アベノミクスは日本をダメにする?

 好決算ラッシュに沸く兜町に「ゴキブリ決算」という造語が生まれた。5期前はリーマン・ショック。その後、円高と大震災で赤字から脱却できなかったが、円安を追い風に「5期ぶり」に黒字に転換した企業のことだ。
 1ドル70円台の超円高に苦しんできた自動車業界にとって円安の効果は絶大だ。とくに国内生産車の輸出比率が高いメーカーの好業績が際立った。マツダは海外進出が遅れ国内生産の8割を輸出する。超円高で赤字が続いたが、円安で5期ぶりに黒字転換した。トヨタも同じく国内生産車の半分が輸出だが、連結営業利益を5期ぶりに1兆円の大台に乗せ、単体決算の営業利益の黒字も5期ぶり。今期、想定レート(1ドル=90円)が1円円安になる度に営業利益は400億円ずつ増える。
 ソニーも5期ぶりに最終黒字となった。米国本社ビルなどの不動産や子会社の株式を売り、株高で金融子会社の利益が増えたためだ。しかし主力のテレビ事業は9期連続の営業赤字。平井一夫社長は黒字にするという公約を果たせなかった。
 ソニーはドル建てでスマホなどの部品を調達。製造コストの低い海外で生産し、輸入販売している。1ドル=90円を超えると1円の円安で営業利益は30億円のマイナスになる。円安万々歳とはいえないのだ。
 東芝も円安で海外工場から逆輸入する液晶テレビやパソコン事業が打撃を受けた。1ドル=90円を超えると、1円の円安で営業利益は15億円目減りする。東芝の売上高の6兆円割れは、8期ぶりだ。
 家電量販店や牛丼チェーンのような“デフレの申し子”も円安で苦しい。素材の代表選手、新日鐵住金は旧新日鐵以来、最大の最終赤字に転落した。造船も不振だ。
 輸出企業は円安で舞い上がっているが、本業で収益改善した本物と、見せかけ組を峻別する必要がある。内需企業では個人消費の持ち直しを収益アップにつなげられるところと、ただ為替差益のマジックに酔っているところがある。スズキの鈴木修社長は「今の(為替の)水準が続くかどうか。あまり信じてもいけないし、疑ってもいけない」との至言を残した。
 円安は経営者の本気度を映す鏡である。
 

週刊文春に掲載された有森 隆氏(ジャーナリスト)の記事である。
 

 この記事から思う時、人間神代の昔から、額に汗せずに、このような濡れ手に粟的商法に染まれば、いづれ真のマーケット原理にはじき出されるは、必然となろう。要するに机上の紙切れ同然の為替の差益損での評価には、かなりのリスクが共存する。人間楽を覚えれば闘争心をも忘れてしまう。結果的にアベノミクスはギャンブル的要素を占め、本質的日本国的競争心さえも失うだろう。