黒川弘務・東京高検検事長の辞職を受け、5月22日の国会では、安倍政権が今国会の成立を見送った検察庁法改正案への批判が相次いだ。答弁に立った安倍晋三首相は「新型コロナウイルスによる雇用環境悪化」などを理由に曰くつきの検察庁法改正案を含む国家公務員法改正関連法案の見直しをついに表明した。自民党幹部はこう危惧する。
「黒川氏の麻雀問題は、国会で尾を引きそうだよ。論点が多すぎる。緊急事態宣言下での賭け麻雀を認めたこと。相手は記者で、おまけにマスコミの車で送迎してもらっていること。こういう人物を法解釈の変更まで持ち出し、閣議決定で定年延長した。その閣議決定は違法の可能性がある、と国会でどれだけ突っ込まれるかだね」
さらに安倍政権にとってやっかいなのは、河井克行前法相夫妻への捜査が目前に迫っていることだ。検察は昨年7月の参院選広島選挙区で初当選した自民党の河井案里氏と夫の克行前法相が広島県内の地方議員ら100人に2千万円を超す現金を配った公選法違反(買収)の疑いで立件する方向で最終調整に入っている。
「安倍官邸が仕掛けた黒川氏の定年延長でメンツをつぶされた稲田検事総長は国会中に逮捕許諾請求を取ってでもやりたいと言っている。河井夫妻の逮捕はやむを得ないでしょう。克行氏は参院選当時、首相補佐官で安倍首相と菅官房長官の側近中の側近だった。河井夫妻がばら撒いた現金の原資は自民党本部が工面した1億5千万円の選挙資金。通常の10倍以上の額だった。捜査のメスが入ることで安倍政権にとってさらに打撃になる」(捜査関係者)
自民党総裁の任期が来年秋に迫り、「もはや次はない」と安倍首相の求心力低下が著しくなっているという。前出の自民党幹部が語る。
「河井夫妻への強制捜査は安倍首相、菅官房長官も内心はビクビクしていると思います。もう黒川さんもアテにできない。河井夫妻の疑惑が発覚して以降、安倍首相と菅官房長官はうまくいっていない。黒川問題、新型コロナウイルス問題で国会が紛糾しても、安倍首相の盾になって庇う人も少ない。森法相はまったく頼りになりません」
安倍官邸はこれまで首相のために頑張った官僚を人事で処遇することで、権力を掌握してきたとされる。
「黒川氏もその論功行賞で検事総長にしたかったんじゃないか。だが、そのパターンを強行しようとして、大失敗したということ。最高裁判所の判事とか、公取の委員長とか黒川氏にふさわしいポストはいくらでもあった。だが、安倍官邸が検察を抑えたいという下心があり、強引に閣議決定したことで、墓穴を掘る結果となった。安倍首相もすっかり弱気になって、周囲には『もともと菅さんが連れてきたんじゃないのか。俺ばかり批判されて…』などと愚痴っているそうだ」(前出の自民党幹部)
今国会で先送りされた検察庁法改正案を含む国家公務員法改正も廃案に追い込まれる可能性が高い。
「安倍首相の周囲ではすき間風が吹いていますよ。わずかに、来年の東京五輪が希望ですが、IOC(国際オリンピック委員会)のバッハ会長が新型コロナウイルスの感染状況を10月時点で見極め、中止もありうると言っている。日本は大丈夫でも、冬になる南米、オーストラリアなどの状況いかんでは、中止になるかもしれません。そうなると、もう安倍首相もモチベーションが保てないんじゃないか?」(同前)
安倍政権の落日は確実に迫っているようだ。
(本誌取材班)
これ『“守護神”黒川氏の失脚、河井前法相夫妻の捜査で迫る安倍首相の落日「批判ばかりされる」と弱気も』と題した2020.5.23 16:30週刊朝日の記事である。
余りにも安倍政権は運が良かったと言えるが、世界にも日本のような民主国家でも独裁政権になればこうなる正に見本と言える結果と言えよう。安倍さんは幸運にも宰相を射止めたが、それを強引に担いだ菅義偉官房長官や甘利議員や下村議員たちの何でもやれるしやろうとした驕りがここに出たともいえる。
確かに1票でも過半数を上回れば総取りとなる現小選挙区並立制の選挙制度の欠陥とも言えるが、それを上手く利用して独裁政権にした安倍政権。だが神も最後には新型コロナウィルスと言う劇薬を与え、最後に安倍政権に反省を求めたと言えるし、見方を変えれば、今までの報いを受けたとも言えるだろう。
いづれにしても神は正義を見捨てていなかったと言えるだろう。