谷垣禎一・自民党幹事長を初めとして、ハト派は死んだのか

 ◇谷垣禎一自民党幹事長(69歳) 野党時に右傾化旗振り、見えぬ野心
 
 軽武装・経済優先の戦後日本の礎を築いた自民党の派閥「宏池会」のプリンスとして育った幹事長、谷垣禎一(69)。穏やかな話しぶり、柔和な笑顔……。ハト派、穏健路線の代表格とみられてきたが、いま、存在感は濃いとは言えない。タカ派色ログイン前の続きが強い「安倍一色」の党内に危機感を持ち、対抗軸になり得るはずなのだが。首相の安倍晋三を支えることに専念しているように見える。
 
 今年、安倍が出す予定の戦後70年の「談話」。与党のパートナー、公明党から事前調整を求める声が相次ぐ。「安倍色」が強く出ることへの不安があるからだ。だが、本来、公明党と重なる部分が多いであろう谷垣は記者会見で素っ気ない。「首相の置く有識者会議の議論をよく見ていく」
 
 プライドの高い安倍は誰にも口出しされたくないはず――。谷垣の姿勢に安倍への配慮がにじむ。本音では「戦後50年は節目だから談話は必要だ。60年は惰性で出したかもしれないが、70年に閣議決定してまで談話を出す必要があるのか」と感じている。だが、表では何も言わない。安倍が出すと言った以上、支えようと思っているのだ。
 
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 昨年9月の幹事長就任直後のこと。谷垣はかつて宏池会を率いた元首相の大平正芳の「楕円(だえん)の理論」を引き合いに語った。「円みたいに一つしか中心がないのは良くない。(中心が)二つでバランスがとれる。私が幹事長に任命されたのも楕円みたいにうまく回していけ、ということかと思う」。安倍の方針に異論が出にくい党内の雰囲気を変える意欲を示したようだった。
 
 ところが、谷垣はもう楕円の話をしない。次の総裁選で安倍と対決する意欲を示したかのように、マスコミで報じられたからだ。「本意でない」と引っ込めた。以来、音無しの構えだ。
 
 かつての自民党は、トップの判断に異議の声を上げることも日常茶飯事だった。改憲派護憲派、合理的な経済政策にこだわる政治家、利益誘導に力を入れる政治家。党内抗争もよんだが、国民の幅広い意見を吸い上げる包括政党としての活力になった。考え方の違う政治家が首相の座につくことは、疑似政権交代の側面もあった。
 
 9年前はまだ、そんな雰囲気が残っていた。2006年9月にあったポスト小泉を決める総裁選。安倍圧勝の下馬評のなか、谷垣も出馬した。谷垣が推薦人集めに困っていると、安倍が所属する森派から、こんな声すら上がった。「谷垣が出ないと最悪だ。安倍と麻生太郎では、違いが分からない。自民党はこんなものかと思われる」
 
 論争も激しかった。憲法解釈の変更による集団的自衛権の行使容認を求める安倍に、谷垣が「憲法改正で対応すべきだ」と批判。消費増税を求める谷垣に、安倍は「消費税を言うことが本当に正直か」。安倍が464票で圧勝したが、谷垣は目標の70票を超える102票を得た。谷垣は「安倍支持一色で染まっていくと党の将来は危ない」という票だと評した。
 
 自民党は今年で結党60年。大きな節目が、2009年の民主党への政権交代だ。野党に転落した自民党は、民主党政権との対決姿勢を鮮明にするため、右に寄る。それを率いたのが、皮肉にも野党自民党総裁・谷垣だった。
 
 子ども手当や高校無償化を「空疎なリベラルだ」と批判し、集団的自衛権の行使容認を求めた。自民党で最もリベラルと見られた谷垣が旗を振り、党のアイデンティティーは右へ右へと向かう。その流れを加速させているのが、安倍政権だ。
 
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 谷垣が右に振れたのは、野党の立場上、仕方なかったように映る。「最近の自民党イデオロギーが前面に出過ぎる。異なる意見にも、まあまあと一緒にやる寛容さが大事だ」。時折、周囲に漏らす言葉に、ハト派宏池会で育った苦悩がのぞく。
 
 「改革」という言葉を繰り返す安倍に、谷垣は保守本流の政治家として違和感も抱くが、首相を支える立場から口には出さない。安倍からみれば、谷垣が幹事長でいることは党の多様性のアピールになる。谷垣が安倍に寄り添うことに心を砕く現状では、谷垣は「安倍一色の党」の象徴のようだ。
 
 3月7日で70歳になる。文相を務めた父・専一が亡くなった71歳が近づいてきた。「どう人生を締めくくるか」が頭をよぎる。ポスト安倍の待望論も党内に残るが、「若い世代をどう育てるか」と語る姿からは、安倍と首相を争った9年前の野心はもう見えない。=敬称略(蔵前勝久)
 
 
これ『(政々流転)谷垣禎一自民党幹事長 「安倍一色」悩めるハト派』と題した朝日デジタル2220500分の報道記事である。
 
 
 私もこのページで、ハト派の谷垣さんの事書いたが、この記事を見ればしたたかと言うより、公家集団の宏池会と言う毛並みが随所に出てる。ちょうど一昔以上前の「加藤の乱」で自重を諭した性格が見える。どうしてこの集団と言うのは、こうも内に籠り権力を奪い取ろうしないのだろうかと思う。まっだからこそそれが公家集団と揶揄される因なのだろう。他人がとやかく言うものでもない。本人がそれで良いと思うのだから。でも思えば因縁か。自民党総裁になって総理になれなかったの、この人と元総裁の河野洋平さんであり、どちらも宏池会である。
 でも私はこの方々居るからこそ、いくらか自民の話も聞くのだが・・・・・・・・・。