なぜこんな馬鹿げたことがまかり通るのだろうか。第200臨時国会が12月9日に閉幕したが、もともと今国会が召集される前には、野党は「次は関電国会だ!」と息巻いていたはずである。実際、関西電力にまつわる金品受領問題は、国の電力政策の根幹、特に原子力発電にかかわり得るものだけに、深く追及するに値する可能性はあった。
それだけではない。国民民主党の森裕子議員が「自分の国会質問が漏洩した」と主張して追及チームまでつくったり、萩生田光一文部科学大臣の「身の丈発言」を追及しようとするなど、あたかも法案審議を度外視するかのごとく、政権への対決姿勢ばかり強めていた。
そんななか、11月8日の共産党・田村智子議員の参院予算委員会での質問をきっかけに、「桜を見る会」一色になって、召集前に挙がっていた争点はどこかに飛んでしまった。
田村議員の質問には、ポイントが2つあった。ひとつは、これまでの桜を見る会より規模が大きくなっており、税金が無駄に使われたのではないかという点。もうひとつは、桜を見る会が安倍晋三首相の後援会をもてなすために使われたのではないかという点である。公の目的で開催するべき桜を見る会を、首相が私物化したのではないかというわけだ。
この質問は、政治資金規正法などに引っかかる可能性を浮かび上がらせて、政権を動揺させるクリーンヒットとなった。あとからわかったのだが、共産党の機関紙「赤旗」がこの問題を追っており、共産党側でこの問題が安倍首相自身の責任を問い、安倍政権を揺さぶれると判断していた。一方、政権側はこれまでの恒例行事だからと甘く見ていた節がある。
この桜を見る会問題において注視すべき点は、ほかの野党が節操なく飛びついたことだ。
安倍首相の危機管理能力
この問題に対峙した安倍首相の処理は迅速なものだった。
田村議員の質問をきっかけに桜を見る会に対する批判が高まると、安倍首相は11月13日に翌年以降の同会の中止を決定。菅義偉官房長官は「人数や予算が拡大したこと」「招待の基準が曖昧であること」「決定のプロセスが不透明であること」の3点が中止の理由であると説明した。
先に非を認めて、相手に攻め込ませないことを意図したものだろう。野党がこの問題で「いける」と手応えをつかんだとたんの肩すかしになった。
11月20日に安倍首相の在任期間が2887日となり、桂太郎を抜き憲政史上最長となった。これまで森友問題や加計学園問題などいくつもの危機を乗り越えるなかで、危機管理能力が培われていたのだろう。野党がこの問題に集中することを察知して、手を打ったのだと考えられる。
それに対して、その後の野党の批判は論点が定まらず、参加者名簿をシュレッダーにかけて隠滅したとか、前夜祭のホテルの料金が適切ではないなど、桜を見る会そのものではなく、重箱の隅をつつくような批判に陥ったのは、この安倍首相による早期の中止判断が功を奏したからだろう。官邸が一枚上手だったといえる。
■盛り上がっているときだけ大きく報道
桜を見る会についての国会質問は、実は田村議員の前にも2回なされている。1度目は5月13日に共産党の宮本徹議員、2度目は10月15日に立憲民主党の初鹿明博議員である。しかも、宮本議員は、行政指導を受けていたジャパンライフ創業者の山口隆祥氏が、桜を見る会の招待状を勧誘に利用していたことにも、すでに言及している。
それなのに、このことをマスコミが大きく取り上げたのは、桜を見る会を野党が一致して争点にした今国会になってからなのである。しかも、マスコミがジャパンライフ問題を大きく取り上げると、野党はジャパンライフによるマルチ商法の被害者への聞き取り調査をして、さらにそれをマスコミが流すといったように、ちょっとした「お祭り騒ぎ」にしている。
だが、インターネット上では、ジャパンライフの元社員が公開したチラシに、問題を追及する側のマスコミ各社の大物たちの名前がずらっと並んでいることが発覚。そのあとは、ジャパンライフに関する問題はさほど報道されなくなった。
宮本議員はこれ以外に、招待者数の推移や決定者などについて質問しており、共産党がその後もこの問題を追及するつもりであることがうかがえた。
また、初鹿議員は、桜を見る会の要求額が前年度の3倍になっていること、参加者一人当たりの金額の妥当性、同会自体の必要性などを質問しており、現在問題になっていることは、両議員の質問にすでに盛り込まれていた。
つまり、このときは「安倍首相を追い込める案件」になっていなかったから、さほど追及も報道もしなかったということだろう。
