「社会保障費」捻出の政府の<消費増税>集中点検会合は詭弁でありまやかしである

 来年4月に消費税率を8%に上げるかどうかの最終判断を前に、政府がさまざまな人から意見を聴く「消費税ヒアリング」が始まった。31日までの6日間で、各界の代表や経済専門家ら60人が消費増税への賛否などを語る。どんな意見が出て、最終判断にどう影響するのだろうか。▼1面参照
 米倉弘昌経団連会長「ちゃんと消費税を引き上げることが必要だ」
 山根香織・主婦連合会長「いま消費増税するのは、断固反対だ」
 「総論」となるヒアリング初日。経営者や労働組合、経済専門家、消費者代表ら7人の意見は割れた。
 米倉氏と古賀伸明・連合会長という財界・労働界のトップは賛成を表明した。
 大手企業を中心とする財界は、「(増税を先送りすれば)日本の財政に対する国際的な信認が失われ、株安・通貨安・債券安のトリプル安になるおそれがある」(米倉氏)と心配する。経団連は5月にまとめた提言でも「消費税率を10%まで引き上げることが不可欠」と主張した。
 労組が集まる連合は、昨年8月に消費増税法を成立させた民主党政権のころから賛成。社会保障の財源を確保するため、という理由だ。ただ、古賀氏はヒアリング後、消費増税といっしょに示すはずだった社会保障のあり方について「将来像がクリアになっていない」と言い、不満も示した。
 一方、消費者の立場で出席した主婦連の山根会長は「給料が上がらない状態で増税を強行すれば、貧困や格差が拡大する」として、反対を表明した。26日の7人では唯一、増税そのものに反対し、「暮らしの実態や生の声を受け止め、判断してほしい」と訴える。
 学者や経済専門家は、経済へのショックをどう和らげるかで意見が割れた。
 岩田一政・日本経済研究センター理事長(元日本銀行副総裁)は「毎年1%ずつの増税が望ましい」と主張する。一方、増田寛也・東大公共政策大学院客員教授(前岩手県知事)は予定通り増税したうえで「補正予算が必要」と訴えた。
 増税そのものに賛成か、反対か。来年4月に消費税率を8%に引き上げるべきか、先送りしたり増税幅を縮めたりすべきか。増税する場合にはどんな経済対策が必要か。初日に出た問題提起だけでもさまざまだ。安倍晋三首相の最終判断は簡単ではない。
 ■政権「丁寧な手続き」強調
 安倍政権としては異例の60人を対象にしたヒアリングを連日開くことで、国民に丁寧な手続きを踏んだことを示す狙いがある。甘利明経済財政相は26日、会合後の記者会見で、首相の胸の内について「慎重に判断し、一番いい道を選ぶことが自分の責務だという思いが非常に強い」と解説した。
 有識者へのヒアリングの実施は安倍首相の肝いりだ。内閣府はもともと、意見を聞く人数を十数人程度と想定していたが、首相はもっと増やすように指示。ただ、首相はヒアリングの賛否の数を判断に直結させるのではなく、あくまで自分で判断するという姿勢だ。
 消費税率は来年4月に今の5%から8%に引き上げられることが消費増税法で決まっている。税率の引き上げにあたっては「経済状況の好転」が条件だ。今月12日に発表された今年4~6月期の経済成長率がプラスだったタイミングで増税を決断するという選択もあったが、首相は自らがギリギリまで見極めたうえで最終判断することにした。しかし、その「副作用」として、考慮しなければならない要素が増えるというリスクを背負い込んだ。
 首相が決断を遅らせる間も、首相の経済ブレーンは増税に慎重な見解を積極的に発信している。内閣官房参与浜田宏一・米エール大名誉教授は26日、朝日新聞の取材に対し、増税の実施を1年先送りするとの案を示した。朝日新聞世論調査では、2015年10月に10%に上げることとあわせた「賛成」は43%。「反対」の49%より少ない。
