんだったら農業より建設作業員手間の方がとなってしまったのであろう。
 
 国会の先生方は、票がほしいものだから、農業振興と称し、こぞって建設投資に走ったのである。農業政策等屁でもなくなったのである。その時に、真剣に農業に賭けようとしていた専業農家の方々が一番置き去りにされ迷惑を被ったのである。今農業の自給率云々と偉そうに話してる議員の先生方ほど、当時その片棒を担いでいたのである。こうなれば俗に言う、市場原理が働き、兼業農家の若い農業者従事者達は、その政策に惑わされ、農業意欲を失い、驕り高ぶった結果が現在の姿なのである。その一部始終を見てきた私は、とても今TPP参加に反対とは声高らかに言えないのである。別の意味を持った自業自得では無いかと言ったら叱られるであろうか。本当に私にとっては苦しい選択に思えるのである。
 
 この農業過保護(私はずーっとそう思ってきた)を見れば、簡単に言えばスーパーに食料を買いに行く前に、我々は既に関税に値する価格を払っている事にもなるのである。
 
 かの竹中平蔵に言わせれば、それもマーケットの原理だからしょうがないと言うかも知れないが、私はこのTPPによって守られるべきは、現在本当に農業をやりたくて、農業に命を掛けている専業農家の皆さんであると思っている。今までの農業政策を誤った自民党と政府の責任を、糾弾しなくてはならないのではないか。これが今の私の正直なTPPに対する気持ちである。