北朝鮮の金与正(キム・ヨジョン)朝鮮労働党第一副部長が3日前に予告していた開城工業団地内の南北共同連絡事務所の爆破強行は、北朝鮮との対話を希求する文在寅政権の韓国に大きな衝撃を与えた。
連絡事務所は、2018年4月の南北首脳会談での板門店宣言に基づき、同年9月に開設されたばかりの南北対話と和解を象徴する施設だ。韓国の国家予算180億ウォン(約15億8000万円)が投入されたが、北朝鮮はあっけなく破壊してしまった。
それどころか、南北軍事合意(2018年)の破棄を宣言し、開城工業団地と金剛山観光地区と非武装地帯(DMZ)に軍部隊を展開するなどと予告し、引き続き強硬措置をとる構えだ。「ソウルを火の海にする」と脅した以前の発言を持ち出し、「火の海説が再浮上し得る」とまで主張した。
文在寅大統領の悲痛な呼びかけ
連絡事務所が爆破された6月16日は、ある記念日の翌日だった。2000年に韓国の金大中(キム・デジュン)大統領と北朝鮮の金正日(キム・ジョンイル)総書記(いずれも当時)が史上初の南北首脳会談で共同宣言に署名してから20年の記念日だ。
文在寅大統領はこの記念日に、大統領府の会議で「20周年を重い気持ちで迎えた」と述べつつも、次のように北朝鮮に呼び掛けていた。
「どうにか成し遂げた今までの成果を守り、育て上げていく。北朝鮮も過去の対決の時代に戻ろうとしてはいけない。ともに突破口を探すときだ」
その文氏の悲痛な呼びかけに対する答えが、非情にもあの爆破だったのだ。
北はなぜ苛立つのか?
今回、北朝鮮が爆破の理由に挙げているのが、脱北者団体が軍事境界線付近で散布した「金正恩氏を非難したビラ」だ。金与正氏は6月4日の談話で、このビラについて韓国を猛非難し、現在も続いている。
南北首脳が2018年4月に合意した板門店宣言には「軍事境界線一帯での宣伝放送やビラ散布などあらゆる敵対行為の中止」という項目が盛り込まれている。この合意を韓国側が守っていないという不満だ。だが、北朝鮮が「最高尊厳(金正恩氏)」への冒涜とみなすビラなどの散布は、2003年頃から続いているもので、板門店宣言後も同様だ。なにも最近始まったものではない。
北朝鮮の怒りは当然ながら、それ以外にある。国連や米国などによる対北経済制裁が継続していることだ。米朝の仲介役を自任する文氏とともに2018年6月に初の米朝首脳会談を行ったのに、その後何の成果も出ていないのは、「韓国側の約束不履行」というわけだ。
いま北朝鮮経済は、制裁により疲弊しきっている。その上、韓国メディアによれば、新型コロナウイルスの影響で中朝国境も封鎖されるなどコロナ対策の余波もあって、平壌市民にも不満が燻っているという。北朝鮮が今、相当困っていることに間違いはなさそうだ。
強烈なメッセージに衝撃
連絡事務所の爆破という“八つ当たり”を受けた文政権の動揺は収まっていない。その後も、対話を呼びかけてきた文氏にとっては“屈辱”以外の何物でもない事態が続いているからだ。特に衝撃を受けているのは、与正氏から発せられるメッセージの強烈さだ。
文氏は2018年2月に韓国で開催された平昌冬季五輪の開幕式に金与正氏を招いた。また韓国大統領府にも招待し、丁重にもてなしもした。金与正氏は、この年に板門店と平壌で行われた南北首脳会談にも姿を見せ、笑顔を振りまいていた姿が、文氏の目にも焼き付いているはずだ。
しかし、連絡事務所が爆破された翌日の6月17日にも、金与正氏は談話を発表した。題して「鉄面皮な口車を聞くと吐き気を催す」。一言で表現すれば文氏への罵詈雑言である。
金与正氏の談話は、爆破前日に出された文氏による南北共同宣言20周年のビデオメッセージを非難したもので、まず、「その内容を聞くと嫌悪感を禁じ得ない」とした上で、「水を飲んで胃もたれするような言いぐさのような鉄面皮で図々しい内容ばかりくどくど並べ立てた」と言いたい放題だ。
爆破翌日に口にした「金与正の毒舌語録」
さらに、文氏を「南朝鮮当局者」「大統領」と呼んで、畳みかけるように非難した。
「南朝鮮当局者の演説を聞くと、我知らず吐き気を催した」
「南朝鮮当局者は何を誤ったのかを認めることもせず、目クソほどの反省もない」
