決断できない男「麻生太郎」

昨日以来の自民党の内紛はこれがすべての原因と考える記事が載っていたので紹介します。

決断できない男「麻生太郎首相」の悲しき末路
2009年7月6日 フォーサイト

 その数日前、番記者との懇談で、「西川(善文・日本郵政社長)のクビに乾杯。西川を続投させるかどうかは、麻生首相が判断するのではなく、俺が判断するんだ」と豪語していた鳩山邦夫総務相が六月十二日、ついに辞任した。
 自民党の支持率は、これでさらに降下。だが、党内の苛立ちの矛先が向かっているのは、鳩山氏ではない。決断できない男・麻生太郎首相にである。
 衆議院選挙を控え、この問題の長期化による政権へのダメージを懸念する与党内からは、早期解決に向け、麻生首相指導力を発揮しないことへの批判が日増しに高まっていた。
 六月九日には、自民党六役の一人である、谷川秀善参議院幹事長が記者会見で、「尻に火がついているのに消さない。かちかち山のタヌキじゃあるまいし」と麻生首相を痛烈に批判した。
 十一日には、党最大派閥の会長である町村信孝官房長官が「解決が一日、一時間延びれば、その分だけ自民党の支持が落ちる」と述べた。
 十二日午前十一時。こうした党内の反発を受け、麻生首相はやっと重い腰をあげ、首相官邸に鳩山大臣を呼んだ。誰もが、「鳩山更迭」と思った。しかし麻生首相は決断できず、「妥協案で納得してくれないか」と持ちかけたが、鳩山氏は拒否。
 そして、午後二時からの再会談で、鳩山氏は、麻生首相の対応に納得できないと辞任したのである。
 昨年の自民党総裁選挙では、麻生氏の選挙対策本部長を務め、麻生首相の応援部隊である「太郎会」を主宰する、お友達中のお友達である鳩山氏までもが、麻生首相にノーを突きつけた。麻生首相は結局、いたずらに政府与党の傷口を深めただけだった。指導力の欠如は、目を覆うばかりだ。


「首相がバカだから……」

 そもそも昨年九月に党総裁に選ばれた麻生氏の役割は、早期解散・総選挙だった。民主党が代表交代で息を吹き返す中、自民党議員の間では、「去年の秋に衆議院選挙をしていれば」など、いたる所で麻生首相への恨み節が聞こえる。
 六月十日、菅義偉・党選挙対策副委員長が講演で、解散・総選挙の時期について「都議選の後だとか、八月二日、九日、三十日、九月六日投票など言われているが、ここまでくれば誤差の範囲だ」と述べたが、党幹部の間では「すでに解散権はないに等しい」との認識が多数を占める。
 すべて「官僚にお任せ」と考えているのかもしれないが、麻生首相の優柔不断ぶりは、今回に始まったことではない。候補者の世襲制限は、党内でも検討されたが、「党内で広く意見を聴き、慎重にやってくれ」と言うだけで、結局、先送りとなった。
 厚生労働省分割騒ぎでも、みずからが厚労省の分割や、文部科学省所管の幼稚園と厚労省所管の保育所の一元化を指示したにもかかわらず、族議員の反発を受け、「私は初めからこだわっていない」と、あっけなく撤退宣言した。
 すでに自民党内には、諦めにも似た感情が芽生え始めている。
 五月二十六日の自民党役員連絡会。総選挙戦略が話題になったが、出席者からは「麻生首相が国民からバカだと思われているから、どうしようもない」との声が上がり、中には資料の紙の裏に、「バカ、バカ、バカ」と書きなぐる幹部もいたという。
 六月二日には、中堅議員である山本拓元農林水産副大臣が、自民党総裁選挙の前倒しを求める署名活動を開始。一週間後の十日に開かれた自民党各派の領袖が一堂に会した会談では、山崎拓元副総裁までが、総裁選挙前倒しに理解を示した。「都議選で負ければ、麻生降ろしだ」という声が、幹部・中堅・若手の各層から公然と出始めている。
 とはいえ、国民の感覚を無視して、昨年、圧倒的な支持で麻生総裁を誕生させたのは、自民党議員たちだ。今日の窮状は自業自得と言える。麻生太郎という首相こそ、末期症状の自民党の象徴なのではないか。

筆者/ジャーナリスト・浜 健太郎 Hama Kentaro
フォーサイト2009年7月号より