桜を見る会自体で追及が難しくなると、今度は名簿を破棄した「シュレッダー問題」が浮上した。参加者名簿をシュレッダーにかけたのは証拠隠滅ではないかというものだ。名簿がシュレッダーにかけられたのが、共産党の宮本議員が資料を請求した直後だったことで、野党側はシュレッダーの見学会まで公開するパフォーマンスを見せた。ところが、この日にシュレッダーにかけることは4月の時点で決まっており、資料請求と廃棄に因果関係はなかったことが発覚して、野党は赤っ恥をかいた格好になった。
ただし、シュレッダー問題はワシントンポスト電子版にも大きく取り上げられた。その記事のコメントを見ると、「安倍内閣は隠蔽体質で信頼できない」などの、安倍首相を批判するものが多かった上に、一部の日本のマスコミは「シュレッダー問題がアメリカ一流紙ワシントンポストに取り上げられた」と報じたので、安倍首相を貶めるという目的は達成したといえるかもしれない。
■税金を無駄にしているのは野党
今国会は「桜を見る会疑惑」一色で終わってしまった感がある。“5700万円がかけられた桜を見る会を追及するためにかかった税金”を推測で概算してみる。国会運営に1日当たり3億円かかっていると考えると、67日間の国会開催中に費やされた税金は3億円×67日=201億円、なかには1日当たり3億5000万円かかるという試算もあるので、その場合、3.5億円×67日=234億5000万円になる。
もちろん、このすべてが桜を見る会問題の追及にかかったわけではない。だが、ほとんどの法案が大して審議されることもなく通ってしまい、この問題だけがあたかも天下国家の大問題のように拡大して審議され、報道されたわけで、今国会のかなりの時間が野党のパフォーマンスのために費やされたといえる。
もちろん、桜を見る会には問題点があり、審議して改善すべき点はいくつもある。ただ、野党がそれを過大に取り上げて「首相の責任」と連呼し、できれば政権を崩壊させたいといった下心が透けて見えていたので、愉快ではなかった。問題点は宮本・初鹿両議員が明らかにしていたのだから、あとはこの問題をきちんと追及してきた田村議員など共産党にまかせれば十分ではなかったのか。ほかの野党は、共産党に乗っかるだけで国民の支持が得られるはずはない。
野党はできればたくさんの「専門家」をつくって、半分の法案に自分たちの意見も反映されるくらい多くの法案にコミットしてほしい。今のままでは「ほとんどは賛成して通し、見せ場だけつくってもらう」という、これまでどおりのパフォーマンス国会が続くだけである。かつてはそれでよかったのかもしれないが、もうすでに多くの国民が野党の浅はかさを見破っている。
あまり考えたくないが、もし野党が憲法改正議論を先送りするためだけに一連の疑惑追及のパフォーマンスを行ったのであれば、憲法も認めている「改正する権利」をないがしろにしたという意味で、憲法と国民を愚弄する行為ではないのか。(文=白川司/ジャーナリスト、翻訳家)
白川司(しらかわ・つかさ) 国際政治評論家・翻訳家。世界情勢からアイドル論まで幅広いフィールドで活躍。著書に『議論の掟』(ワック刊)、翻訳書に『クリエイティブ・シンキング入門』(ディスカヴァー・トゥエンティワン刊)ほか。「月刊WiLL」(ワック)、「経済界」(経済界)などで連載中。メルマガ「マスコミに騙されないための国際政治入門」も好評(https://foomii.com/00184)。
これ『国会を「桜を見る会」追及で浪費し“税金200億円を無駄”にした野党こそ国益を損なっている』と題したBISINESS Journalジャーナリスト&翻訳家の白川司さんの2019.12.27の記事である。
人間顔が皆違うのだから、考え方も当然に違う人がいても不思議ではないが、こう言うおかしなジャーナリストも居る事にビックリした。確かに「桜を見る会」追及本部のヒアリングを見れば本当に他愛のない話ばかりでアホらしい限りではあるが、この白川司さんと言う人の論点はハッキリ言ってズレてるとしか言いようがない。この方はどちらかと言えば守旧的で安倍御用組合に近い。追及本部の質問もさることながら、聞いてれば毎日何時間も20回近くもやる事ではない。要は安倍さんがおっしゃってる言葉が裏付けられるかどうかその真意を内閣府が答えれば良いだけの話なのだが、安倍さんの言葉と行動が違法になるかどうかが問われかねないとの懸念から、回りくどくような内閣府の返答になってしまう。
要は安倍さんが公的行事を私的に解釈し行動してしまう事にある。それを野党が国民の気持ちを代弁してると言って良い追及なのに、それをムダと断定するこの方こそおかしいと言わねばならない。前記このように言う前に安倍晋三の行動に意見する方が先である。