 アベノミクス効果で上昇した株価も、米国の金融政策次第では、軟調になりかねないとの見方もある。時間をかけて増税を決断するとの首相の判断は裏目に出ないのか。首相は周辺にこう強調する。「私自身が納得できないとやらない」
 ■テーマ別に60人聴取
 ヒアリングは31日までの6日間、産業界や労働界、自治体、経済の専門家、消費者の代表など幅広い分野の60人が、「経済・金融」「国民生活・社会保障」などのテーマに分かれて意見を述べる。
 政府は、来年4月から消費税率を8%に引き上げることに「賛成」「反対」双方の立場の人を選んでいる。このため、ヒアリングで消費増税すべきかどうかの結論が出ることはない。
 たとえば、ヒアリングに参加する経済学者やエコノミストは賛否が分かれる。
 伊藤隆敏・東大院教授や清家篤慶応義塾長、土居丈朗・慶大教授らは財政再建を進め、年金・医療など社会保障を維持していくには、予定通り増税すべきだと訴えるとみられる。これに対し、首相に経済政策を助言している浜田宏一氏、本田悦朗静岡県立大学教授(いずれも内閣官房参与)らは慎重だ。本田氏は「デフレ脱却を最優先にすべきだ」と述べ、年1%ずつの緩やかな増税を主張する。
 ヒアリングでは、自治体、医療などの社会保障に関係する団体、中小企業などの業界団体の代表も意見を述べる。それぞれの立場で消費増税をどうみるかも注目される。
 ■こう考える! 消費税ヒアリング第1日・総論 増税への賛否と主な発言
 (「来年4月に消費税率を5%から8%に引き上げること」に、○は賛成、×は反対、―は無回答や態度保留など。会議後の取材などから)
 ・岩田一政 日本経済研究センター理事長
[×]経済へのショックを和らげるには、来年4月から毎年1%ずつ増税していくのが望ましい
 ・加藤淳子 東大院教授
[○](取材に対し、発言内容を明かさず)
 ・古賀伸明 連合会長
[○]社会保障の将来像、雇用の安定、増税で生まれる課題への対策、国会議員の定数削減の方向づけが必要
 ・古市憲寿 東大院博士課程
[○]若者や現役世代に目が向いていない。教育や社会保障など、人々が再生産できるようお金を使うべきだ
 ・増田寛也 東大公共政策大学院客員教授、前岩手県知事
[○]将来世代の負担回避がもっとも重要だ。「決められない政治」が日本のリスクと言われる。実行が必要だ
 ・山根香織 主婦連合会
[×]給料も上がらない今の状態で増税を強行すれば、貧困や格差が拡大すると思う
 ・米倉弘昌 経団連会長、住友化学会長
[○]企業も消費者も消費税の引き上げを前提に経済活動をしている。これが覆ると経済が非常に打撃を受ける
 ■ヒアリングの今後の予定(【 】内はその日のテーマ)
27日 【経済・金融(1)】浜田宏一・エール大名誉教授ら9人
28日 【国民生活・社会保障(1)】横倉義武・日本医師会長ら8人
    【産業】豊田章男日本自動車工業会長(トヨタ自動車社長)ら9人
29日 【地方・地域経済】古川康佐賀県知事ら9人
30日 【国民生活・社会保障(2)】白石興二郎日本新聞協会長(読売新聞グループ本社社長)ら9人
31日 【経済・金融(2)】国部毅・全国銀行協会長(三井住友銀行頭取)ら9人
 

これ「消費増税、識者から宿題 「社会保障は」「補正予算を」 ヒアリング初日は7人」と題した朝日新聞デジタルの記事である。
 

 思うに何度も言っているように、どんなに偉い人たちがどんなに議論しようとも、入りの問題だけを議論しても所詮は年々膨れ上がる給付に対応しきれないのは明らかである。いわゆる空論に過ぎない。どうして支出を洗い出し見直そうとはしないのか。現状がベストから出発しても何の意味も無いのである。どうしてこのお歴々、その現状のデータを出させてまずそれがベストかを議論しないのだろうか。これでは政府が如何にこの「社会保障費」の埋め合わせに消費増税を議論したかのようなパフォーマンスに過ぎないと言える。こんなの詭弁でありまやかしである。