先日若い男に誤送金した山口県阿武町 手ごわい相手でなくて幸運だった?

 国の給付金4630万円を誤って一人の町民に送金してしまった山口県阿武町に、日本中からの注目が集まっている。なぜ町は、ミスに気づきながら、“ネコババ行為”を許してしまったのか。カネはどこに消え、その間、銀行はどうしていたのか――。副町長を直撃した。

 

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山口銀行の職員が気づいた

 コンビニエンスストアが一軒もない町――。日本海に面し、山に囲まれた人口約3000人の阿武町は、自然豊かな暮らしをいまも守り続けている。長閑な町を騒然とさせる事件が起きたのは、4月8日のことである。

 

「新型コロナで生活に困窮する世帯を対象とした国の給付金10万円を、町民463人に振り込むはずが、そのうちの1人の口座に、463人分の総額4630万円を二重に振り込んでしまったのです。その町民のもとには、正規にもらえる10万円も加え、4640万円が振り込まれたことになります」

 

 こう語るのは、中野貴夫副町長である。

 

 当該の町民をX氏として、話を聞いていこう。まず、町は指定銀行である山口銀行阿武支店に振込依頼書を渡した。その後、山口銀行が、各金融機関に散らばった町民の指定口座に振り込む。X氏への誤送金に気づいたのは、山口銀行阿武支店の職員で、すでに振込処理が終わった後だった。

 

本人が来ないとどうにもならない

「たまたま職員が書類を見ていて気づいたとのことでした。すぐに『これは間違いではないか』と町に連絡をくれたので、我々も早く認知は出来ました」

 

 公金が振り込まれたX氏の口座は山口銀行ではなく、別の金融機関・Y銀行(註:銀行とは限らないが、便宜上、こう表記する)に開設されている口座。すぐに町や山口銀行からY銀行に連絡が行ったが、「X氏に直接、来店してもらって組戻し手続きをしてもらいたい」との返答だった。

 

「それから私たちはX氏の自宅などを訪問したりして、再三にわっって、組戻しのお願いを続けました。当初、X氏は『応じる』と話していたのですが、いくら待っても一向に動いてくれない。並行してY銀行に対して、『口座を凍結したり、差し押さえはできないか』という相談も当然しています。ただ、Y銀行は『X氏本人による組戻し依頼がない限り、こちらとしてはどうともし難い』と言う。もちろん、事情は理解してくれてはいたのですが、口座の持ち主に無断で、対処が出来ない立場なのです」

 

今も口座の状態は不明

 結局、21日に職員がX氏と3回目の対面をした時、「もうすでに入金されたお金は動かしている」「もう元には戻せない」「罪は償います」との告白を受けたのであった。実際、Y銀行の口座から、いくら、どのように動いたかは、「今もまったくわかりません。一銭もないのか、一部残っているのかも含めて。もちろん、Y銀行さんはご存知だと思うのですが、それも守秘義務などの都合で教えてもらえておりません」

 

 X氏がこの短期間で豪遊して、カネを使い果たしたとは考えにくい。借金返済に回したと考えるのが自然で、町の職員も最後に会った際に、本人に問いただしたというが、そこは否定したという。X氏は、町が把握している限り、税金を滞納している人物ではないという。

 

 2週間もの間、町はX氏に不信感を抱きつつも手をこまねいていたわけだが、裁判所を使って、差し押さえの仮処分に動くなどの強硬手段は考えなかったのか。

 

「当初から弁護士に相談のうえ動いていましたが、そういう話にはなりませんでした。ただ、Y銀行には事情を説明した公文書を送付するなどの対応は行っています」

 

命の心配

 現在、町は民事と刑事、双方での対応を考えており、すでに警察は捜査を開始している。

「窃盗罪、詐欺罪、電子計算機使用詐欺罪などの罪状が想定されるようですが、どのような罪で刑事罰を問えるか否かは、はっきりしていません。おかしな話ではあるのですが、現状において、X氏は警察に出頭しても逮捕されません」

 

 阿武町が振込依頼書を渡す際に使用したのが、「フロッピーディスク」という昭和時代に重宝されたものだったことも大きく報道されたが、実は阿武町ではなく、山口銀行の都合だという。

 

「どうやらCD -ROMなどより処理が早くて、使い勝手がいいようなのです。ただ、フロッピーディスクが悪かったから事件が起きたわけではまったくありません。人為的なミスが発端です」

 

 と、副町長はフロッピーディスクを”庇う”。担当した職員が、正しい情報が入ったフロッピーディスクと、本来出す必要のなかった誤記載がある紙の振込依頼書を銀行に持っていってしまったため、二重払いが起きたとのことだが、時代錯誤なツールに原因はなかったのだろうか。

 

 気になるのは、うっかりミスをしてしまった職員であるが、大変な落ち込みようだという。

 

「食事も喉が通らない状態で、周囲は命の心配をしているくらいです。ただし、発端が職員のミスであったとしても、確認体制ができていなかったなど組織の問題であり、個人が責任を負う話ではありません。本当に信じられないようなことが重なって、こんなことになってしまいました。どうして、という思いでいっぱいです」

 

 副町長はこう言って、ため息を漏らすのであった。

 

デイリー新潮編集部

 

 

これ『山口県阿武町「4630万円誤送金騒動」で副町長を直撃!「フロッピーディスクは悪くない」「ミスした職員は食事も喉が通らない状態」』と題したデイリー新潮の事件が起きた直後の古い記事で2022年5月3日 10時1分の記事である。

 

 

現在はあらかた返済して戻っているから実害はそんなにないだろうが、この誤送金の顛末には役所の馴れと慢性意識があちこちに見受けられる。またこの当事者である役所の職員や送金を受けた本人も常人にほど遠い。役人と役所では事が起こったらまず最初に取るべき行為は予防行為として金であれば資産の差し押さえであろうが瞬時にやってなかった事が事を大きくしている。また不思議なのは送金を受けたこの若い男の行動である。普通振り込みがあれば一定金額以上であれば、その時点で連絡を受け知ってた筈であり、間違いである事は知ってたと思うし、確かめてそれなりの対応をする筈である。この男はそれをしなかったと言う事は常人としての知識もなかったのか? 私的に見れば完全犯罪をやれるくらいの能力もなかったと言う事だろう。これがもし法律の明るいヤツだったら、まんまとこの町がやられ送金額の損失を受けただろう事は間違いなかったろうと思う。手間暇はかかったろうがケガの功名と言ったところか。

役人や役所と言うところは事件が起きる度に、当事者が雁首下げて必ずと言って良いほど「二度とこのような事は起こさない」と詫びるのが常だが、必ずやまた起こるし起こすのが通例である。恐らく真の申し訳なさの心が無いからであろう。だから私的には役人と言う人種大嫌いである。