女優沢口靖子の演技下手さ加減がNHK連ドラの子役を視る度思う

 法医研究員・榊マリコが様々な難事件を解決するドラマ「科捜研の女」。1999年に第1シリーズがスタートして以来、今なお続く長寿番組だ。主演の沢口靖子に、これまでの歩み、そして新シリーズにかける思いを聞いた。AERA2022年10月10-17日合併号の記事を紹介する。

 

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──現行の連続ドラマ最長シリーズとして記録を更新し続けている「科捜研の女」。10月18日からスタートする新シリーズのテーマは、“原点回帰”だ。

 

沢口靖子(以下、沢口):「科捜研の女」の原点は、科学で事件を解明するだけではなく、人間そのものが丁寧に描かれているところにあると思います。罪を犯す人の愚かさ、未熟さ、弱さ、そして人間の愛しさ。皆さん、そこを魅力と感じてくださっているのかなと。

 

──およそ四半世紀にわたり、沢口靖子が共に生きてきたのが、主人公である法医研究員・榊マリコ。長い年月の中でキャラクターはどのように変化し、沢口はそれをどう受け止めてきたのだろうか。

 

沢口:最初の頃のマリコは「科学は嘘(うそ)をつかない」が口癖の、科学を100%信じている人物でした。それが、殉職した小林稔侍さん演じる木場刑事から「科学だけではなく人を見なさい」と教わり、人の心を優しく見つめる女性に成長してきたと思います。

 

 私は比較的几帳面(きちょうめん)で慎重派なのに対して、マリコは片付けが苦手。そして猫のようにマイペースで周りの人を巻き込むタイプの人。でも、マリコの前向きで諦めない精神は私も似ているところがあると思います。

 

■役と共に年齢を重ねる

 

──「科学で人を助けたい」という信念にまっすぐなマリコの姿は、社会的な圧力や人間関係から自由に生きるのが難しい人にとって、時に眩(まぶ)しく映る。

 

沢口:大事なのは、それが決して自分の利益のためではないところなんだと思います。だから周囲の人の気持ちも動く。新シリーズに登場するのは、マリコと同じ科学者でありながら少し視点が異なる方たち。みんな科学を愛しているけど、視点の違いからぶつかり合ったり、マリコの気持ちを揺さぶったりする。科学の先にある何を大事にしているのか、そこに新シリーズの面白さがあると思います。

 

──自分も年を重ねながら、同じ役を演じ続ける。それは、限られた俳優にしか経験できないことだ。マリコを演じることは沢口にどんな喜びを与え、一方で難しさを感じさせているのか。

 

沢口:役と共に年齢を重ねて成長していける喜びはあります。「以前ならこういうことは言わなかった」というセリフを発見した時に特に感じます。

 

 難しさを言いますと、やはりシリーズを重ねるごとに科学も進歩していて、この「科捜研の女」というドラマも毎年進化を続けていて、両方のハードルが高くなっている。そこですね。

 

 毎年、台本をいただくと新しい課題を与えられている感じがします。セリフに専門用語が多いのですが、それをなるべく自分のものにして滑らかに言えるよう、反復して体に馴染(なじ)ませてから現場に臨みたい。私の課題への取り組み方はそれです。なので、撮影が始まったらもうお休みはない感じ(笑)。その中でもなるべく体を動かして、睡眠時間も確保しながら、シーズンをなんとか乗り切ってきました。

 

──「忘れられない回はありますか?」と尋ねると、2013年の年末に放送された「科捜研の女スペシャル」のあるシーンを挙げた。それは、沢口の中のマリコが大きく爆発した瞬間でもあった。

 

■土門は頼もしい相棒

 

