フランス若手経済学者トマ・ピケティが来日し「アベノミクス」の弱点を斬る

 いま世界で最も刺激的、かつ注目される経済学者トマ・ピケティが、フランスからやってくる。弱冠43歳のパリ経済大学教授だ。彼の新著『21世紀の資本』の英語版は700ページを超す学術書にもかかわらず、たちまちアマゾンの総合売り上げランキング1位に躍り出た。現在までに世界十数か国で累計100万部を突破。昨年末に発売された日本語版も13万部に迫っている。
■ ピケティは1月29日に初来日
  そのピケティがいよいよ今週1月29日(木)に初来日を果たす。異例のベストセラーを背景にNHK番組『パリ白熱教室』などメディアへの露出は過熱しており、日本での講演はすべて予約満席の状態だ。はたして彼が日本で何を語るかを注目する人も多いだろう。
  東洋経済は2014年夏、パリ経済学校にある彼の研究室で単独インタビューを実施し、その模様は週刊東洋経済2014年7月26日号に大きく掲載した。一方、日本経済について語った部分については紙幅の制限からすべてを掲載しきれなかった。
  そこで、日本最大の課題である政府債務問題についてピケティが語った部分をここで再現する。ピケティはアベノミクスについて批判的な姿勢を明確にしている。それではやり取りをお届けしよう。
  ――日本は政府債務残高がGDP(国内総生産)の200%を超え、先進国で最悪の財政状況です。
  ピケティ 確かに日本の国家のバランスシートは資産と負債がほぼ同量になるまで悪化した。ただ、日本は公的資本(純資産)の減少分よりも、民間資本(純資産)の増加分がずっと大きい。これはどちらかと言えば、よいニュースだ。日本は欧州と同じで、政府は貧しいが、民間資本によって国全体の資本はかつてないほど豊かになっている。
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 国民所得に比べて民間資本がこれほど大きい国で解決策は何になるだろうか。私は日本も欧州と同様に、資本への課税を増やすことを提言する。国民の大半にとって労働所得は停滞している。一方で不動産、資産の高度な資本化が進んでいる。労働所得に対して減税、資本に対して増税するのは自然な解決策だろう。これはバブルを防ぐことにも役立つ。
■ イギリスと同じ轍を踏んではいけない
 ――反対に、すべきでないことは? 
  ピケティ たとえば公的債務の危機は過去にもあった。イギリスは19世紀に、今の日本と同様、GDPの200%の水準になったことがある。19世紀のイギリスは、歳出削減によって予算を黒字化させて公的債務を減らすという、オーソドックスなやり方でこの危機を乗り越えた。
  だが問題は、非常に時間がかかったということだ。解決には1世紀を要した。その間、イギリスは毎年GDPの1~2%の黒字を蓄積していき、自国の金利生活者にカネを返し続けた。結果、イギリスは教育への投資を減らしてしまった。これは、今の日本や欧州が「同じ轍を踏まないように」と考えさせる重要な教訓だと思う。
  ――日本はどちらかと言えば金融政策に頼りがちです。アベノミクスは資産バブルを誘発しています。
  ピケティ (アベノミクスのやり方)間違いだ。われわれは税務政策に比べ、金融政策に対してあまりに高い期待を持っている。日本にとっては、欧州や米国と同じように、金融政策は魅力的だろう。何十億円もの紙幣を印刷するのは簡単だからだ。
  税制を変えるとなると、計算表を作る作業が膨大で、富裕層の反対も受けるし、事態はより複雑になる。だが、税務対策が最も透明性が高い。紙幣を印刷しても、何らかの利子率を下げたりすると、特定のセクターがバブル化したり、必ずしも富ませるべきでない人を富ませることになったりする危険がある。(野村 明弘)

これ「ピケティが指摘するアベノミクスの弱点」と題した東洋経済オンライン 1月26日(月)4時30分配信記事である。

 的を得ている記事である。少なくとも経済に疎い我々でも理解できる内容であり、説得力も大である。特に最後の(アベノミクスのやり方)間違いだ。とした以下云々は正にその通りである。