「図々しさと醜悪さが南朝鮮を代表する最高授権者の演説に垣間見えた」
「漠然とした期待と残念さごときを吐露するのが『国家元首』が取る姿勢と立場なのか」
「一言一言に鉄面皮さと図々しさが不快な臭気とともに感じられる詭弁というべき」
「問題はドブに落ちてもがいているこの瞬間まで、南朝鮮当局者が外部勢力のズボンの股を放すことができない(筆者注:米国から離れられない)と言ってだらしない姿を見せていることである」
「表面上、正常に見える人が精神はおかしくなっているのではないかと心配になる」
以上が、娘ほど年の違う与正氏から、文在寅大統領に向けて発せられた暴言である。1つの談話に、これほどたくさんの汚い言葉をよく入れられたものだ。文大統領にとっては、恩をアダで返されたようなものだろう。
それまで、北朝鮮への刺激を避けていた韓国大統領府も、さすがにこの談話は見過ごせなかった。
韓国大統領府は金与正氏の談話について同日に即刻、「非常に無礼な語調で、あしざまにけなし、非常識だ」と反発。「南北首脳間の信頼を根本的に損なうもので、北の分別をわきまえない言動にこれ以上我慢しないことを明白に警告する」と表明した。さらに、連絡事務所の爆破などについて「すべての事態の結果は全面的に北側が責任を負わねばならない」「基本的な礼儀を守るように」と警告した。
こうした韓国大統領府の反発をあざ笑うかのように、北朝鮮は国営メディアを通してその後も連日、韓国への非難や罵倒を繰り返し、次の挑発行為をちらつかせている。
簡潔に言えば、南北和解・協力にこだわり「平和と共存のための努力を妨げてはならない」と訴えた文氏は、北朝鮮から完全に足元を見られているのだ。それを北朝鮮は今回、行動で示しただけだ。
この期に及んで対話に期待する文大統領
なぜ、北朝鮮はここまで文在寅大統領に悪罵の数々を投げつけられるのだろうか。それは、なめられ、なじられ、北朝鮮から完全に面子をつぶされた文氏が、それでも北朝鮮との対話は諦めないと思っているからだ。
文氏は金与正談話が発表された17日には早速、外交関係閣僚経験者との懇談会で「忍耐し、対話によって問題を解決したい」と語ったという。
北朝鮮が挑発を連発し、2000年の6・15南北共同宣言以前の緊張状態に戻そうとしているこの期に及んでも、我慢して北朝鮮と対話をするのだという。文氏には、これまでの対北政策を放棄し方針を変える気はない。
もちろん、韓国国内では保守系野党から「文政権の対北政策が間違っていたことが証明された」とし、文氏に方針の変換を求める声が強まっている。左派の与党内部からさえも「政府の政策が間違っていた」と自省する意見が出ている。一般国民は、北朝鮮の暴挙に批判的なかたわら、北朝鮮に今回も裏切られた文政権を冷ややかに見ているようだ。
それでも文氏は北朝鮮との対話を諦めない。文氏にとって幸い、4月の総選挙で左派系与党「共に民主党」が歴史的な圧勝を収めたことで、どうにか政権運営を維持できそうな状況にある。
北朝鮮の挑発にも関わらず、脱北者団体は朝鮮戦争勃発70年に当たる6月25日に、北朝鮮に向け金正恩政権を批判するビラを散布する計画だ。韓国政府はこの散布を阻止し、法的な対処方針も表明した。韓国はまた弱腰を見せてしまった。
こうした韓国内部の状況を北朝鮮が注視している。その上で、韓国に対し、次の一手を下すタイミングを計っている。文政権が北朝鮮の主張を聞き入れる限り、文在寅大統領は北朝鮮に利用され続けることになるだろう。
名村隆寛(産経新聞ソウル支局長)/Webオリジナル(特集班)
これ「南朝鮮はズボンの股を放すことができない」爆破後に"北の毒舌姫"金与正が吐いた暴言の意味」と題した文春オンライン6/21(日) 6:01の配信記事である。
民族としての矜持なのかも知れないが、高慢で人間としての知性をも失って他人の気持ちをも推し量る事さえできない金与正と言う小娘。あの刈り上げバカ将軍と合わせて、決して対話では解決できない輩と言え、人道的と言う言葉等無用である。私的には戦争は嫌いだしやってはいけないが、こう言う輩にこそ武力で屈服させるしかないだろう。この気違い兄妹を抹殺する事が北朝鮮と言う国を守る事になるからだ。