沢口:マリコが辞表を提出することになった回ですね。父親であり監察官でもある小野武彦さんに辞表を渡す場面。本番前のテストの時に感極まって声を上げて泣いたら、武彦さんも泣いてしまわれて。微妙に親子っぽい会話もそこにあり、心が震えてしまいました。マリコにとって辞表を提出する、科学と縁を切るっていうのはすごく大きいことですし、お父さんもそれは分かっていて……。親子の葛藤がありました。

 

──内藤剛志が演じる土門薫刑事とマリコとの信頼関係も、このドラマには欠かせない要素だ。ファンからは“どもマリ”と呼ばれ愛されてきた。

 

沢口:土門さんは何度も危機的な状況に遭っている方(笑)。忘れられないのは、土門さんと一緒に犯人がいるであろう小屋に駆けつけたら、小屋がバーンと爆発して、その飛び散る破片を土門さんが体で受け止めてマリコを庇(かば)ったシーン。土門さんは、言葉遣いは乱暴で粗野ですが、そういった男気のある方です。頼もしい、マリコにとっての相棒なんです。

 

──科学は日々進歩し、シリーズを追うごとに番組の質も向上。その分、視聴者の期待値も高くなっていく。だが沢口は「それをプレッシャーに感じることはないです」と明るく話す。その表情は、まるでマリコのようだ。

 

沢口:今回こういう課題が与えられたということは、これができると期待してくださってるからだといつも前向きに受け止めていて。その辺りはマリコと同じですね(笑)。私も比較的ポジティブな性格ですけれど、やっぱりマリコの影響を受けていると思います。

 

■「まだ50%くらい」

 

──そんな沢口には、俳優人生の中でずっと大切にしてきたポリシーがある。

 

沢口:脚本家の書かれた台本の精神までを読み込んで表現したい、という気持ちは今も持ち続けています。何度も何度も脚本を読むことで見えてくることもありますし、昨日わからなかったことが今日読んだら見えてくることもある。よっぽどわからなければスタッフに「これはどういう意味でしょうか?」と伺います。とにかく、全部理解した上で入りたいんですよ、現場に。まだまだですけれど。

 

──高い理想に向かって、俳優の道を歩み続けてきた沢口。今は理想に対してどのくらいまで到達していると思うか?と問うと、「まだ50%くらい」と笑った。

 

沢口:力業ができないので(笑)。私は本当にそういう力業ができないタイプだった。そこは短所であり長所なのかもしれませんね。不器用なところが。器用にできるタイプじゃないから、細かな作業が必要になってくる。「現場で何とかなる!」というふうにはなかなかなれません。

 

──取材に同席したドラマスタッフが後から教えてくれた。沢口は通常の主演俳優と比べて何十倍も準備に時間をかけていること。撮影で使う実験器具には事前に必ず触れていること。

 

「セリフ量も尋常じゃないので、一体いつ寝ていらっしゃるんだろうと思います」

 

 真面目でひたむきなマリコと、表に見せない努力や情熱を抱えた沢口がここでも静かに重なった。

 

沢口:マリコの言葉にしたいんです。マリコの言葉にしたいし、マリコの動きでありたい。全ては本当に榊マリコでいるために。

 

(構成/ライター・西澤千央)

 

AERA 2022年10月10-17日合併号

 

 

これ『沢口靖子科捜研の女」新シリーズへの思い 「全ては榊マリコでいるために」』と題したAERAdot.の2022/10/17 11:30の配信記事だ。

 

 

1985年度上半期に放送されたNHK連続テレビ小説澪つくし』のヒロインが事実上の女優デビューと思われるが、その時以前からNHK連続テレビ小説を視てる者としてはこの人本当に俳優務まるのかと思える程演技が下手だった。30年以上たった今でも本当に演技は下手であり、あの大きな目で1点を見つめる様は今でも変わっていない。それに比べいつも思う事は、NHK連続テレビ小説に出て来る子役の上手さである。今の「舞いあがれっ!」の主人公岩倉舞の子役浅田芭路ちゃんが好演してるのを見ると尚心配する心がもたげる。